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島田晴雄 Headshot

ネット党首討論 憲法問題の討論

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憲法問題についての全党首の見解表明をうけて、互いの討論がしばらく行われた。このエッセイではその要旨を紹介するとともに、私の憲法討論へのコメントと今回のネット党首討論企画への感想を付け加えたい。

松井氏(大阪維新):教育無償化のためにも憲法改正は必要。

志位氏(共産党):教育無償化のために憲法変える必要はない。教育権、幸福権の規定でできる。

松井氏(大阪維新):今でもできるならなぜ今やらない。憲法に規定しておかなければその問題への対応は政権毎に変わるおそれ。根幹的政策は憲法で規定する必要。

安倍氏(自民党):共産党は良い事でも憲法を変えないのか。自衛隊は違憲なのか。

志位氏(共産党):基本的人権関連でも30条もの規定がある。9条は国民の理想だ。

岡田氏(民進党):安倍氏は憲法改正に熱意。粛々とどこを変えようというのか。

安倍氏(自民党):憲法改正は自民党の党是だ。どの条文を変えるかはまだ決まっていないから今次選挙の争点にはしない。憲法審査会の議論にかかっている。

荒井氏(改革):憲法改正問題を煮詰めたとき、公明党と自民党には大きな違いがあることが見えてくるのではないか。

山口氏(公明):憲法改正は国会で発議するもの。まだ議論が成熟していないので争点にならない。与党は行政権を担うもので、憲法改正を発議する権能はない。

岡田氏(民進党);審査会は一度も開かれていない。現実がともなっていない。

安倍氏(自民党):民主党政権時代も全く動いていなかった。憲法改正問題は国会議員が発議をし、決めるのはあくまで国民だ。

以上が、党首達の互いの討論の要旨である。一人30秒という持ち時間を守って、党首の皆さんはそれでも論点はしっかり主張し、良い討論だったと思う。

この討論にはいくつかの焦点があった。

1.国民の重大な関心事なのに、なぜ、安倍首相はそれを選挙の争点にしないのか。

安倍氏は本来憲法改正に強い意欲もしくは執念を持っている。争点にしないのは姑息だ。2/3の議席を確保したら数の力で改正に持ち込むのでは、という疑念が野党には根強い。新安保法の時は解釈改憲は立憲主義をないがしろにしたという思いが野党の疑念を一層強めている。

安倍首相は、憲法改正は自民党結党の党是だ。ただどの条文を変えるかという問題は憲法審査会の議論が煮詰まっていないので争点にならないとする。野党の疑念と安倍首相の建前論は現時点では平行線で引き分けか。

2.公明党の山口氏は、憲法をめぐる議論がまだ成熟していないと強調した。政党や国会議員のレベルでも成熟していないが、国民のレベルでは成熟という前に、国民は憲法問題を理解するに必要な情報も持っていないのが大きな問題である。

現行憲法の最大の争点は第9条だろう。

その9条をふくむ現行憲法の主要内容が占領下でどのように起案され議論され制定されたのか。それをめぐるマッカーサーと幣原喜重郎首相との議論と理解はどのようになされたのか。国際情勢はどうだったのか。占領軍もアメリカも極東委員会もその頃、世界の安全保障問題とは、日本の危険から世界をどう守るかだった。

ソ連の脅威が高まり冷戦時代に入るとアメリカの対応は正反対になり、日本を冷戦体制下の同盟国と見るようになった。「平和憲法」の意味は180度変わったはずである。戦後の教育は、国際環境下の日本現代史をほとんど教えてこなかった。何も知らない国民に今、いきなり憲法改正問題を突きつければどういうことになるか。

右翼は一瀉千里に走ろうとするだろう。左翼は感情的な反発を強めるだけだろう。国論はいたずらに発散する。それは望ましいだろうか。

今の憲法でも不十分ながら今の日本の必要としていることはおおかたできる。今、なすべきことは、急がば廻れで、現代史教育を最重要科目として、国際環境の中での日本の一世紀の歩みを、覚えるのではなく考える教育として、じっくりと多面的な情報を提供することではないか。

国民が自分で自国の歴史を考えられるようになったら、おもむろに自主憲法でも憲法改正でも提起すれば良い。それでも遅すぎることはない。拙速で自己分裂するよりはるかに健全ではないか。

3.ネット党首討論はこのネット情報化時代に有意義な企画といえる。なにしろ情報伝達が早い。インターネットで流れるので、リアルタイムで観たければ全ての内容を見れる。細切れに編集されたマスメディアとはそこが違う。18歳で選挙権がもてる時代にこのメディアはさらに訴求力をもつだろう。若者はマスメディアよりソーシャルメディアに親近感があるからである。

今回の討論会で、私は敢えて司会の古市憲寿氏に苦言を呈したい。

彼は小沢一郎党首に、突然、再婚相手は?と質問した。小沢氏が直後に紙片で暴言として抗議し謝罪を要求したところ、古市氏はネット放送なので、登場人物の人柄も感じてもらおうと思って・・と弁解した。

本当にそんな理解で司会をしていたのなら、聴衆をこんなに馬鹿にした態度はない。選挙権をもった若者は自分達の将来について真剣に知りたいはずであり、それを4流のお笑いのセンスでしかも党首のプライバシーをネタに関心を引きつけるつもりだったとは言語道断だ。メディアに携わる人間は真剣な話題を聴衆とともにあくまでも真剣に真剣に問いつづけることが使命であることを肝に銘じてもらいたい。