「僕らは、みんな変人だ」 生まれたばかりの息子に贈ったデヴィッド・ボウイのメッセージ

1971年の曲「Kooks」にはユーモアにあふれたメッセージが込められている。
デヴィッド・ボウイ(撮影=1983年5月13日)
デヴィッド・ボウイ(撮影=1983年5月13日)
RALPH GATTI via Getty Images

デヴィッド・ボウイには、親ばかという印象はほとんどない。 多量の薬物を乱用し、永遠に続くかとも思えるようなツアーを行い、子供のひとりにはゾウイ・ボウイとあだ名をつけた。(編注:ゾウイZowieは日本語にすると「うわぁ!」「ひゃあ!」というような感嘆詞。名字Bowieとの語呂合わせだ)

彼が「ファザー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれなかったのは、まったく不思議なことではない。

しかし1971年に発表した曲「Kooks(変人)」は、ボウイが生まれたばかりの子供に作った歌だ。皮肉のきいたユーモアと、親になるための知恵が込められている。

この曲には、変化する親子の関係からベビー用品の購入といったことまで、親になったばかりの人たちが経験する様々なことが描かれている。

もちろん、普通はロックスターから子育てのアドバイスを受けることはほとんどない。しかしそれでも、2016年1月10日に69歳で亡くなり、世界がその死を悼み功績を讃えるデヴィッド・ボウイに、もうひとつ名誉を加えたい。彼は「親心を歌うロック」というジャンルにも貢献をした。ちなみにゾウイ・ボウイ(本名ダンカン・ジョーンズ)は現在、映画監督・プロデューサーとして活躍している。

家族には血のつながり以上の何かがある

Will you stay in our lovers' story?

If you stay, you won't be sorry.

僕らの愛の物語の中に住んでくれないか?

後悔はさせないよ

「Kooks」は、ボウイが生まれたばかりの息子に送った人生への招待状だった。ボウイは息子を家族の一員に加わるよう招待している。そして家族の絆とは何かを、彼なりの方法で表現している。それはこんなメッセージだ。「家族とは終身刑ではない。人生の選択であり信頼の形なんだ」

子供が成長するにつれ、親子関係は変わる

Soon you'll grow, but take a chance

With a couple of kooks hung up on romancing

すぐに君は成長する、そしたらチャンスを掴もう

ロマンスに夢中な変人カップルと一緒に

子供はすぐに成長する。明らかな真実だ。しかし親になったばかりの時には、そんなことはほとんど思い浮かばないだろう(訳注:歌詞の中の「変人カップル」とはボウイ夫妻のことを示唆している)。

多くの子供たちが成長し、いつかは両親から離れていく。しかし、赤ちゃんがまだ無力で独り立ちしていないときには、そんなことはほとんど考えもしない。しかしボウイはそれを知っていた。少なくとも気付いていた。

だから彼は、子供が産まれたその日から「君が僕たちの近くにいたいと思ってもらえるくらい好かれるといいな」と子供に伝えている。

親は不必要でくだらないものをたくさん買う

We bought a lot of things to keep you warm and dry

And a funny old crib on which the paint won't dry

I bought you a pair of shoes, a trumpet you can blow, and a book of rules

On what to say to people when they pick on you

'Cause if you stay with us you're gonna be pretty kookie too

君に温かく快適でいてもらうためにたくさんの物を買った

ペンキが乾ききっていないおかしな古いベビーベッドとか

靴を一揃え、君が吹くトランペット、ルール本も買った

君が周りからいじめられたときに何て言ったらいいか分かるように

もし君が僕たちと一緒にいるなら、君も素敵な変人になるだろうから

ここでは、新米の親にありがちな無知さを描いている。あれもこれもと次から次にベビー用品を買った経験のある人もいるだろう。

でも経験豊富な親はすぐに気付く。赤ちゃんに靴は必要ないと。赤ちゃんはおもちゃのトランペットで遊ばない。でも、誰もそんなことは教えてくれない。

他の親がトラブルの原因になりうる

And if you ever have to go to school

Remember how they messed up this old fool

Don't pick fights with the bullies or the cads

'Cause I'm not much cop at punching other people's dads

そしていつかどうしても学校に行かなければいけないときは

この老いぼれが、学校で嫌な思いをさせられたことを思い出して

いじめっ子や育ちの悪いやつらと喧嘩してはだめだ

僕は他の父親を殴ったりするタイプの人間じゃないから

この部分では、子育てが複雑で難しくなることを予想している。行儀の悪い子供たちがいるだけではなく、行儀が悪い親もいるからだ。

学校での成功が全てではない

And if the homework brings you down

Then we'll throw it on the fire and take the car downtown.

そして宿題が君を憂鬱にさせるなら

そんなもの火の中に投げ捨てて車でダウンタウンに行こう

驚くにはあたらないだろうが、70年代のデヴィッド・ボウイは勉学を最優先するような人ではなかった。しかし、ここでは単純に「小さなことにくよくよするな」ということを詩的な表現で述べたのではなく、それ以上のことを言っている。「君は失敗するだろう。人生で要求されることは君を苦しめる。しかし要求を満たすことだけが全てではない」という意味が込められているのだ。

私たちはみな子供の目から見れば変人だ

最後に曲のタイトル「Kooks」について言えば、間違いなくボウイと妻のアンジェラは普通のカップルではなかった。しかしこれは、どんな親にも当てはまることだ。特に子供から見れば、私たちはみな癖やだめなところがある変人なのだ。この曲はそれを祝いながら、子供にこんなメッセージを送っている。

「私たちは完璧ではないし、みなそれぞれ少し変わっている。良くも悪くも、君はその多くを受け継ぐことになるだろう。それを知っておいて欲しかったんだ」

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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