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「明日、ママがいない」でBPO人権委は「結論先送り」

2014年03月18日 19時18分 JST | 更新 2014年05月18日 18時12分 JST

BPO(放送倫理・番組向上機構)の3つの委員会のうち、放送人権委員会は3月18日午後、東京都千代田区にある同機構内で会合を開いて、熊本市の慈恵病院から人権侵害との申し立てがあった日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」について検討を行った。

その結果、放送人権委員会としては、このドラマが人権侵害に当たるかどうかについては来月の会合まで結論を先送りすることにした。

当初、放送人権委員会が18日の会合で何らかの結論を下すのでは、という見方があったが、この日も結論は出なかった。

慈恵病院側が「このドラマが児童養護施設で暮らす子どもたちや職員への人権侵害にあたる」として病院長名で申し立てを行ったこと対して、委員会では「申し立ての要件を満たさないのでは?」などの意見が出ていたが、委員会では申して人である慈恵病院側と放送局側(日本テレビ)との主張がその後どうなったのかを確認した上で、4月15日に行われる会合で放送人権委員会としての最終的な判断を行いたいとしている。

委員会の終了後、三宅弘委員長(弁護士)が明らかにした。

ドラマ「明日、ママがいない」をめぐっては、3月16日に同じBPOの青少年委員会が「審議入りしない」という結論を下し、青少年委員会の委員長が近々、見解を発表する予定だ。

ドラマの第1回、第2回の放送では、児童養護施設がとても恐ろしい場所であるかのような表現や施設長が児童養護施設に入所する子どもたちをペットショップの犬にたとえて、「食事が欲しかったら泣き真似がうまくなれ」と言って食べさせない、などのシーン、入所している子どもたちが里親を探す期間を「お試し期間」と呼び、里親を希望する人たちが「子どもを人形と同列に扱う身勝手な大人たち」として描かれていたことが問題になった。

また、日本では慈恵病院だけしか運営していない「赤ちゃんポスト」に捨てられていたという設定の女の子が、「ポスト」というあだ名で登場することも問題視されたほか、家庭内で暴力が絶えず、親が身勝手な形で子どもを捨てていくシーンなどが「児童養護施設にいる子どもたちの心の傷」を再発させてフラッシュバックを起こしかねない、として児童養護施設の全国組織である全国児童養護施設協議会などが放送内容の見直しを日本テレビに求めていた。

また、日本子ども虐待防止学会や浜松医科大学・子どものこころの発達研究センターも、日本テレビに「内容の見直し」を要請していた。

さらに全国児童養護施設協議会による調査でも、ドラマを見た児童養護施設の子どもが虐待などの心の傷をフラッシュバックさせて「死にたい」と漏らすようになったケース、とか、自傷行為を及んでリストカットで病院の治療を受けたケース、あるいは、ドラマを見た学校の同級生からからかわれたケースなどの「実害」が報告されている。厚生労働省も被害事例について調査を進めている。

こうしたことを受けて、ドラマ「明日、ママがいない」の放映にあたっては番組の提供スポンサー全社が提供社名の告知をやめ、コマーシャルも放送しないという異例の事態になった。

BPOの放送人権委員会では、「慈恵病院側と日本テレビ側のその後の話し合いの状況などを見極めたい」として、今後、改めて双方から状況を聞くことにしている。BPOには、青少年委員会、放送人権委員会、放送倫理検証委員会の3つの委員会があるが、放送人権委の三宅委員長は「我々は我々の職務の範囲内で粛々とやるだけ」と話すにとどまった。

三宅委員長は「近々出される青少年委員長の見解を読んだ上でもなお、慈恵病院と日本テレビ双方の主張が『相容れない』ものなのかを来月まで確認したい」としている。

他の委員会と連携してBPO全体としてこの問題について何らかの対応をする必要があるのではないか、という記者からの質問や判例を示す必要があるのではないか、という質問に対しては、「それは考えていない」と回答した。

また、子どもの精神発達に詳しい医師らが指摘している番組の「加害性」に関しては、「申し立ての文書に書かれていないので評価していない」と述べた。

一方、現在、慈恵病院長、理事長が申し立て人になっていて、実際の被害者とされる「児童養護施設の子どもたち」などと食い違っていると指摘されている点については、「申立人が追加されることがあれば対応する」と柔軟に対応する姿勢を示した。

放送界を揺るがした「明日ママ」の問題でBPOという放送局のお目付機関がどう判断するのか。

放送倫理を守る番人としてのBPOの存在意義がこの1か月後に問われることになる。

(2014年3月18日「Yahoo!個人」より転載)

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