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ネット上でも見られる! NHKの"やらせ疑惑"番組 N記者よ、もう白状すべきだ!!

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NHK『クローズアップ現代』2014年5月14日(水)放送のHP

週刊文春が暴いたNHKの『クローズアップ現代』の"やらせ疑惑"。

この番組はタイムリーな社会問題などを掘り起こす硬派の報道番組で、私も大好きな番組だ。

最近でも「女性の貧困」をテーマにした回や「戸籍のない子どもたち」をテーマにした回など、この番組の調査報道がきっかけで政治や社会が目を向けるようになった問題は数多い。

それだけに"やらせ疑惑"が本当ならば、裏切られた思いだ。数多くの関係者の心情を思うと、無念で残念だというしかない。

実は、"やらせ疑惑"の番組は今でも(3月24日1時00分)NHKの番組ホームページで見ることができる。

もしも見ることができなくなったとしたら、NHKが公式に「やらせ」かあるいは何らかの「不適切な取材」を認めた時になるだろう。

私の予想では、NHKはごく近いうちに「不適切な取材」を認めるに違いない。

私のようにテレビで調査報道をやってきた人間の目から見ると、どう考えてみても"やらせ取材"というほかはないからだ。

だから、今のうちにここに載っている映像をよく見ておいた方がいい。

このHPのURLは、以下の通りだ。

http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3496_3.html

ここには8分6秒の番組映像がつけられている。

このうち、4分46秒からラストの8分6秒までの3分20秒の部分が、週刊文春の指摘する"やらせ疑惑"の対象になっている箇所だ。

ここから大阪放送局のN記者によるナレーションが入る。

出家詐欺はどこまで広がっているのか。
インターネットで検索すると、出家をあっせんするホームページが複数見つかりました。

"改名のメリットは計り知れない。"

"ブラックも消えて人生リセット!"

出典:NHK『クローズアップ現代』2014年5月14日(水)放送の番組HP

そして、N記者の取材による映像シーンが続く。

N記者はオフィスビルの一室をノックしてから中に入っていく。
建物の周辺や部屋の中はボカシが入ってよくわからないが、雪の結晶のような模様のセーターを着た「ブローカー」が待ち構えていて招き入れているように見える。

私たちは、出家をあっせんするブローカーの1人が関西にいることを突き止めました。
たどりついたのはオフィスビルの一室。
看板の出ていない部屋が活動拠点でした。
ブローカーは、経営が行き詰まった寺などを多重債務者に仲介することで、多額の報酬を得ているといいます。

話:ブローカー
「壇家さんの少ないところがあるんですよ。
法事・法要をするときに入ってくる収入がまず減ります。
お金が回らないですよね。
となれば、僧籍を取得させる代わりに、見返りをもらうと。
ビジネスが成り立つ。」

出典:NHK『クローズアップ現代』2014年5月14日(水)放送の番組HP

ところが週刊文春の3月26日号によると、
「ブローカー」として登場した松木氏(仮名)が、N記者から「ブローカーのような掛け合いをしてほしい」と頼まれていたと証言する。

N記者は「ブローカー役で」と、松木氏に「役」を演じるように求めたというのだ。

つまり、番組映像で「ブローカー」として登場する男(ボカシがかかっているが、松木氏)は、N記者から頼まれて「ブローカー」のように「振る舞っていた」ということになる。

これはもしN記者が関与していたとすれば、明確な「やらせ行為」になる。実際には事実でないことを作為をもってやってもらったということになるので、もし松木氏が本当の「ブローカー」でない場合には「やらせ」だけでなく、「ねつ造」行為も含むことになり、罪はより重大になる。もちろんどちらも放送倫理上、絶対に許されない行為だ。
実際、週刊文春の取材に対して、松木氏は本当は「ブローカー」ではなく、「また聞き」の話をしただけ、と証言しているという。

決定的なのが、

映像で記者が訪ねていった事務所がブローカー役の松木氏が使っている事務所ではなかったという点だ。

週刊文春によると、このオフィスもN記者が松木氏を連れていったのだというのだが、それが事実であるなら、N記者がオフィスを訪ねて入って行く場面の撮影そのものが「やらせ」だということになる。

そして次のシーン。

N記者による以下のナレーションが入る。

ブローカーのもとには、多重債務者の訪問が後を絶たないといいます。
私たちが取材したこの日も、数百万円の借金を抱えた男性が現れました。

多重債務者
「ちょっと金融の方が苦しくなりまして、こちらさんにさえ来れば、もう一度やり直せると伺って来たもので。」

ブローカー
「何件ぐらい?」

多重債務者
「もう7~8件つまんで、もうこれ以上は首つるしかないというとこまできてますけども。」

ブローカー
「まずは別人になるっていう方法があります。
こちらの方でピックアップしたお寺で、得度しましたと申請すれば、名前が変わります。
少しね費用がかかりますけど、50万円前後。
極力早いほうが...。」

出典:NHK『クローズアップ現代』2014年5月14日(水)放送の番組HP

「ブローカー」と「多重債務者」とのやりとりは、オフィスの部屋を外側から隠し撮りしたような映像で行なわれている。
「ブローカー」も「多重債務者」も音声はかなり明瞭に収録されている。

私がこの映像を見た時に、疑問に思ったのが、「音声」はどうやって収録したのかということだった。

通常、この流れだと、撮影スタッフは「ブローカー」の松木氏の許可を得て、松木氏にワイヤレスマイクを仕込む(つまり、松木氏の服の内部=胸元に小さなマイクを見えないように隠してつける)などして、音声を収録する。

一方で、「多重債務者」の音声は?

こういう場合は、松木氏の胸元のマイクで相手側の音声も拾うことができる場合もあるが、少し距離が離れると雑音が混じって不明瞭になるケースもある。放送された音声は2人とも非常に明瞭だったのが不自然なほど際立っていた。明瞭に収録するには、多重債務者にマイクをつけるか、部屋の中に予め仕込むしかない。

そこで、この場面でも2人のやりとりの音声のクリアさから考えて、週刊文春に松木氏が証言したという「部屋にはスタッフが二、三人いて。カメラも隠し撮り風のものを含めて三、四台設置されていた」という話が説得力を持ってくる。

映像も音声も含めて、最初からNHK側がカメラとマイクを仕込んだ部屋で収録したのではないか?

そんな疑念を持った。

一方で上記の場面の映像は、「部屋の外から」隠し撮りしたような映像だけが使われている。

つまり、部屋の中で撮影した映像は、「多重債務者」が来る前の映像(「ブローカー」のインタビューなど)のみで、「ブローカー」VS「多重債務者」というやりとりでは出てこない。

なぜなのか?

もし、映像も使っていたら、「ブローカー」「多重債務者」とも両方と納得づくの撮影であることが後からバレると判断したからではないのか?

そうなると、この場面が「再現シーン」であることを字幕などで明示する必要が出てくる。

外側からの隠し撮り映像だけの方が、自分たちは部屋を管理する「ブローカー」に取材を許可されて映像と音声を撮ったのだ、という言い逃れができる。また、そうした覗きの映像が持つリアリティというのも確かにある。

ただ、今回、その「ブローカー」役の松木氏本人はこの場所にはNHKのN記者にタクシーで連れてきてもらったと証言し、さらに週刊文春の取材でふだんこの場所を使っていたのは「多重債務者」として登場したX氏だったことが判明したという。

私も、この場面の撮影はいくら隠し撮りにしても、確かに「出来すぎ」だと感じる。

仮に「ブローカー」である松木氏が隠し撮りを了解していていたとしても、何月何日、何時に多重債務者が相談にやってくる、ということが予めわかっていて、「多重債務者」に撮影を気づかれないように撮影するのは容易なことではない。
スモークガラスを使うとか(映像に色がつく)、小さなピンホールカメラを使うとか(映像の周囲が丸くなる)、いろいろやり方はあるが、『クローズアップ現代』の映像を見る限りは、通常のENGカメラでかなり近づいて撮っているらしい印象で相手からバレないままなのが不自然な感じだった。

もしも、「ブローカー」および「多重債務者」の2人ともが撮影を知っているのであれば、一種の芝居であり、隠し撮り風の映像そのものも「やらせ」である可能性が出てくる。

私の経験でも記者がその部屋の中にいる場合、このケースであれば両者にその場で交渉してリアルな場面を撮らせてもらうことはある。
しかし、この場合はあくまで「部屋の外」から、登場人物の片方にはわからないように、隠し撮りしていたという流れなので、そんな交渉という設定はありえないことになる。

番組では、「ブローカー」と「多重債務者」の2人のやりとりが終わった後で、記者とカメラマンが走ってビルの外に出てきた「多重債務者」のX氏を追いかけ、つかまえたところで犯罪行為をやっていいのかといわんばかりの質問をぶつけている。

記者
「犯罪につながる認識は?」

多重債務者
「もうカードも作れないですし、ローンも組めませんし、生きていくためにしかたがない。」

多重債務者を出家させ融資をだまし取る、出家詐欺。
宗教法人を悪用した巧妙な手口が、水面下で広がっている実態が明らかになりました。

出典:NHK『クローズアップ現代』2014年5月14日(水)放送の番組HP

週刊文春3月26日号は「Xはやらせを否定するものの、N記者とは元々知り合いだったことは認めた」と記している。

これが事実ならば、元々は知り合いなのに、走って直撃したような映像は「過剰な演出」だし、知り合いなのに初めて直撃したかのようなウソをついた映像でもある。
この映像を見る限り、

N記者が元々松木氏ともX氏とも知り合いだったという点が事実だったなら、放送倫理上は言い逃れできない、と考える。

もともとの知り合いに注文をつけて演じてもらって、初めて出会ったようなふりをする、ということは事実を曲げて伝えていることになるからだ。

また、事務所も「ブローカー」として登場した松木氏がいつも使っている場所ではなく、

N記者あるいは、X氏が用意したり設定したりしたものであれば、その事実だけでも「やらせ」になると言ってよい。

ナレーションにも疑問な点が残る。

ブローカーは、経営が行き詰まった寺などを多重債務者に仲介することで、多額の報酬を得ているといいます。

そもそも、この人物(松木氏)が「ブローカー」であるという人物確認はしたのか?

この種のダーティーな仕事をしている人やそう自称する人は、虚栄などによる詐称も少なくない。その根拠はきちんと押さえているのか。

NHKでは通常、取材時には人物の身元確認をすることを記者に義務づけているが、少なくともこの「ブローカー」に関しては、画面上、それを確認したような形跡(文書など)がない。
「多額の報酬」というが、いったいその程度の報酬があったのか、ナレーションも曖昧だが、デスクやプロデューサーはちゃんとチェックしたのか?

ブローカーのもとには、多重債務者の訪問が後を絶たないといいます。

これは本人が言ったことか? 「後を絶たない」の根拠は?

「訪問が後を絶たない」とナレーションで表現する場合、最低でもまる1日張り込んだとか2日張り込んで何人来たとかを目視するのが記者の基本動作だが、その取材の成果がナレーションの上でも映像でも出てこない。これも不自然だ。

私たちが取材したこの日も、数百万円の借金を抱えた男性が現れました。

この男性は数百万円の借金を抱えた多重債務者だというが、借金がいくらあるかNHK側では確認したのか。本当に数百万円なのか。

この人物(=多重債務者のX氏)がN記者と以前からの知り合いだとするなら、「現れました」というこのナレーションの文章はまるで偶然、事務所に入ってきたかのように見せる表現であり、視聴者を欺く行為である。

まともな報道記者やディレクターがやることではない。

このように「不適切な点」が満載なのに、NHKがまだ「やらせ」を認めていないのは腑に落ちない。

週刊文春だけでなく、新聞社や民放テレビなども『クローズアップ現代』の"やらせ疑惑"の取材を進め、関係者の証言を集めているという。


『クローズアップ現代』という国民的な報道番組にこれ以上傷をつけないためにも、

N記者は、さっさと白状して報道の職場を去ることだけが残された道だと思う。

もちろん、週刊文春が完全なでっち上げをやっていなければ、とか、ブローカー役の松木氏が完全にウソを言っていなければ、という前提つきではある。

そうでなくとも、

見れば見るほど、この『クローズアップ現代』の大阪取材部分は「出来すぎ」だし、違和感は残る。

視聴者はぜひこの映像を見て、自分の目で真偽を判断してほしい。

もちろんNHK側が、やらせやねつ造がなく、取材に自信があるというなら、いつまでもこの映像を公開したままにしておいて、視聴者の判断を仰げるようにすればいい。

いつまで視聴可能かわからないので、URLを再度貼っておく。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3496_all.html


(2015年3月24日「Yahoo!ニュース 個人」より転載)
 

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