デジタル教科書の普及はBYODで

諸外国ではデジタル教科書がすでに利用されているのに対して、わが国の動きは遅いが、普及を阻む障壁の一つが多額の費用である。

情報通信技術を学校教育で利用しようと、政府が動き出している。2015年6月に発表された『日本再興戦略』改訂版には、「デジタル教科書の位置付け及びこれに関連する教科書制度の在り方について専門的な検討を行い、来年中に結論を得る」と記述されている。諸外国ではデジタル教科書がすでに利用されているのに対して、わが国の動きは遅いが、普及を阻む障壁の一つが多額の費用である。

小中学生の総数はおよそ1000万人で、一人1万円のデバイスを配布すると、1000億円を必要とする。その後も、新入生が入学するし、デバイスも数年で陳腐化するので、毎年、数百億円の単位でデバイス予算を積む必要がある。家庭学習でも利用するには、すべての小中学生の家庭にブロードバンド環境を整える必要がある。教科書無償配布の予算額はおよそ400億円だが、とても、その範囲では収まらない。

一方で、パソコン・タブレット・スマートフォンは国民に広く普及している。文部科学省の『平成26年度全国学力・学習状況調査』によれば、小学6年生の約15%は1日1 時間通話やメール、インターネットをし、中学3年生では約48%に上がる。そこで、子供たちに自宅のデバイスを持参させるという方法が考えられた。これがBring Your Own Device(BYOD)で、北欧諸国ではすでに採用されている。ブロードバンド環境も、同様に、自宅に備わっていれば利用すればよい。BYODなら、利用できるデバイスのない、ブロードバンド環境のない家庭だけを対象に予算を積むことになる。

まちまちのデバイスが持ち込まれても、ウェブ技術を元にデジタル教科書のコンテンツが作成されていれば、互換性に支障はない。使い慣れているデバイスを持参するのだから、改めて、基本操作法を教える手間も減らせる。

それでは、デバイスのない小中学生には、政府が選定したデバイスを配布すべきなのだろうか。政府が選定した事業者が、ブロードバンド環境のない家庭への接続を請け負うべきなのだろうか。

大阪市は塾代助成制度というユニークな制度を実施している。低所得世帯の中学生に月1万円の塾代を助成する制度だが、自由に塾が選べるのが特徴である。助成金は塾に通った中学生だけに渡されるので流用は避けられ、通塾者を増やすために塾は教育内容を競争する。子育て世帯の経済的負担も軽減される。実績に応じて助成するこの仕組みは、一般には、バウチャー制度と呼ばれている。

デジタル教科書の普及でも同様の仕組みを用いればよい。小中学生が自由にデバイスを選定し、購入後に助成金を渡すようにすれば、使いやすいデバイスが競争下で供給されるようになるだろう。通信事業者も、子供のころからの加入者囲い込みを狙って、ディスカウントした通信料金を提示するだろう。

BYODとバウチャーを同時に実施すれば、予算は大幅に縮減され、デジタル教科書普及への道が見えてくる。

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