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「放射性物質の除去装置」ALPS(アルプス)の最前線で見た"東芝vs日立" 【映像あり】

2015年03月13日 22時14分 JST | 更新 2015年03月13日 22時22分 JST

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"高性能"ALPSを取材する筆者(後ろの設備は「日立製」)

福島第一原発の汚染水の除去。

さまざまな機械が導入されているが、素人にはわかりにくい。

冒頭の画像は、ヤフーニュース個人のオーサーによる取材団として、3月9日に福島第一原発を取材した時に見せてもらった「高性能ALPS」(アルプス)である。設備に「HITACHI」というロゴがある点に注目してほしい。

この高性能ALPSは「日立製」なのだ。

昨年の今頃あったのは「東芝製」だけだった。

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2011年の事故の後から、放射性物質を除去するために「キュリオン」「サリー」「アルプス」といろいろな装置の導入が発表されている。

事故当時、私はテレビ報道の現場にいて、「サリー」などの名前を耳にしていたが、その違いは専門的すぎてよくわからなかった。

ましてや一般の人たちとなると、ますます「?」だろうと想像する。

私自身が理解している範囲でいうと、事故当初はフランスのアルバ社やアメリカのキュリオン社の「放射性物質除去装置」が導入され、次第に国産の設備へと主力が移ってきた。国産の代表的なものがALPSなのである。

「ALPS」というのは、62種もの多核種除去装置のことで「Advanced Liquid Processing System」を略したものだ。

今回見せてもらったのは「高性能」のALPSということになる。

私は昨年の今頃にも福島第一原発を訪れているが、この時に見せてもらったALPSは、「高性能」という言葉がついていないALPSだった。

そのALPSは写真にある「東芝製」だった。

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多核種除去装置ALPS=東芝製(2014年3月撮影)

取材時には、東京電力から福島第一原発で溜まりづける汚染水を処理する「切り札」として紹介された。

東電のホームページによると...

多核種除去設備 (ALPS)

既に設置している水処理設備では、放射性物質のセシウム(※1)を主に除去しているが、セシウム以外の除去が困難であった。多核種除去設備(ALPS)ではセシウム以外の62種の放射性物質(トリチウム(※2)を除く)の除去が可能となっている。2013年6月現在、本格稼働を目指して試験(※3)を行っている。

※1.セシウム・・・アルカリ金属の一種。放射性セシウムは事故後、放射線ヨウ素とともに主に検出されている放射性物質のひとつで、ガンマ線を放出する。

※2.トリチウム・・・ベータ線を放出する放射性物質。主に水の形態で存在することから、ろ過などでは除去することができない。

※3.A系は2013年3月30日より開始(6月16日に停止)、B系は2013年6月13日より開始、C系は2013年9月27日より開始。

■設備の概要

・前処理設備、吸着塔の順に汚染水を通し、62種類の放射性物質を除去する

出典:東京電力ホームページ

水溶性のため、除去が難しいトリチウムを除いて、ストロンチム、セシウム、プルトニウムなど62の種類の放射性核物質を取り除くことができると説明されている。

ところがこの東芝製のALPS、設置当初からトラブル続きだった。

東京電力のホームページにざっと目を通すだけでも数多くのトラブルが生じている。

報道関係各位一斉メール 2013年

福島第一原子力発電所多核種除去設備バッチ処理タンク2Aにおける水滴の発見について(続報2)

平成25年6月17日

東京電力株式会社

先にお知らせいたしました多核種除去設備バッチ処理タンク2Aにおける水滴の発見に関する続報について、お知らせいたします。

当該タンク下に滴下水を受けるためのバケツを設置しておりましたが、昨日(6月16日)から約16時間バケツで受けた滴下した結露水(370ml)の核種分析を行った結果、以下の通りでした。

【バケツに受けた水の核種分析結果】

・セシウム134 :1.9×10^0[Bq/cm3]

・セシウム137 :3.9×10^0[Bq/cm3]

・全ベータ核種:6.7×10^3[Bq/cm3]

また、多核種除去設備A系につきましては、昨日(6月16日)午後6時17分より停止操作を開始いたしましたが、同日午後11時20分に停止いたしました。

出典:東京電力ホームページ

・多核種除去設備(ALPS)におけるHICからの吸着材とろ過水の混合物のオーバーフローおよびクロスフローフィルタAスキッドの漏えい警報発生について

・多核種除去設備 C系スラリー移送ポンプ流量低下について

・多核種除去設備 バッチ処理タンクからの漏えいを踏まえた追加調査結果(続報2)

・多核種除去設備バッチ処理タンクからの漏えいを踏まえた追加調査結果(続報)

・多核種除去設備バッチ処理タンクからの漏えいを踏まえたB系統の停止計画と追加調査結果

・福島第一原子力発電所多核種除去設備(ALPS)バッチ処理タンク2Aにおける水滴の発見について

・多核種除去設備(ALPS)の誤操作による停止について

・増設多核種除去設備の進捗状況および不具合への対策について

昨年3月に福島第一原発で東芝製のALPSを見せてもらって以降、フィルターの不具合などが相次ぎ、4月、5月は稼働率が3割台に落ちた。政府の出資して「改良形」も増設し、すべての系統で稼働が再開されたのは昨年10月だった。

東芝のALPSについては、もともと厳しい指摘も出ていた。

東電・東芝の「ALPS」は、役に立たない(東洋経済オンライン・2013年10月22日)

ALPSは無駄だけでなく危険、発想を切り替えよ

――冨安さんは、ALPSによる処理はコスト的に無駄であるだけでなく、危険だとも指摘しています。

東電はALPS処理済み水の海洋投棄を想定しているので、ストロンチウムと比べて相対的に微量で、危険性の少ない核種も高いコストと手間ひまをかけて基準値以下に減らそうとしている。そのためにALPSは設備が大がかりになった一方で、最も重要なストロンチウム除去のための工程が合理的に設計されていない。

出典:東洋経済オンライン

相次ぐトラブルで不信が広がる中で登場したのが、「高性能」のALPSだった。

新増設の高性能ALPS公開 東電福島第一原発(福島民報・2014年10月17日)

東京電力は16日、福島第一原発で汚染水処理を加速するために新増設した多核種除去設備(ALPS)や、原子炉・タービン建屋周囲の「サブドレン」と呼ばれる井戸からくみ上げた地下水の浄化設備などを報道陣に公開した。

ALPSは汚染水からトリチウム以外の62種の放射性物質を除去できる装置。東電は、3系統で1日当たり約750トン処理する既設型と同規模の「増設ALPS」と、一系統で1日約500トン処理できる「高性能ALPS」を建設。増設ALPSは3系統で試運転を開始している。既設型で発生したトラブルへの対処を反映しているという。

高性能ALPSは汚染水の前処理の工程を改善することで廃棄物量を大幅に低減できる。16日で原子力規制委員会の検査が終わり、近く試運転を開始する。3施設合計の処理能力は1日約2000トンとなる。

サブドレンからくみ上げた地下水の浄化設備は、1日約1200トンの処理能力がある。8月からの試験で約1000トンを処理し、外部のタンクに貯蔵している。東電は浄化した水を海に放出する方針で漁業関係者に説明を進めている。

出典:福島民報のホームページ(2014年10月17日)

今回、原発事故から4年を迎えつつあったタイミングでの福島第一原発内での取材でこの「高性能ALPS」を見せてもらった。

そばまで近づいて映像を撮ることができた。

日立」というメーカーのロゴが明記されている。

東芝製と日立製はどこが違うのかは技術的なことなので素人にはわかりにくいが、担当者の説明では日立製の信頼性はかなり高い印象を受けた。

実は、高性能ALPSと同時に(東電ではなく)政府が責任を持つ改良ALPSも昨年10月に導入されている。

こうして「汚染水」処理の仕組みが「今の形」になったのが昨年10月のことだ。

ALPS、初の全系統が稼働 福島第一原発の汚染水処理(朝日新聞 2014年10月23日)

東京電力は23日、福島第一原発で高濃度汚染水を処理する多核種除去設備ALPS(アルプス)のうち、トラブルで停止していた、1系統の運転を再開した。当初からあった3系統で同時に処理するのは約1カ月ぶり。他に今年9月に完成した増設3系統と、今月導入された改良型1系統も運転中で、初めて全系統が稼働した。

再開したのは、元々あった3系統のうちBと呼ばれる系統。9月に処理中の水が白濁し、放射性物質の吸着を妨げるカルシウムが通常より高い濃度で残っていた。東電の調査で、水漏れを防ぐ部品に亀裂があり、カルシウムを含んだ汚染水が、フィルターを通った後の水の中に漏れ出していたとわかった。

出典:朝日新聞デジタル(2014年10月23日)

これでALPSは,既存のALPS3系統に加え、増設したALPS3系統、さらに高性能ALPS1系統で、すべてが順調に稼働すれば、1日2000トンの処理が可能になる計算だ。

日立製の「高性能」ALPSも、放射性物質の除去という点では性能はいいという。

ただ、「汚染水」も一様ではない。海水などが混ざっていて塩分があったり、その都度、フィルターの種類を変えていく必要がある。

現場担当者によると、その調整がかなり難しいらしい。

担当者の話を聞く限り、汚染水処理は技術的に難しく、机上のプラン通りの単純なものではないようだ。

汚染水の水質などの状況に合わせて対応していかねばならないので、「1日2000トン」と言われると、東京電力の本社も、国も、マスコミはいつもフル稼働することを期待してしまうが、現状ではそれを期待するのは難しい印象だ。だとすれば昨年9月に政府が介入して改良型3系統などを一気に導入したように、国が責任をもって設備を増やしていくしかないだろう。

東京電力は当初は「2014年度内に終える」と表明していた汚染水処理の期限目標を今年1月には放棄した。

福島第一原発で続いている「汚染水」の行方は、凍結などによる地下水遮壁の成果と並んで、処理(=ほぼ無害化)がどれだけ迅速にできるのか、という点にもかかっている。

そういう意味では、東芝だけで結果を出せなかったALPSについて、日立が加わって、より良い方向になっていくことが期待される。

「汚染水」処理の最前線でも、国内ライバルメーカー同士が技術力アップにしのぎを削っている。

現状においては、東芝がリードしてしたところがトラブルが続き、日立が参入して結果を出しつつある、という状況だといえるだろう。

いずれにしても「オールジャパン」で国民のために結果を出してほしい。

(この記事に登場する映像と画像はすべて「ヤフーニュ-ス個人代表撮影」によるものです。)

(2015年3月14日「Yahoo! 個人」より転載)