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トランプ大統領の登場

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結論が出た。外交は現実主義。民主主義的なプロセスを経て選ばれたトランプ大統領としっかり向き合うしかない。これまで書いてきたことと一部重複するが、これから我々が取り組むべきことを記しておきたい。

日本政府が最初にやるべきは、トランプ政権との人脈を築くことだ。私にも共和党の知人がいるが、誰一人としてトランプ陣営には入らなかった。我々も人脈の再構築に努めなければならない。国務省、国防総省、NSCの人事は全く見えない。在日米国大使は一体誰になるのだろう。ここは、外務省の総力を結集して、新たな人脈を築かねばならない。

私の信頼する政治学者が、トランプ支持者を西南戦争の旧士族に例えていた。たしかに、彼らは戦いに勝利したが、グローバリズム、多文化といった世界の現状が変わるわけではない。私は、「トランプ氏はビジネスマンだ」という側近の発言を信じたいと思う。

17日に、安倍総理はトランプ氏と会談するという。迅速な動きについては評価したい。最初に、同盟における「日本ただ乗り」論についての誤解を解く必要がある。在日米軍駐留経費負担は2015年度予算ベースで1899億円、周辺対策で1826億円、米軍再編経費で1486億円。ダブリがあるが、法律に基づかない「思いやり予算」が1481億円。合計すると5000億円をはるかに上回る。

在日米軍は日本防衛のためだけに存在するのではない。朝鮮半島、中国、南シナ海など、アジア太平洋の安定は米国の国益そのものだ。東シナ海、シーレーンでの日米協力。衛星などを活用したインテリジェンス。対中国外交における日米連携。いずれは朝鮮半島の統一が両国の安全保障上の最重要課題となりえる。日米同盟は、戦後最大の外交資産だ。それは、日本だけではなく米国にとっても同様。そのことを両国が共有する機会にすべきだ。

一方で、今回の大統領選挙を通じて、明らかになった米国民の世論を見誤るべきではない。「アメリカファースト」を唱えるトランプ氏の登場は、ジョージ・ブッシュ大統領的な国際介入からも、ビル・クリントン大統領的な国際協調からも距離を置く米国民の気持ちを代弁している。

認識すべきは、米国の外交安全保障上の関心の優先順位だ。当然にして、わが国の外交安全保障上の最大の関心はアジア太平洋にある。米国の関係者との間で、北朝鮮、中国についての議論を交わす中で、時に彼らとの間でズレを感じることがある。米国にとっての関心の地域は、第一にロシア、第二に中東にあり、アジア太平洋に対する関心は必ずしも高くないのだ。

こうした国民感情に加えて、長期的な米国の国力を考えると、徐々にアジアにおける米国の安全保障上のプレゼンスが低下することは避けられない。私は安易な自主防衛論、ましてや核武装論には与しないが、米国のプレゼンスが低下する中で、北朝鮮の脅威や、中国のプレッシャーにどのように対処すべきか、真剣に考えなければならない時期が来たと考えている。

最後に、直近の課題としてTPPについても触れておきたい。数ヵ月前に「TPPは死んだ」と発言した米国の元高官がいたが、彼が言う通りになった。このタイミングで政府与党が採決を強行しようとしている姿は、滑稽だとしか言いようがない。国会で採決を強行してまでTPPを推進する安倍総理と折り合うことはまずない。トランプ氏が日米FTAなどへの転換を主張する可能性すらある。根本的な戦略の練り直しが必要だ。

17日の会談の隠れた主題は、日ロ交渉になるだろう。 トランプ氏が日ロ交渉をフォローすることになれば、北方領土の交渉が加速する可能性がある。トランプ氏の米中、特に尖閣への認識など気になることはあるが、日ロ交渉の進展については大いに期待したい。