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日テレ「明日、ママがいない」 実の母親が育てられない「養子縁組の子ども」を育てる母親からのメッセージ

2014年01月22日 17時44分 JST | 更新 2014年03月23日 18時12分 JST

日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」では、赤ちゃんポストに捨てられたという設定の女の子が「ポスト」という名で登場する。子どもたちはペットショップの犬にたとえられ、仔犬が新しい飼い主を求めるがごとく、養子縁組で「新しい親」を求めるシーンがある。

日本でただひとつ「赤ちゃんポスト」を運営している熊本市の慈恵病院や全国の児童養護施設関係者が「子どもたちへの差別・偏見をあおり、今、施設などにいる子どもたちを傷つけるので放送を見直してほしい」と訴えているが、日本テレビは「放送継続」を公表している。

そんななか、慈恵病院がかかわって実母が育てられなかった子どもの命を助けたケースで、その子を特別養子縁組で自分の実子として育てている母親からメールが寄せられた。

私は心を揺さぶられた。

「赤ちゃんポスト」などで救わなければ奪われてしまったはずの命。その子どもを育てる側の、切実な思いを読みとってほしい。

(以下、ほぼ全文のままだが、本人の了解を元に本人が特定されかねない部分などに手を加えて一部修正してある。)

水島様 初めまして。突然のメッセージすみません。

「明日、ママがいない」について、熱心に取り上げて下さりありがとうございます。

実は、我が娘、次女は熊本の慈恵病院で産まれ、そして私たち夫婦の実子として特別養子縁組をしました。今、4歳になります。

私は長女を授かった時もひとり流産し、その後も流産を何度も経験し、そして夫の「養子縁組を考えよう」の一言から、真剣に養子縁組のことを考えて調べ始めました。そして、何度かの面談や説明会のあと、ようやく次女を養子縁組という形で授かり、生後11ヶ月の時に家庭裁判所にて正式に養子縁組の確定がおりました。

熊本の慈恵病院に、実母の陣痛が始まったという連絡を朝の5時に受けて、そのまま急いで支度をし、当時は幼かった長女と一緒に電車、飛行機などを乗り継いで、ようやく午後に熊本の慈恵病院に到着し、夜の出産に間に合い、分娩室のとなりの部屋で、長女と待機をして、産まれてそのままの次女と対面しました。

私たちは、血の繋がりはありませんが、その瞬間から、私たちは本当の親子になり、長女にとっても、本当の妹になりました。実子の長女、養子縁組で我が家の家族になった次女、ふたりとも何も変わらず、私達夫婦の大切な大切な宝物です。

慈恵病院では、実母側の心のケアも親身になって行っており、何度も相談して、そしてどうしても育てられないという赤ちゃんを、養子縁組を含めて話し合いを重ねるそうです。

我が家の次女の実母は、当時16歳でした。

彼女はどうしても育てたいという気持ちだったようですが、身内の反対もあり、何度も話し合いを重ねた結果、養子縁組に出すと決めたそうです。

どうしても育てたい。。。しかし、まだ未成年で母子家庭だった彼女には、どうしても育てることが許されませんでした。

慈恵病院は、様々な事情で妊娠したお母さんたちの相談を24時間体制で行っています。

看護部長は、寝る間も惜しんで、夜中でもいつでも電話相談に乗っているそうです。

そして、何よりも実母の気持ち、そして生まれてくる赤ちゃんのことを第一に考え、どのような方法が良いのか、納得いくまで話し合いをしています。

「こうのとりのゆりかご」がマスコミの偏った報道により、当初かなり批判され、そして抗議の電話や嫌がらせなども、多数あったそうです。

しかし、「こうのとりのゆりかご」を設置した事で、慈恵病院に多数の相談が全国から寄せられ、慈恵病院まで行って赤ちゃんを産めないという場合は、協力している他の病院などで赤ちゃんを産んでから、養子縁組の手続きを取っています。

民間の団体が斡旋してくださるのですが、是非その民間の団体の方々にもお話を伺って、事実を報道して頂きたいと思います。

実は今回の件で、私は養子縁組をした親という立場でも、娘のことを考えても、ドラマを見てから、とても辛く悲しい気持ちで眠れませんでした。

そして、長女がこのドラマのことを知り、相当ショックを受けております。

私は、周りの友人などには、次女が養子縁組をして、私たちの娘になったことを、包み隠さず話しています。

9歳の長女は、学校で「妹と顔が似ていない」「本当の妹ではないんでしょ?」など、色々と言われたことがあります。

これは、想定内でしたので、きちんと親御さんたちにも、懇談会などの機会に説明し、そして周りの友人たちにも、次女が生まれる前の段階で、 私たちが養子縁組を希望して待っているということから話しておいたので、多少問題はありましたが、全て対処してきました。

いつでも堂々と「次女は血の繋がりはないけど、戸籍上も私たちの実子だし、血の繋がりは何ら関係ない」と説明をしてきましたし、私も夫も、そして長女も、次女のことを本当の家族としか思えなく、養子縁組のことは普段はすっかり忘れているくらいです。

とにかく、可愛くて仕方なく、我が家の宝物です。

しかし、今回の件は、私たち家族も、何より長女にとって、相当ショックだったようです。

何故、芦田愛菜ちゃんのような、小学生に人気がある子役の子が、ポストというあだ名をつけられた役をやらされているのか・・・何故、親に捨てられた子や施設で育つ子が、犬扱いされないといけないのか・・・

いくらドラマでも、本当に酷すぎると、長女はとても大きなショックを受けています。

そして、学校に行って妹のことでひどいことを言われたりしないだろうか?とかなり不安定になっています。

今までは全て何とかうまくいっていました。

時々好奇心から、妹のことを聞き出す子がいたりしましたが、長女はいつも堂々と「妹を産んでくれた人は他のママだけど、妹は私の本当の妹だし、私たちの大切な家族なんだよ」と、堂々と周りに説明していました。

しかし、ドラマの影響はとても大きいのだと、今回痛感しました。

あれはフィクションだからと、当事者じゃなければ考える方も多いのだろうと思います。

しかし、ドラマの影響は長女の年齢の子どもたちにとっては、まるで真実のように映ってしまいます。

私は、長女や次女がこれからドラマの放送を続けるにあたって受ける影響をとても心配しています。

大人の私でしたら、そんな意見や批判は簡単にはねのけることができますが、子どもたちは違います。

その一言で傷つき、その一言が原因で、精神的にも病んでしまう場合もあります。

そして施設で育つ子どもたちは、親からの虐待を受けて施設に来た子も多く、あのドラマを見たりした学校の子どもたちから、嫌がらせやひどい言葉を言われる可能性がかなりあると思います。

施設の事や、特別養子縁組、そして慈恵病院のことを、真実をそのまま伝えてくださるのは、私はかえってありがたいことだと思っています。

しかし、ご存知の通り、このドラマにはほとんど真実はありません。

実際に施設や実親から酷い対応を受けて育った子も沢山いるかもしれません。

しかし、そういう辛い体験をした子達にとって、あのドラマは傷に塩を塗る以外の何物でもありません。

そして、慈恵病院の取り組みは、私も慈恵病院に次女を迎えに行った時に、実母として私のことを扱って下さり、とても親切にして下さり、何より、実母側、赤ちゃんの本当の幸せを考え、日々苦労している姿を見ているので、あのドラマは、慈恵病院やその関係者に対しても、本当に酷い内容で、許せない気持ちで一杯です。

下手な文章ですが、あのドラマが放送されてからこの一週間、どうしても辛くて眠れない日々を過ごしていました。

ただのドラマだし・・・と言う意見もあるかと思います。

しかし、日々養子縁組のことで苦労されて、何よりも赤ちゃんの幸せを考えている病院側、施設の方々、里親、養子縁組をした親達、施設や養子縁組で育った子どもたちにとって、どれほど酷い内容なんだろうか・・・と、色々と考えてしまい、全く眠れません。

先日、薬師丸ひろこさんが主演の、慈恵病院が舞台になっているTBSのドラマ「こうのとりのゆりかご」を拝見しました。

あのドラマは、「こうのとりのゆりかご」の現状や病院、実母やその家族、養子縁組をした親達のことを、かなり取材してドラマ化したように見えました。

あのドラマを見ている間、次女が産まれた日のことや、今までの事、病院のスタッフの方々の優しさなどを思いだし、泣けて泣けて仕方なかったです。

出来れば、「こうのとりのゆりかご」のことや養子縁組のことを、もっと広く世間の方々に知ってもらいたいとずっと思っていました。

まだまだ日本は、養子縁組をした家族や子どもたちに対して、偏見があり、真実が伝わっていないと思っていましたし、欧米のように、堂々と「我が子は養子縁組をしたのよ」と、挨拶のように言えるような社会になってほしいなと、ずっと願っていました。

欧米人に養子縁組をした事を伝えると「おめでとう!」と真っ先に言われ、細かいことは詮索されません。

しかし日本人の方々に養子縁組のことを伝えると「え?何で?」と根掘り葉掘り聞かれます。

この差は一体何なんだろう?と思った時に、やはり日本ではまだまだ養子縁組に対する偏見や、血の繋がりを大切にする日本ならではの、偏った考え方が根強くあるんだろうと思いました。

どうか、日本でも養子縁組や施設で育つ子どもたちに対しての偏見がなくなりますようにと願っていた時に、このようなひどいドラマを見てしまい、それから精神的にショックを受けてしまいました。

どうしても、あのドラマは中止して欲しい。

ただ、視聴率アップのために継続を宣言しているとしか思えません。

とても、関係者に配慮するなど考えてないと思います。

今日ドラマがまた放送されるかと思うと、憂鬱で、昨晩も眠れませんでした。

何故私もここまでショックを受けたのか分からないのですが、やはり長女の反応を見て余計にショックだったんだと思います。

他の方々はもっと大きな養子縁組をしたお子さんも沢山いらっしゃいます。

その子どもたちが学校や周りで、今回のドラマのことでどのように言われるのか、差別やイヤな思いをするのではないかと思うと、かなり落ち込んでいます。

とても読みにくい文章ですみません。

どうしても伝えたくて初めてメール致しました。

このような下手な文章でも、抜粋して何かに載せることがありましたら、構いませんので意見として載せて下さって結構です。

これは事実であり、養子縁組をした家族も、子どもたちも同じように傷ついています。

これからも、このドラマの事、是非取り上げて下さい。

どうぞ宜しくお願いします。

ただ「慈恵病院側が怒っている」や「団体が抗議している」だけの内容しか書いてない記事を読む度に、何故もっと掘り下げてくれないんだろうか?何故、慈恵病院のことをもっと調べて、真実を書いてくれないんだろうか?とずっと思っていたところ、たまたま水島さんの記事を読み、関係者側の意見を細かく記事にしてくださっているのを知り、とても有難いと思いました。どうも有難うございます。

長い文章ですみませんでした。

この問題については、いろいろな立場の人がそれぞれ違う意見や見方を持っている。

だが、マスコミもいろいろな人の意見を両論併記で伝えているが、いちばん大切にしなければならないのはこのメールにあるような「次女」や「長女」の心を推し量ることではないのか。

声を上げられない人たちのことを見落とすならば、マスコミとして物事を伝える資格はない。

こうした人たちの思いを受けとめないで、3・11が来るたびに「寄り添う」ことを強調したり、真夏のチャリティ番組で「ハンディキャップある人のことを考えて」などと叫ぶのは、それは詭弁というものだ。

このドラマについてニュースを伝える報道関係者にもぜひお願いしたい。

こうした思いを持っている人たちが少なからずいる。

その人たちは文中にもあったように、今夜の放送で憂鬱な思いで、眠れない時間を過ごしている。

ぜひ、そうした人たちを見つけ出して取材した上で、記事を書いてほしい。

それぞれの人たちが持つ「思い」をちゃんと受けとめて、記者自身の「気持ち」をこめた記事を書いてほしい。

ジャーナリストは、人の痛みを伝えるのが仕事なのだから。

(2014年1月22日「Yahoo!個人」より転載)