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文武両道の効果とπ(パイ)型人材

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こんにちは。篠原肇(@HajimeShinohara)です。

前回の記事では、日本では盛んではない競技を効率的に向上するには、強豪国に滞在するのが効果的で、キャリア形成の「ついで」にスポーツの武者修行をすることが効率のよいひとつの滞在方法であると紹介しました。それには文武両道の考え方が重要になってきます。

ただ、プロ選手でそれができれば素晴らしいですし、是非成し遂げていただきたいですが、現状契約条件や、試合日程その他制約により少し厳しそうなので、今回は、プロではなく自分たちで普及などもやっていかなければならないベンチャースポーツ(マイナースポーツ)を主な対象に考えたいと思います。

そもそも文武両道とは?

そもそも教育分野でよく言われ、推奨されている文武両道とは何でしょうか?

文武両道(ぶんぶりょうどう)とは、文事と武事、学芸と武芸、その両道に努め、秀でていることを指す語。求道的な評価にも用いられる語である。転じて、現代では勉学と運動(スポーツ)の両面に秀でた人物に対しても用いられる。

Weblio辞書

現代では、知られているように勉学と運動の両面に秀でた人物を指します。今までに文武両道と言及されている状況では、両方を別々にやっているというのが現状でしょう。

スポーツ選手を引退した後に、セカンドキャリアとして医者など他の職業に転身するなどはこれに当たります。確かに辞書的な意味では、それで正しいです。教員免許を取得するというのもこれと同様です。よく言われているように、スポーツを通じて、頂点を目指すために努力を重ねた経験などが役に立つでしょう。

また、平家物語をはじめとした古典にも「文武二道」を称賛する文が出てくることから、伝統的な部分もあるかとは思いますが、教師を筆頭に文武両道を薦める人々も、上記のように、別々にやることを想定して、スポーツの経験で得た忍耐力などが、人生に良い影響を与えるというものが大半であったかと思います。

確かに両方出来た方が、できないよりも人生の幸福度は高くなるのでしょうし、指導者側もそれを望んでのことだと思います。しかしながらこれでは、両方を一定レベル以上の高いやることによる、精神的な充実のみで、実利的な部分の説明にはなっていません。

もちろん精神的な充実が実利によい影響を及ぼすのは間違いないでしょうが、他人を説得するには、精神的な部分以外にも、客観的な利益についても説明できたほうが、説得力が上がります。同時に文武両道と器用貧乏は、紙一重です。基準によって評価は変わってきます。

π(パイ)型人材・ダブルメジャー

ところで、人材開発では、専門をふたつ持つ「π(パイ)型人材」や「ダブルメジャー」が重要というのは、よく言われています。π型人間に期待されることは、二つの専門を独立にやることだけではなく、さらにその相互作用により、新しい価値を生み出すことでしょう。

DNAの構造が二重らせん構造であることが発見されたのは、他分野の研究者同士が毎日のように、ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所のすぐ隣にあるパブ「The eagle」で議論していたことによることが大きいと言われています。この教訓は、新たな発見やイノベーションは、分野間交流によることが大きいことです。

専門を二つ以上持つ人は、分野間交流が一人の人間の中で起こりうるので、新たな発見や創造がしやすくなるのでしょう。ここで、スポーツと、特定の能力の組み合わせは、このπ型人材の表現にもあうと言えるでしょう。

ということは、時代の流れを考えると、現代の文武両道のアスリートには、スポーツと他の能力のπ型人材として、それらの相互作用によるシナジーやイノベーションが期待されている側面を持っているといっても過言ではないでしょう。

これを応用する
さて、主に部活動と受験勉強から始まったであろう文武両道の延長で、ある程度出来るようになってきた場合に、どのようなことができるかを見ていきましょう。

身近なところでいえば、コンピューターを使ってスポーツの管理をするなどは、当てはまりそうです。アプリが作れるのであれば、自分がスポーツで必要だと感じたものを開発して使ってみてもいいでしょう。

さらに高みを目指したい場合には、海外に武者修行しに行きたくなる人もいるかと思います。その際もグローバル企業や、社費派遣が盛んな企業に就職していけば、前回の記事で紹介したようなやり方も出来るでしょう。

「クリケットなどコモンウェルスで盛んな競技の日本代表選手が、武者修行をするために、社費留学でオックスフォード大学のMBAに進学する」

こういうやり方であれば、個人的にはやりたい競技の武者修行ができ、キャリアアップにもつながります。体育会系色の強い企業では、尚更ではないでしょうか。スポーツの協会としても有益でしょう。もしかしたら企業の宣伝にもなります。MOT(Management of Technology)という技術のわかる経営者人材の重要性が説かれて久しいですが、同様に、スポーツマネジメントというように、スポーツのわかる経営者も重要なのではないでしょうか。

長期的な目標と計画があれば、理論上はこのようなことも可能になります。

「ラクロスやアイスホッケーやその派生競技などのアメリカで盛んなスポーツの日本代表選手で、海外武者修行をする。その際マサチューセッツ工科大学の工学系専攻の博士課程に入学し、スポーツ関係のモデリングや自分の運動の解析を行い、アスリート向けの新しいデバイスの研究・開発を行う」

この場合、キャリアアップのみならず、自分のデータの解析を自分で行うわけですから、自身のスポーツ技能の理解やの技術向上にも役立つはずです。そしてその両方の経験を生かして、新たな価値を創造できそうです。

社費留学でなくても、欧米の博士課程(PhD)では、フェローシップ(奨学金)やリサーチアシスタント(RA)として学費免除生活費が支給される雇用機会が多くあるため、金銭的な負担もなくすことも可能です。日本からも最近増えていますが、海外の名門大学でPhDを取得するための返済不要の奨学金を出している財団があります。私も採用いただいている船井グループの船井情報科学振興財団もそのひとつです。

他にもこのような複合的なやり方は本当に多種多様にわたると思います。このように、スポーツと他の能力との組み合わせでやっていると、該当競技の知名度も自然と上がっていくことでしょう。こういったやり方は不可能ではないですし、歴史的・国際的には何人もいるのでしょう。今後も出てくるかと思います。

こうした方法も、元をたどれば原点は初等教育における「部活と勉強、両方頑張りましょう!」という文武両道の考え方から始まるのは、忘れてはならない点でしょう。

セレンディピティ

しかし、人生とは難しいもので、予定通りにはいかないことばかりです。私自身も思い通りにはほとんど行っていない失敗続きの人生です。それでも「人間万事塞翁が馬」というように、その過程で得るであろう多種多様な「武器」を持つことは、その後の選択肢の幅が広がります。また突飛な組み合わせによる新たな発見や創造につながる確率が高くなります。これはスポーツでも同様でしょう。

私情で恐縮ですが、そもそも、私がハフィントンポストのような影響力のある大手メディアに、普段は取り上げられることがないような無名な競技について連載させていただいているのは、私がただ無名な競技に取り組んでいて、ブログを書いているだけではなく、ケンブリッジ大学の特待生で、同時にスポーツの日本代表選手の経験があるというのは、客観的に見て説得力を増す効果も全くないとは言えないでしょう。

そう考えると、ある程度両方できることにより、新たな価値を生み出したということで、文武両道の実利的な恩恵を受けていることになります。もちろん、見方によってはまだまだ器用貧乏かもしれません。判断はお任せします。

いろいろやっていることにより相互作用が起きた例は枚挙にいとまがないと思いますが、ベンチャースポーツと呼ぶようになったのもスポーツ以外の経験によります。この連載でも何度か触れていますが、運営している日本代表倶楽部は様々な経験の組み合わせによっています。

まとめ

文武両道に代表されるように、両方をある程度のレベルで出来ると、単に二つを別々にやるのではなく、現在人材開発で重要と言われるπ型人材のように、スポーツと勉学や仕事などの他の能力が相互作用を起こし、新たな価値を創造していくことができます。また、組み合わせも考えると選択肢の幅が広がります。今回取り上げたような例が、文武両道による客観的な付加価値の創造の一例としてお使いいただければ幸いです。

本記事は、筆者個人ブログ該当記事の一部引用・転載です。

バックナンバーはこちら。
http://www.huffingtonpost.jp/hajime-shinohara/