BLOG

出口の入口:『日本の未来を考えよう』第3回 「一億総活躍社会」を実現する方法

2016年12月07日 00時14分 JST

現在、政府は「名目GDP600兆円」「人口1億人」「介護離職ゼロ」という3つの大きな目標を掲げています。いわゆる「ニッポン一億総活躍プラン」のことで、アベノミクス第2ステージの柱となっているようです。その名称が適切かどうかはさておき、これら3つの目標はわが国が直面している政策課題であり、政府の認識は正しいと思います。

今回はそれらの目標を達成する方法について、僕なりの提言をさせていただきます。

■生産性を上げるためには「さっさと帰る!」

「名目GDP600兆円」を実現するために、政府はAI(人工知能)をはじめとしたIT技術で新たな市場を作ることを柱のひとつとすると明言しています。いわゆる第4次産業革命と言われているものです。その政策の一環として小学校でプログラミングを義務化する方向で動いています。

しかし、日本人のITリテラシーが上がったところで競争力の向上につながるのかという疑問は残ります。大事なことは、ITを使って何をするか、つまり、どんな新しいサービスを生み出せるのかということではないでしょうか。

いま日本の正社員は年間2000時間働いています。こうした長時間労働が当たり前になってしまった背景には、工場(製造業)主導の成長戦略がありました。工場の生産性を上げるためには機械を止めないことが一番効率がいいわけで、産業革命以来、馬車馬のように長時間働きつづけることがもっとも合理的な生産モデルであり続けました。だからこそ、企業は「素直で協調性の高い男性」を求め続けてきたのです。

しかし、これからの時代は、単純労働はそれこそロボットやAIに取って替わられます。そして労働者は「労働時間」ではなく「アイデア」で勝負をしていく時代になります。

いや、「アイデア勝負」の時代にとっくに突入していると言ってもいいでしょう。

それなのに、従来通りの働き方で疲れ果てて家に帰って「飯、風呂、寝る」という生活を送っていては、いいアイデアなど生まれるわけがありません。

アイデアを生むためには、「人と会うこと、本を読むこと、旅に出ること」が一番です。

そもそも、人間の脳の集中力は一日に2時間×3、4セットくらいが限界だと言われています。だとしたら日中に集中して仕事をして、さっさと早く帰ったほうがいいのです。

「飯・風呂・寝る」の生活から「人・本・旅」の生活へと切り替えることが生産性向上のポイントです。

■出生率が上がるかどうかは政府のやる気の問題だけ

次に人口1億人について取り上げましょう。その値を維持するために必要な出生率目標1.8に対して、2015年のデータでは日本の合計特殊出生率は1.43です。

G7の中で比較するとフランス(2.00)、連合王国(1.92)、アメリカ(1.88)の出生率は高く、少し離れてカナダ(1.59)、そしてイタリア(1.46)、日本、ドイツ(1.41)の順番になります(ちなみに世界のトップはニジェールの7.57、ワーストは台湾の1.12です)。

先進国のなかで出生率の回復に成功した国はいくつかありますが、フランスがその代表例で、1994年の1.66から約10年間で2.0台まで上げることに成功しました。

その政策を打ち出したのが当時のシラク大統領で、このとき取った少子化対策は「シラク3原則」と呼ばれています。その原則はきわめてシンプルであり、わかりやすいものです。

1つ目は「お金がないことを理由に出産をためらうことをなくす」というもの。女性が子供を産みたいと思ったら産めるようにする政策です。女性が産みたいと思ったときと、その女性の経済力は一致するはずがないので、差額は国が責任を持って補助をするというものです。

2つ目は「待機児童ゼロ」です。この連載の1回目でも触れましたが、現在、先進国で待機児童問題が起きているのは日本だけです。小学校で待機児童がいないように、親が希望すれば必ず保育園に入れるように制度を変えればいい(義務教育にする)だけの話であって、それが実現していないのは政府にやる気がないからです。

3つ目は「育児休暇をとっても同じ人事評価(ランク)で職場復帰させること」。これも単に政府が法律で定めれば実現する話です。

シラク3原則を実現するための財源はGDPの1〜1.5%程度と考えられています。ちなみにフランスの子育て予算の総額はGDPの3%強。わが国は1%強です。

■最も効果的な高齢化対策は「定年の廃止」

「介護離職ゼロ」についても考えてみましょう。

この問題になるとどうしても介護と仕事をどうやって両立させるかという議論になりがちですが、健康寿命、すなわち介護なしに生活が送れる年数を伸ばすという選択肢が根本であることを忘れてはいけません。

ではどうやって健康寿命を伸ばせばいいか。実際に10人ほどのお医者さまに聞いたのですが、全員揃って「働くことです」とおっしゃっていました。

定年制は日本にしかない慣行です。健康寿命を伸ばす方法として一番いいのは定年制を廃止して、年齢フリーで働くことです。仕事をやめて家に閉じこもれば認知症が進み、健康寿命が短くなることは統計的に見ても明らかです。

意欲と体力とスペックがあれば、いつでも、何年でも働ける。それがグローバルスタンダードです。定年制を廃止すれば政府が目指している同一労働同一賃金もすぐにでも実現するはずです。

それに政府の試算では、2030年には日本の労働力は800万人も減少すると言われています。シニア層の活用はこうした労働力不足にも貢献しますし、さらに定年制をやめれば年金保険料を支払い続けることになるので年金財政も安定します。

このように、新3本の矢を実現するためには、さっさと帰る、すなわち「残業規制・インターバル規制の導入」、「シラク3原則の適用」、「定年制の廃止」が一番効果的だと考えるのですが、いかがでしょう。

日本の未来を考えよう

2016-08-04-1470302598-5487807-818buTHDBDL.jpg