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選手にとっては天国、ファンにとっては地獄?メジャーリーグのお金の話

2013年12月11日 18時20分 JST | 更新 2014年02月09日 19時12分 JST

ニューヨーク・ヤンキースの中心選手としてオールスターゲームにも5度選出されているロビンソン・カノ二塁手。ヤンキースとの契約が今シーズンで終了するため、その動向に注目が集まっていましたが、アメリカの複数のメディアは12月6日、カノ選手が10年総額約240億円でシアトル・マリナーズに移籍することで合意したと伝えました。

ドミニカ共和国出身のカノ選手は2001年にヤンキースと契約。2005年にメジャーに昇格すると、そこからはスター街道を駆け上がり、今シーズン終了時までに1649安打、204本塁打、通算打率3割9厘という素晴らしい記録を残しています。この時期にメジャーリーグの大物選手が高額契約を勝ち取って、他球団に移籍することは決して珍しい話ではありませんが、今回の移籍劇はいくつかの点で野球ファンを驚かせました。

現在31歳のカノ選手が守備と打撃の両方で高いパフォーマンスを41歳になるまで維持できるのかには疑問の声も上がっており、ヤンキースよりも選手層が薄いマリナーズでは、長期的に考えてニューヨーク時代ほどの活躍は無理だとの指摘も。カノ選手の移籍を取りまとめたのは、有名ラッパーのジェイZが立ち上げたスポーツマネージメント会社で、ジェイZ本人が代理人資格を取得したことも話題になりました。

昔からメジャーリーガーはこれだけの大金を手にしていたのでしょうか?

ボストン・レッドソックスのレジェンドともいえる存在で、「最後の4割打者」としても知られ、19年間のキャリアで521本のホームランを放ったテッド・ウイリアムズの例を見てみましょう。1950年の時点でウイリアムズの年俸は12万5000ドルに達しており、当時のメジャーリーグでは他に例を見ない最高給でした。

ライバル球団のヤンキースで活躍したジョー・ディマジオの1950年の年俸ですら10万ドルの時代。同時期にボストン・ブレーブス(現アトランタ・ブレーブス)で活躍したピッチャーのウォーレン・スパーンは1951年に22勝をあげ、3年連続で20勝以上をマークしたにもかかわらず、1952年の年俸は2万5000ドルでした。ウイリアムズの12万5000ドルがいかに特別な額であったかが想像できます。

1950年のアメリカで12万5000ドルはどれくらいの価値があったのでしょう?住宅販売価格の平均が8450ドルで、新車販売価格の平均は1500ドルでした。この年の労働者の平均年収が3200ドルですので、年俸12万5000ドルのウイリアムズは一般人の約39倍となるサラリーを手にしていたことになります。

2013年シーズン、MLBで最も高いサラリーを得ていたのはヤンキースのアレックス・ロドリゲス選手で、年俸額は実に2900万ドルでした。米社会保障庁によると、2012年のアメリカ人労働者の平均年収は約4万4300ドル。数字だけでいえば、ロドリゲス選手は一般人の約654倍のサラリーを得たことになります。アメリカでは有名企業のCEOの年収と一般社員の年収の格差が問題視されていますが、有名アスリートにもこの問題は当てはまりますね。

選手の年俸が上昇するのに比例して、ファンの財布から出ていく観戦費用も天井知らずの状態です。スポーツのマーケティングを専門とするTMR社はファン・コスト・インデックスという独自の調査方法を用いて、4人家族で野球観戦した場合にかかる費用を導き出しています。メジャーリーグで最も観戦費用が高いとされるボストン・レッドソックスを例に出すと、2007年に約280ドルだった家族4人での平均観戦費用は、2013年には約336ドルにまで上昇しています。アメリカにおける野球が「気楽に楽しめる娯楽」という時代はすでに終焉を迎えたのかもしれません。

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