「同じ会社で定年まで勤め上げる」ことは、ただの自己満足です

伝統芸能の担い手ならわかりますが、今の世の中で、「変わらない」ことを維持する人にどれだけ価値があるでしょう?
GAISHIKEI LEADERS

先日、ある大手外資系企業のエグゼクティブとお話していたら、リストラの話になり、「特に年配の方をリストラする時に、『あと数年なので、最後まで勤め上げさせて欲しい』とか言われるんだけど、その気持ちがよくわからないんだよ」とおっしゃってました。要は、その残り数年分の給与に相当するパッケージ(割増金)を払うので、働いても働かなくてももらう報酬は一緒なのに、なぜ働きたいんだろう、という疑問でした。

彼はこれを「価値観の違い」という観点で片付けてました。「ひとつの会社で定年まで勤め上げる」ということが、日本では「美徳」になっていることが、外資系で育ってきた彼には理解できない、ということでした。「同じ会社で定年まで勤め上げる」ことは、個人の価値観に関係なく、今の時代には、もう「美徳」でも何でもなく、ただの自己満足です。そのようなキャリアを目指すのは、会社にとっても個人にとっても、かえって「有害」です。

まず、ずっと同じ会社にいるということは、ずっと同じ価値観の中で、同じ仕事のやり方で、同じ人たちと仕事をしてきたということです。当然、社内のプロであり、誰に何をどの順番で話せば仕事が進むかということは熟知しているでしょう。ただ裏を返せば、変革を起こすとか、新しい価値観や考え方を導入するとか、という仕事には極端に向いていない人材なわけです。伝統芸能の担い手ならわかりますが、今の世の中で、「変わらない」ことを維持する人にどれだけ価値があるでしょう? それが社会人になりたての若くて(安い)社員ならともかく、会社に何十年も勤めた経験豊富な(高給の)社員に求められているのは、変革を起こすリーダーとなることです。

転職して外を見てきた人は、少なくとも、違う価値観や仕事のやり方を知っているので、現在の価値観や仕事のやり方を客観的に比較してみることができます。外のベンチマークと比較して、もっと優れた(または効率のいい)やり方を導入することもできます。社内には無い人脈を持っているかもしれません。変革を起こしたいと思っている会社にとって、このような要素を持たない、同じ会社一筋で「定年まで勤め上げたい」と考えているようなベテラン社員は、変革を阻害する要因、または高コストの要因でしかありません。

「同じ会社に長く勤めている、会社への忠誠心の高い社員が多い方が、会社の業績はいいはず」と言う方もいらっしゃるでしょう。でも、忠誠心が高い(社歴の長い)社員が多いことと、会社の業績には関係があるという分析は全く見たことがありません。

個人にとっても、「同じ会社に定年まで勤め上げる」ことを目指すのは、良いことではありません。まず、同じ会社にあんまり長く勤めると、新しい職が探しにくくなります。これは採用する側に立って考えれば自明です。同じ会社に長く在籍していた人は、新しい会社のやり方に馴染みにくいのでは、と考えてしまいます。もしいずれリストラに遭うと考えたら、何十年も同じ会社にいるよりも、複数の会社を経験した方が、経験値も柔軟性も増すので、新しい働き先を見つける可能性が高いのです。

また、同じ会社で勤め上げるということは、人脈や知識も、同じ会社の一定分野に限定されるということです。これは定年後に第二の人生を歩むことを想定すると、他の経験をしている人よりも、その幅や可能性が限定されます。

ロールプレイングゲームで、いろんな場所に行き、新しい経験をすればするほど、「経験値」が上がり、強いプレイヤーになりますよね? キャリア形成も同じです。もちろん、転職はリスクです。ただ、「同じ会社で定年まで勤め上げる」ことを目指すよりは、「経験値」が上がって強いプレイヤーになれる分だけ、長い目で見れば、リスクは低いのではないでしょうか?

GAISHIKEI LEADERSは、外資系企業での仕事等を通じて日々グローバル社会とかかわってきたメンバーが、自らの『和魂洋才』を一層磨き上げ、社内外で活用し、グローバル社会と調和した、開かれた元気な日本の未来を実現することを目指し、設立されたコミュニティ・プロジェクトです。『和魂洋才』の梁山泊となり、日本社会・日本企業の多様性の欠如や視野狭窄、長期停滞等の課題に対して、新たな視点での解決策を提案し、政治・経済・教育の各分野から日本社会に変革を起こしていくことをゴールとして活動を展開しています。

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