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トランプ氏の日本自主防衛発言で注目すべき二つの視点

2016年04月01日 00時28分 JST | 更新 2016年04月01日 00時34分 JST

トランプ氏の日本の自主防衛論、そしてその先にある核武装容認論発言が続いている。今や大統領選挙の有力候補となった彼がこうした発言を繰り返す背景には、いくつか我々が注目すべき点があるように思う。

第一に、米国の外交安全保障上の関心の優先順位だ。当然にして、わが国の外交安全保障上の最大の関心はアジア太平洋にある。米国の関係者との間で、北朝鮮、中国についての議論を交わす中で、時に彼らとの間でズレを感じることがある。米国にとっての関心の地域は、第一にロシア、第二に中東にあり、アジア太平洋に対する関心は必ずしも高くないのだ。

トランプ氏には有力な外交ブレーンがいないと言われている。トランプ氏の日本の自主防衛論についての発言は周到に準備されたものだとは思えない。米国民のアジア、日本に対する関心の薄さが、トランプ氏の発言につながっている可能性が高い。

第二に、日本の自主防衛論、そしてその先にある核武装容認論発言について、米国内の世論でも一定程度の支持がある可能性がある。我々が接するワシントンの外交防衛の関係者の中で、この手の主張をする人に出会うことはほとんどないので、この点は、私自身も米国の世論を若干見誤っていたところがあるかも知れない。

自主防衛論の観点からトランプ氏の発言を評価する向きがある。我が国内でも核武装論を唱える人が時々いるが、私はその選択肢は国益上もないと考えている。一方、軍縮の観点から在日米軍撤退を歓迎する声もあるかも知れない。在日米軍撤退後、矛の機能を持たない自衛隊のみでわが国の安全を守れるほど、東アジアの安全保障環境は生易しいものではない。

米国にとっての日米同盟のメリットを我々も明確に意識すべき時代に入ったということだ。アジア太平洋の安定は、経済的にも安全保障面からも米国の国益に直結する。米国のプレゼンスの急激な低下は、その安定を損ねることは明らか。

沖縄、地位協定など、同盟のあり方については、米国にしっかりわが国としての主張をすべきだ。一方で、米国が日本をパートナーとするメリットについても、我々自身がしっかりと意識しなければならない。東シナ海、シーレーンでの日米協力。衛星などを活用したインテリジェンス。対中国外交における日米連携。いずれは朝鮮半島の統一が両国の安全保障上の最重要課題となりえる。

日米同盟は、戦後最大の外交資産だ。それは、日本だけではなく米国にとっても同様。そのことを両国が共有する機会と捉えるべきだ。トランプシフトが遅れたのは、仕方がない。最強の外交官集団が投入されている在米日本大使館の真価が問われるのは、これからだ。