「輪」と「セルフィー」

英オックスフォード辞典は先月中旬、2013年を代表する言葉として、デジカメやスマホを使って「自分撮り」を行うセルフィー(SELFIE)という言葉を選んでいます。厳密に言えば、こちらは流行語大賞に近いですが、選ばれた言葉から英語圏の国々の世相を垣間見ることができる点では「今年の漢字」に近いものがあります。

2013年も残すところ3週間弱。ブログやSNSでも今年を振り返る投稿が増えてきましたね。日本漢字能力鑑定協会は12日、その年の世相を一文字で表す「今年の漢字」に「輪」を選んだと発表しました。

同様のイベントは日本以外でも行われていて、英オックスフォード辞典は先月中旬、2013年を代表する言葉として、デジカメやスマホを使って「自分撮り」を行うセルフィー(SELFIE)という言葉を選んでいます。厳密に言えば、こちらは流行語大賞に近いですが、選ばれた言葉から英語圏の国々の世相を垣間見ることができる点では「今年の漢字」に近いものがあります。

英オックスフォード辞典の公式ブログによると、セルフィーという言葉自体は2002年頃からオーストラリアのネットユーザーの間で使われ始めたものの、今年に入ってからソーシャルメディアを経由して英語圏で瞬く間に普及。同辞典が独自に行った調査では、英語圏における「セルフィー」の使用頻度は昨年11月から実に1万7000パーセント増という結果でした。

世相を表す言葉として、絆や繋がりを連想させる「輪」が日本で選ばれ、個人をイメージさせる「セルフィー」がイギリスでは選ばれた。同じ年に別々の国で選ばれた言葉が、これほど対極的なコントラストを描くというのも興味深いですね。

全国から公募で集められた漢字の中から最も応募数の多かった漢字一字に与えられる「今年の漢字」とは異なり、英オックスフォード辞典が発表する今年の言葉は辞書編集者によって選ばれます。英語が起源ではない外来語が選ばれることもあり、2005年にはなんと数独が「SUDOKU」として選ばれているんです。

今年の言葉に選出されたのはセルフィーでしたが、それ以外にも幾つかの言葉が今年を象徴する言葉として候補に挙げられていました。仮想通貨として日本でも話題になったビットコイン(BITCOIN)や家畜の幹細胞を培養して人工的に作り出す合成肉のシュミート(SCHMEAT)、ストリッパーのようにお尻をクネクネと振りながらおこなうダンスを意味するトゥワーク(TWERK)といった言葉が候補リストに入っていました。トゥワークという言葉は20年以上前から存在したそうですが、今年8月に行われたMTVのイベントで人気歌手のマイリー・サイラスがデュエット曲を歌う男性歌手にトゥワークを突然披露。一夜にしてこの言葉は全国区となりました。

セルフィーに話を戻しましょう。セルフィーの普及によって、セルフィー絡みのトラブルも珍しくなくなってきているようです。

米紙ニューヨークポストは今月4日、ニューヨークのブルックリン橋から飛び降り自殺しようとする男性を背景に自分撮りを行う女性の写真を紙面のトップに掲載。自殺を止めようとする警察官とのやり取りを取材するために現場に出てきたニューヨークポストのカメラマンが、近くでセルフィーに夢中になる女性の姿を撮影したそうです。紙面につけられたタイトルはセルフィーをもじってセルフィーッシュ(自己チュー!)。自己チューというよりは社会常識の問題ではないかと思うのですが、橋の上の男性が警察の説得に応じて自殺をやめたのが唯一の救いです。

先日南アフリカで行われたネルソン・マンデラ氏の追悼式典でも、セルフィーに関するエピソードがありました。追悼式典の合間にアメリカのオバマ大統領とイギリスのキャメロン首相が、デンマークのシュミット首相を挟む形でセルフィーを楽しむ姿がメディアによって紹介され、「時と場合を考えるべきではないか」という批判が出ています。デンマークの女性首相とのセルフィーをにやけ顔で楽しんだオバマ大統領。その横に座るミッシェル夫人の仏頂面も気になりますね。

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