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『紅白歌合戦』の『あまちゃん』再現劇 音楽担当の大友良英が明かす舞台裏

2014年01月03日 15時19分 JST | 更新 2014年03月04日 19時12分 JST

大晦日の『紅白歌合戦』は冒頭から『あまちゃん』のオープニングテーマのメロディが一部入ったオープニングテーマ曲が流れて始まった。

今回のオープニングテーマ曲は「64回だヨ!紅白歌合戦」。

ドリフターズの『8時だヨ!全員集合』を思わせるふざけたタイトルだ。

作曲したのは大友良英さん。

『あまちゃん』の音楽を担当した人物だ。 

オープニングテーマの演奏は彼自身も加わった「あまちゃんスペシャルビッグバンド」。

音楽業界ではとても有名な人らしいが、恥ずかしながら、『あまちゃん』にハマるまで私自身はその名を知らなかった。

(極端に音楽には無知なので、大友さんのせいではありません!すみません!!)

ドラマ『あまちゃん』が好きな人。

大晦日の『紅白歌合戦』を見て感動した人。

この大友良英さんの名前をぜひ覚えておいてほしい。

彼のブログで、『紅白』について記した文章を発見したので、多くの人に読んでいただければと願う。

「これで、本当に『あまちゃん』にピリオドを打てました」と書いてある。

ドラマの制作に「シャドー」として登場したり、協力してくれたりしたミュージシャンたちも紅白で「ハレの舞台」に立つことが出来たのが大友さんにはうれしかったようだ。

大友さんの文章からは、これらの音楽仲間たちへの思いが強く伝わってくる。

昨夜の紅白歌合戦内での「あまちゃん」は、第157話、最終回という感じの15分間のライブドラマでした。 僕らあまちゃんスペシャルビッグバンドも生演奏で参加させてもらいました。


アキちゃんとGMTが一緒に歌い、 そこには途中でやめた宮下アユミもいて アメ横女学園の有馬メグと成田リナに、実際に収録の際にそのシャドーをやってくれたベイビーレイズが一緒にステージに出て みなで一緒に「暦の上ではディセンバー」をやっているだけでも泣きそうなのに、 さらに、ユイちゃんがトンネルを超え紅白でアキちゃんと歌い、 天野春子がシャドーではなく自分の名まえで「潮騒のメモリー」を歌い、 鈴鹿さんがそれに続き・・・ 最後は皆で「地元に帰ろう」をやってヒビキで落とす・・・って、 もう、どこまで憎い演出なんだ。


脚本は宮藤官九郎、演出は吉田照幸と井上剛、プロデューサーの訓覇圭や菓子浩をはじめ、出演者、スタッフ、音楽もみなドラマ「あまちゃん」のメンバー達です。 いつもは録音と編集でしか出会うことのなかった僕らあまちゃんスペシャルビッグバンドも、やっと生のステージでみなさんとご一緒することができました。 これで、本当に「あまちゃん」にピリオドを打てました。


ドラマがシャドーの話なのに、現実の録音ではベイビーレイズや水瀬いのりさんにシャドーをやってもらったこと、ずっと心にひっかかってました。それだけに紅白一緒に出れて嬉しかったです。(小野寺ちゃんやベロニカ、ベイビーレイズの渡邊璃生さんが年齢の関係で出れなかったのは残念ですが) なんの音程修正もされていない彼女達の生の声が重なりあって 「暦の上ではディセンバー、でもハートはサバイバー~~」 と力強く歌が始まった瞬間に、これでいい、これがいいんだよな~って思いながら演奏してました。 歌の上手い子も、そうでもない子も、そんなの関係なく、みんなで勢いに乗って歌うことの、すがすがしさ。 8月のあまちゃんの打ち上げでGMTのしおりちゃんと話したときに 「紅白なんてないない、だいたいあんたら下手だし・・・」 なんてことを冗談半分に言ったのですが、いやいやありましたねえ。無神経なこと言ってごめんなさい。 本音は、GMTのあのなんだか普通のポップスでは絶対にありえない歌が、「あまちゃん」というドラマの中で、本当に素敵な役目を果たしてくれたなって思ってます。 GMTのみなさん、そしてベイビーレイズのみなさん、足立梨花さん、水瀬いのりさん、本当にありがとう。いやいや、素晴らしかったです。


潮騒のメモリーズと一緒にやるなんて、僕らにとっても、きっとこれが最初で最後なんだと思います。水口がドラマの中で言ってたように、僕自身も、あのお座敷列車のシーンが、また見たかったんだと思います。そして紅白でそんな場面に生で参加できたことが最高でした。その上、天野春子さんとも一緒にライブが出来るなんて。一音一音噛み締めるように、最初で最後の演奏、楽しませてもらいました。


「潮騒のメモリー」をはじめ「地元に帰ろう」や「暦の上ではディセンバー」の作曲はわたしひとりではなく、とりわけメロディに関しては多くの部分はSachiko Mの手によるもの、彼女の功績です。彼女が宮藤さんや小泉今日子さん、江藤直子さん等とともに完成させたのが「潮騒のメモリー」です。あ、もちろん私も。で、その彼女が今回はビッグバンド席でコーラスやパーカッションもやりながら、彼女の本業でもある独特の高域のサインウェイヴの演奏を控えめに、でもしっかりと仕込んで演奏していたこと、気づいた方は少ないかもしれませんが、バンマスであるオレは聞き逃してませんよ~。あんな前衛的なもんがお茶の間の皆と歌える歌謡曲の中でしっかりととけ込みながら流れているなんて、彼女がメロディーメイカーであること以上に個人的には大事件でした。


そして今回鈴鹿ひろ美歌う「潮騒のメモリー」の素晴らしいアレンジ(編曲)をしたのは江藤直子です。あまちゃんの劇伴のストリングスアレンジも全て彼女の手によるもの。彼女あっての「あまちゃん」の音楽でした。「あまちゃん」としては最後の仕事になる鈴鹿版「潮騒のメモリー」でも素晴らしいアレンジをしてくれました。演奏は江藤さん自身のピアノに金原千恵子ストリングス、そして堀米綾さんのハープ。さまざまな想いがこみ上げてきたんだと思います。鈴鹿さん、すばらしい歌唱でした。


ちょうど1年前、まさに紅白をやっている時間に作曲をしていた「潮騒のメモリー」が、こうして本当に紅白の舞台で歌われることになるとは、1年前には想像もしていませんでした。っていうか、とにかくドラマにあった曲をつくらなくては・・・ということで、そんな余裕もないなか正月返上で作業をしていた・・・というのが正直なところです。その「潮騒のメモリー」がレコード大賞の作曲賞を受賞して、紅白に出ることになるなんて。そして何より、この歌をはじめとした「あまちゃん」の歌や楽曲たちが、世代を超えてみんなに愛されていることが、なによりも嬉しいです。そのくらい「あまちゃん」はみんなに愛されたし、みんなが育ててくれたんだと思います。


あまちゃんスペシャルビッグバンドはこれで解散しますが、このメンバーで、次の新たなプロジェクトに向おうと思っています。 あまちゃんの名はバンド名から消えますが、でも、こうして「あまちゃん」が残してくれたものが、新しい形になっていけばいいなって思ってます。 (略)
出典:大友良英のJAMJAM日記

「大友良英のJAMJAM日記」というブログのバックナンバーには、『あまちゃん』を制作していた頃の舞台裏も書かれている。

それにしても、大友さんの今日の文章を読んで「そうか!」と気がついたが、『紅白』のステージは、ずっと「シャドー」だった天野春子にとっても、「ハレの舞台」に出るという「夢」を実現させる瞬間でもあったのだ。

『あまちゃん』の物語は、音楽の世界の「シャドー」たちの物語でもあったことに気づかされる。

彼らが『紅白』という「ハレの舞台」に出るということで、こちらの物語も完結し、「ピリオドを打つ」ことになった。

そんな「夢」が実現していく感動の物語でもあったのだ。

出演していた橋本愛さんの文章に、音楽を担当していた大友良英さんの文章。

それぞれの『あまちゃん』がようやく終わった。

それにしても、『あまちゃん』というドラマは、本当にいろいろな人たちの「思い」を乗せていたものだ、とつくづく思う。

(この記事は、1月2日のYahoo!ニュース個人「『紅白歌合戦』の『あまちゃん』再現劇 音楽担当の大友良英が明かす舞台裏」と感動から転載しました)