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施設側が問題にした「放送直後、自傷行為で治療した女児」。日テレは施設側との面会で"誠意"を示せる?

2014年01月29日 23時56分 JST | 更新 2014年03月31日 18時12分 JST

児童養護施設の団体である「全国児童養護施設協議会」が記者会見で配布した資料を読んで驚いた。

同協議会が各都道府県の児童養護施設長などに緊急のアンケート調査をした結果が出ていたのだが、以下の結果をよく読んでほしい。

○(第1話を見た後)、第2話の放送時間が近づくと、「モヤモヤする。死にたい...」と繰り返す。 職員が見る必要がないことを伝えるなど支援したが、本人は気になるようで第2話の放送も見 た。放送終了後に自傷行為に及び、病院で治療を受けた。(女子児童)

○クラスメイトの男子生徒が、施設の児童を「おい! ポスト!」と呼びつける。それが何度も続き、 児童は言い返せず黙ってしまい、苦しい思いをした。(女子児童)

○施設の児童が放送翌日、クラスメイトの男子グループから、「お前もどこかにもらわれるんだろ?」などとからかわれる。(女子児童)

○親戚や友人から、「あんなひどい所に子どもを預けず、早く引き取るべききだ」と言われた。(児童保護者)

特に、一番最初に報告されているケースだ。

第2話の放送時間が近づくと。「モヤモヤする。死にたい...」と繰り返す。第2話の放送を見た後で、「自傷行為」に及んで、病院で治療を受けた、という。

「自傷行為」というのは、リストカットなど自分自身を刃物で傷つける行為だ。

かなり重大な問題なのに、マスコミの報道、新聞の報道もこの点を強調して報道していない。

以下の朝日新聞の記事は特徴的だ。

あえて自傷行為には触れていない。意識的に避けているかのようだ。

「明日ママ」つらい思い15件、日テレ、協議会と面会へ(朝日新聞)

児童養護施設を舞台にした日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」をめぐり、全国児童養護施設協議会は29日、「同級生から(主人公のあだ名で、赤ちゃんポストを意味する)ポストと呼ばれるなど、ドラマのために子どもがつらい思いをした事例が15件ある」と公表した。 (中略)協議会は初回放送後の17日から、全国の施設長ら役員67人に対し、ドラマの影響や子どもたちの感想を報告するよう求めている。27日までに109件が寄せられ、このうち施設の女の子が同級生に「ポスト」と何度も呼ばれたケースや、同級生の男子グループから「おまえもどこかにもらわれるんだろ」などとからかわれたケースなど、子どもがつらい思いをした事例が15件あったという。


出典:朝日新聞

女子児童の「自傷行為」については、ショッキングな内容なので、新聞社としての事実確認できなければ報道しないということかもしれない。

読売新聞は、「自傷行為」とは書いているが、あまり詳しく書いていない。

日テレ「明日ママ」、内容見直しを再度要請(読売新聞)

同協議会が全国の施設長を通じて調査したところ、ドラマが理由で子どもがからかわれるなどの問題事例が15件ほど報告された。ドラマを見た少女が精神的に不安定になり、自傷行為に及んだケースもあったという。同協議会は今月20日にも同様の要請を行ったが、改善が見られないとして、「誠意ある対応がない場合、番組中止を要求せざるを得ない」としている。  

出典:読売新聞

対照的なのが毎日新聞で、女児の言葉もそのまま引用してこの点に触れていた。

日本テレビ:児童養護施設協議会、ドラマ「明日、ママがいない」で配慮を再度要請(毎日新聞)

毎日新聞も記事本文には書いているが、見出しにするなどの扱いにはしていない。

新聞それぞれの判断があるのだろうが、あのドラマに「加害性」があるかどうかが議論になっているなかで、「ドラマの影響で自傷行為に走った施設の子どもがいる」という事実は大きく扱う意味があったと考える。

社会的な養護に責任を持つ立場にいる全国児童養護施設協議会が、こういう実態があった、と記者会見をしているのに、一番衝撃的な事実を載せなかったり、強調しない、という理由は私には理解できないが、それぞれの会社や記者の立場で、どの事実が重要かを判断している。

同じ事実を伝えるニュースなのにその差が大きいことにも驚かされる。

以前この欄に書いた記事で、日本テレビが同局のドラマ「明日、ママがいない」の影響で児童養護施設の子どもたちの身に起きていることに耳を傾けず、チーフ・プロデューサーの電話ひとつで「放送中止も謝罪もしない」などと関係者に伝えてきたことを、私は「傲慢」な姿勢だと批判してきた。

せめて問題提起した人の元にこちらから出向いて話を聞くのが制作者のあるべき姿勢ではないのか、と指摘したのだが、今日ようやく日テレの担当者が全国児童養護施設協議会側と顔を合わせて会う、という段取りになった。

第1話の放送直後に関係者が抗議し、その後に第2話、第3話と放送された後での面談だ。

遅きに失した感はあるが、それでもこれ以上の犠牲者を出さないためには、誠心誠意、施設側の話を聞いてほしい。

もちろん、そこでも、「自傷行為に走った女子児童」のことが話題になることだろう。

別稿にも書いたが、フラッシュバックやそれによる自傷行為はふだん取材をしていない人間には理解しにくい。

それでも日本テレビ側が関係者の言葉を受けとめて、今からできることは何かを考える一歩にしてほしいと願う。

自傷行為に走る子どもは全国中にいる、と児童養護の専門家たちが以前から警告しているのだから。

「治療中」で済んでいるうちならまだ良い。

取り返しがつかないことになったら、社会はそのテレビ局を許さないだろう。

(2014年1月30日「Yahoo!個人」より転載)

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