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アベノミクス:後退した第三次成長戦略

2016年04月14日 14時30分 JST | 更新 2017年04月13日 18時12分 JST
ASSOCIATED PRESS
Japanese Prime Minister Shinzo Abe speaks to reporters condemning the terror attacks in Belgium, at Abe's official residence in Tokyo, Tuesday, March 22, 2016. Explosions rocked the Brussels airport and the subway system Tuesday, just days after the main suspect in the November Paris attacks was arrested in the city, police said.(Franck Robichon/Pool Photo via AP)

安倍政権は、2014年6月に策定した第二次成長戦略で、戦後政権でははじめてといえるほど全面的かつ本格的に構造改革に取り組んだ。

その内容についてはとくに資本市場と企業統治、農業改革、労働改革の分野に焦点を合わせて、前回までのエッセイでやや詳しく紹介した。これらの分野は"岩盤規制"といわれるほど既得権が強固に浸透しているので、政権が改革に懸命に取り組んでも改革の趣旨を実現するにはなお多大な課題が残されていることを前回までに説明した。

安倍政権は、2015年6月22日に、「日本再興戦略2015」と題して第三次成長戦略を閣議決定し発表した。

第二次戦略でかなり踏み込んだので、第三次では残された課題に取り組み、成長戦略の改革の趣旨を実現するものと人々は期待しただろう。私もその一人だった。ところが、その分厚い戦略の内容を読んで思わず愕然とした。

第三次成長戦略は、当然、前年の第二次戦略の成果をふまえ、そこで残された重要課題の解決もしくは進展のために注力するものと期待したが、そこでは第二次戦略の成果も課題もほとんど記述されておらず、戦略の主要部分は、第一次戦略と同じ3つのアクションプランだった。

それは、1.日本産業再興プラン、2.戦略市場創造プラン、3.国際展開戦略の3つだが、その内容は第一次戦略にくらべてもむしろ後退している。第1次戦略にくらべ、大学の役割が強調されているのが強いていえば新味のようだが、それも、内容はイノベーションへの期待で終わっている。

第三次戦略では、3つのアクションプランに入る前の総論に多大なスペースを割いている。

まず、アベノミクスは第三次戦略から第二段階に入ったとする。第一段階は需要創出をめざしたが、その成果があったので、第二段階では人口減少経済での供給サイドの強化をめざすという。

その基本は生産性向上で、未来型投資に注力し、大学の役割に期待し、ローカルアベノミクスと称して地域のサービス産業、農林水産、ヘルスケアや観光産業を支援するという。

総論では、未来型、生産性革命、イノベーション・ナショナルシステム、基幹産業化、稼ぐ力、個人の潜在力強化など派手なキャッチフレーズが踊るがその内容を見ると、どれも抽象的で、具体的な手がかりや実態が見えない。

それなのにKPI、PDCA、目標・工程管理、政府一体取り組みなど、掛け声ばかりが目立つ作文以上のものではない。

3つのアクションプランには具体的内容があるように見えるが、精読すると、「大学改革」以外は、ほとんど第一次戦略の内容の焼き直しかむしろ希薄化でしかない。

もっと具体的な内容はないか探すとようやく戦略の最後に、改革のモメンタムと称して「改革2020」を推進するとしている。その内容は、1.自動走行技術、2.分散型エネルギー資源活用、3.先端ロボット技術、4.医療のインバウンド国際展開、5.観光立国のショーケース化、6.対日投資拡大にむけた誘致方策である。

おそらく第三次戦略でのもっとも具体的内容はこの6項目だろう。しかし、これらはすでに民間部門で企業が事業として取り組んでいるもので、国家がその命運をかける成長戦略というべきようなものではない。

日本を長期のデフレから脱却させ、望ましい成長軌道に乗せるというふれこみで、華々しくスタートした"アベノミクス"の熱意は一体どこへ行ってしまったのだろう。

第二次成長戦略まではその取り組みは世界的にも注目されていた。第三次成長戦略は世界はおろか国内のメディアでもほとんど取り上げられなかった。それは取り上げるべき具体的内容がないからなのだろう。

アベノミクスの成否の鍵を握る成長戦略が空疎な作文に終わるのであれば、アベノミクスに命運をかけざるを得ない私達国民にとってもそれは甚大な問題である。アベノミクスは今、どこへ向かおうとしているのか、今後のエッセイでその後の展開を追ってみることにしたい。