「水素水」の効果、健康食品について

健康食品を購入するかどうかを検討する際に、必要な視点は...

最近、話題になっている『水素水』について、国立健康・栄養研究所が見解を示したと産経ニュースが報じています。

同研究所の情報センター健康食品情報研究室では、『「健康食品」の安全性・有効性情報』というサイトを運営しており、健康食品をどのように理解すべきかといった総論的な内容の他、個別の成分についても主な研究結果を提示したうえで解説しています。

私自身、患者さんから「〇〇という健康食品を買おうかと思うが、効果はあるか?」といった相談があった際には、最初にこのサイトの情報を確認しています。

この中で、情報センターは下記のように概説しています。

『 俗に、「活性酸素を除去する」「がんを予防する」「ダイエット効果がある」などと言われているが、ヒトでの有効性について信頼できる十分なデータが見当たらない。現時点における水素水のヒトにおける有効性や安全性の検討は、ほとんどが疾病を有する患者を対象に実施された予備的研究であり、それらの研究結果が市販の多様な水素水の製品を摂取した時の有効性を示す根拠になるとはいえない。』

いわゆる健康食品について効果があるかどうか考慮する際、研究成果は大きな役割を果たしますが、たいていの場合、「効果あり」とする結果と、「効果なし」あるいは「健康被害の報告あり」といったネガティブな評価とが存在します。

当然、健康食品を販売する側は、宣伝・広告に「効果あり」の研究成果を引用し、「科学的根拠がある」と主張します。購入者側は、企業側の説明だけを鵜呑みにするのではなく、総合的に判断することが大切です。

購入するかどうかを検討する際には、

『様々な研究成果を総合的に考慮した結果、「効果がある」と総括することが妥当か』

『「効果あり」の場合、その効果は自分が期待する程度に大きなものか』

『副作用・健康被害について、食品だから安全などと「過小評価」していないか』

『自分が求める結果を得ることができる、別の確実な方法はないか』

といった視点を忘れないようにして下さい。

以前は、日本にも「健康食品は効能・効果を謳ってはならない」という強い規制が存在しました。勘違いして購入することがないよう、消費者保護の観点から定められていたものです。

時代は変わり、現在では特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品が制度化されています。企業側は一定のルールの下、効能・効果を表示することができるようになりました。

現代の消費者は、こうした規制緩和に対応し、企業が主張する効果(提示される論文の内容)を批判的な目で検討する能力が求められています。

研究デザインは適切か? 再現性は? 症例数が少なくないか? バイアス(誤った結果や判断をもたらす要因)が生じる可能性は?

現代社会で「賢い消費者」として生活するためには、こうした視点を身に付けることが大切です。医療関係者は、適切な健康維持・望ましい治療方法を検討する際、このような手法で情報を吟味しています。

想像してみてください。

『当社従来品の5倍のスピード! 画期的な速さの乗り物!』

といった宣伝文句の商品です。しかも実証データまで揃っています。

なるほど確かに、これはとても魅力的な商品と理解しても不思議ではありません。

ところが、従来品が三輪車で新製品は自転車、目的が東京‐大阪間をなるべく早く移動することだとすれば、まったく話が変わってきます。

飛行機や新幹線、自動車といった選択肢が妥当であり、そもそも三輪車と自転車で悩むこと自体、ナンセンスです。

これはある意味「当たり前」ともいえる判断ですが、健康食品の分野ではこの手の「落とし穴」にはまる方が後を絶ちません。

適切な判断を行うためには、健康や疾患、治療方法に関する、ある程度網羅的な知識が重要であり、その中で健康食品の位置づけを考慮するといった「相場観」が必要です。

■ おすすめの情報源

〇 「健康食品」の有効性・安全性情報

冒頭でも紹介した、国立健康・栄養研究所 情報センター 健康食品情報研究室が運用する有力な情報源です。「健康食品の考え方」といった基礎的な解説から個別の成分情報に至るまで、多くの情報を得ることができます。

〇 FOOCOM(科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体)

トクホや機能性表示食品を含む、食情報に関する注意喚起を行っている消費者団体です。

FOOCOMが運営するサイト「FOOCOM.NET」では、実際に発売されている機能性表示食品について、詳細に解説されています。TV・新聞などのメディアにおいて、販売側の宣伝情報が優勢となりがちな日本では、貴重な存在です。

〇 医師・薬剤師

生活圏で誠実な医師・薬剤師を見つけられ、互いに顔の見える関係性を構築することをお勧めします。前述した「相場観」、その人にとって何が適切かといったアドバイスは、医師・薬剤師が適任です。

ただし、薬局の市場化が著しい日本では、購入者・患者の健康利益よりも、商品を勧めることで得られる経済的利益を優先する薬剤師が少なくないことに注意が必要です。

これらの情報源を活用し、どの健康食品を選ぶべきか、または利用せず他の選択肢を採用すべきかについて、上手に選択してください。

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