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東千葉メディカルセンター問題における千葉県の責任(1)

2016年04月15日 15時43分 JST | 更新 2016年04月15日 15時51分 JST

●読売新聞

読売新聞は2016年3月9日、「東千葉メディカルセンター新年度中の全面開院困難」と報じた。記事によると、東千葉メディカルセンターは、2014年4月から一部で開院。計画では2015年度中に「看護師199人、ベッド数230」、2016年度中に「看護師276人、ベッド数314」と順次体制を拡大し、23診療科で全面開院の予定だった。2016年2月末、看護師数は156人、ベッド数は164にとどまっている。

看護師が集まらず、2016年度中の全面開院を見送らざるを得なくなった。ベッド数を増やせなかったため診療収益が増やせず、2015年度資金が4億3800万円不足、2016年度も上半期だけで7億円の不足が見込まれる。このため、千葉県と東金市、九十九里町が12億円を追加支援し、不足の穴埋めをする。

●地方独立行政法人東金九十九里地域医療センター評価委員会(2016年2月5日)

東千葉メディカルセンターを経営する地方独立行政法人の評価委員会で、資金繰り対応と短期借入金の借り換えの認可が議論された。これが上記記事になった。

資金不足に対する対応策として、2015年度分として、東金市・九十九里町と千葉県から、それぞれ、1億7900万円、3億2100万円が追加支援されることになった。2016年度上半期、東金市・九十九里町と千葉県からそれぞれ、3億5900万円、3億4100万円が、当面の資金繰り支援として支出されることになった。

地方独立行政法人は、中期計画で示された限度額の範囲内で短期借入れをすることができるが、これは事業年度内に返済しなければならない。資金不足のために返済できないときは、設立団体の長の認可を受けて、借り換える(年度越え)ことができることになっていた。短期借入金残高は、2015年10月まで3億円だったが、2015年11月以後、5億円に増えた。

東千葉メディカルセンターを心配する会によると、職員の給料やボーナスを支払う金が足りなくなったためだという。5億円を年度内に返済できないため、借り換えで対応することになった。会議では厳しい意見が飛び交った。

損益の状況は2015年度、2016年度はどういう状況になるのか、また、財政状態、貸借対照表で債務超過になるのではないか。

2015年度の損益は約13億8千万円、2016年度につきましては約13億4千万円の損益を想定しておるところでございまして、もう一つご質問がございました具体的に今年度の決算については債務超過ということはたぶんこのまま行くと免れないという風に考えているところでございます。

(看護師が)確保できないという状況になりますと、2016年度大変な赤字、資金ショート、資金不足に陥る可能性があります。

●東千葉メディカルセンター設立の背景

千葉県の太平洋岸は日本でも有数の医療過疎地域である。医師不足のために、2003年から2008年にかけて、自治体病院がドミノ倒し状態になり、連鎖的に危機を迎えた。

県立東金病院は、2004年10人いた内科医が減少し続け、2006年に3人になった。この間、組合立国保成東病院の負担が重くなっていった。ギリギリで頑張ってきた成東病院の医師が耐え切れなくなった。11人いた内科医が2006年にゼロになった。公立長生病院は、2007年千葉大学が医師派遣を中止。内科常勤医が4人から1人に減少した。院長が千葉大から自治医大出身者に交代した。

安房医師会病院は24時間365日の救急で医師が疲弊し、医師不足に陥った。2008年、社会福祉法人太陽会に経営移譲し再建。銚子市立総合病院は393床を有していたが、医師の給与引き下げを契機に、日本大学が医師を引き上げ、結果として、2008年9月30日、病院運営を休止した。

崩壊が顕在化する前の2003年、老朽化した県立東金病院を廃院にして、山武郡市広域行政組合を設立主体とする九十九里医療センターを新設する構想が持ち上がった。400床の規模で、救命救急を担おうという計画だった。

ところが、2008年、センター長に、支援病院への病床数割り振り権限を与えるかどうかをめぐって、山武郡市首長会議が紛糾した。支援病院と位置付けられた国保成東病院、国保大網病院が切り捨てられることを、それぞれの病院を持つ自治体が恐れたためである。自治体間の合意を形成することができず、設立主体が東金市、九十九里町の2市町だけになった。その後、名称が、東千葉メディカルセンターに変更されて、2014年4月開院された。

●看護師不足

東千葉メディカルセンターの創設が決まった当時、千葉県の人口当たりの就業看護職員数は、47都道府県中46位、看護学生数は45位だった。しかも、少ない養成数がさらに減少することになっていた。2010年の千葉県医療審議会地域保健医療部会の資料では、看護師養成課程の1学年定員は、2009年の2752人から2013年には2348人まで減少することになっていた。県立看護大学の設置による定員減が大きな要因だった。

2014年、千葉県は2025年に必要な県内の医師・看護職員数の推計結果を発表した。2025年、中位推計で、看護師は1万4千人不足する。

千葉県における医療供給の最大の阻害要因は、看護師不足である。保険診療においては、入院患者当たりの必要看護職員数が決められているので、看護師が不足するとその分、病床を開けない。

千葉県には稼働していない許可病床が大量に存在している。看護師不足のために、病床を稼働できていないにもかかわらず、2012年、千葉県は、高齢者人口の増加に合わせて、医療計画に基づく許可病床を3809床新たに募集した。許可病床は既得権益になる。多くの病院がこぞってこれに応募した。3809床増やすとすると、4000人近い看護師が必要になる。

こうした中で、2010年10月1日、独立行政法人東金九十九里地域医療センターが設立され、東千葉メディカルセンターの開院に向けて本格的に準備が開始された。設置場所の山武・長生・夷隅医療圏は、医療サービス不足の千葉県の中でも、単位人口当たりの医師・看護師数が際立って少ない。この地域は、高齢化の進む過疎地域であり、都会から看護師が就職のために移住してくる可能性は低い。結果として、少ない看護師を地域の病院で奪い合うことになった。

●東千葉メディカルセンターを心配する会

計画段階より、東金市民から、危惧する声が上がっていた。

「東千葉メディカルセンターを心配する会」が発行した「長屋の医事談義」は、3つの問題を挙げていた。患者数を集められるのか、医療単価を高く想定し過ぎているのではないか、医師・看護師を集められるのか。

周辺自治体にさんむ医療センター(旧成東病院)、長生病院、大網病院がある。東千葉メディカルセンターは、周りの市町とケンカ分かれして作られた。競合関係が継続しているので、患者集めは難しい。東千葉メディカルセンターを心配する会は何より、東金市の財政破綻を心配していた。

1日の入院単価が4万5千円という高額な患者さんが年間約10万人、外来単価1万円の患者さんが年間約20万人集まらなければ赤字ですからね。

4年目に黒字になるには、あの大網病院、東金病院(廃院)、さんむ医療センターの3つの病院の患者をぜ~んぶあつめなくてはならない。

4年目や7年目に黒字になるように、適当にアチコチの数字を当てはめた結果みたいだね。

三次救急患者っていうのは、この地域では1日に1人か2人しかいないんですよ。

私の見立てでは、たぶん、このまま行ったら、医療センターは毎年最低10億円、場合によっては20億円ぐらいの赤字が出ると思います。

そうなったら、東金市の財政はどうなるのかなあ。

東金市はね、現在、累積赤字が330億円ぐらいあるんだよ。そして、その赤字分を返済するために年間20億円ぐらい出しているんだけど、その返済額が26億円を超えると1枚目のイエローカード、35億円を超えると2枚目のイエローカード、51億円を超えると完全なレッドカード。つまり、財政破綻だね。

財政破綻というのは、例のあの夕張市みたいなことかい?赤字が多くなりすぎて、自主的な財政運営ができなくなって、市役所の職員も半減、給料も半減、住民もドンドン市外に移転‐‐ということで、要するにゴーストタウンになっちゃうんでしょ。

年間予算が約190億円程度の東金市にとっては、年間10~20億円という赤字が毎年ずーっと続くような「大事業」は、やるべきじゃあないんだよね。(「長屋の医事談義」より)

(2016年4月11日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)