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今改めてJAL再上場を検証。100%減資を行い企業再生支援機構の象徴的なディールへ

2014年11月23日 01時53分 JST | 更新 2015年01月22日 19時12分 JST

ロイターによれば、業績不振のスカイマークと日本航空は21日、業務提携の交渉に入ったことを明らかにしました。羽田空港からの国内発着便での共同運航を中心とした業務提携を検討しているそうです。羽田発着便の共同運航には国土交通省の認可が必要で、スカイマークは今月中にも共同運航計画を国交省に申請する予定とか。ただし、公的資金の注入と会社更生法の適用で再生したJALの経営は2016年度まで国交省の監視下にあり、新規投資やM&Aなどが制限されています。今回の業務提携について、国交省がどう判断するかが注目されるそうです。

さて、そこでJALが再上場したのは2年前の2012年9月ですが、改めてJALの再生プロセス、当時のバリュエーションを検証してみたいと思います。

 

【会社更生法申請までの経緯】

JAL破綻の直接の引き金は2008年のリーマン・ショックでした。但し脆弱な企業体質が長年にわたって形成されてきたことがより大きな原因となります。

日本では、羽田空港が非常に混雑しており、大量輸送によって需要に対応していかなければならない状況でしたが、一方で多くの地方空港が建設されていく中で、需要の大きさも多様化し、大型機では非効率であるケースが続出しました。

また、関連事業の採算性の見通しの甘さから、本業の足を引っ張ることもあり、長期にわたる為替差損も、JALの放漫経営の象徴と言われていました。

国土交通省は2009年8月、有識者委員会を設置し、当時の民主党前原大臣が私的にJAL再建業務を要請した再生タスクフォースによって、JALの内部調査が徹底的に進められましたが、政府と金融機関が出資する企業再生支援機構の設立によって、その業務は支援機構に引き継がれることになりました。

そして、日々のキャッシュポジションさえ心配される中、2010年1月19日、親会社である日本航空および、株式会社日本航空の子会社であるジャルキャピタルと共に会社更生法の適用申請を行うこととなります。

 

【再生プロセス】

ここでは、過去の損益ベースの記載は省略し、会社更生法申請時・認可時・終了時のバランスシートでそのプロセスを見ていきたいと思います。

 

※2010年1月19日の会社更生法申請日に決算(60期)、および会社更生法終結の2010年11月30日にも決算(61期)を行っており、その間金商法上の連結開示を行っていないため、連結比較は困難であり、また62期も4か月決算と変則であるため、比較困難となっています。よって、12か月決算ベースの単体業績の業績比較を行いますが、当然連結業績とは乖離はあるも、利益・資産ベースでは一定の比較可能と判断しております。

 

・単体 貸借対照表推移(会社更生法申請まで)

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出所 : 有価証券報告書・届出書より弊社作成

上記の図は会社更生法申請までのバランスシートのハイライトです。

・当初より、繰越欠損金があり、58期、59期と資金繰りも不安定な時期が続く。

・結果的に2010年1月19日に企業再生支援機構が管財人・スポンサーとなることを前提に会社更生法申請。

・航空機の評価損3,659億円、退職給付金引当不足3,554億円を負債計上。更に債権放棄を前提とした負債を更生債権等として2兆1,508億円を計上し、1兆7,134億円の債務超過となる。

 

・単体 貸借対照表推移 (会社更生法認可・終了まで)

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出所 : 有価証券報告書・届出書より弊社作成

・60期、61期は会社更生法に係る規則のもとで決算を策定(決算期間含む)

会社更生法が認可(いわゆる再生スキームが認可)された翌日の2011年12月1日に100%減資を実施(後述)

・62期に会社更生法が終了し、通常の民間会社となり、様々な制約から開放されたため、改めて再上場を計画。

・企業再生支援機構が3,500億円を出資している間も、完全に繰越欠損金は解消せず。

・2012年6月、配当原資を確保する目的に資本剰余金約65億円を取崩し、繰越欠損金を解消。

 

【減資の仕組み】

JALは会社更生法終了時に、100%減資を行うと同時に企業再生支援機構が3,500億円の出資を行うわけですが、今回は減資の仕組みについても、一般論も含めて話してみたいと思います。

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減資は正式には「資本金の減少」といい、赤字が累積した場合に、欠損を解消する目的で行われることが多いです。

無償減資は株主に財産の払い戻しを行わず、計算上資本金額を減少され、純資産が資本金額に満たない資本欠損の場合に資本金を純資産額以下にする場合に行われます。この場合、帳簿上資本金額が変更されるだけであり、会社財産は減少せず、一株の資産も変わりません。

ただし、通常は減資と同時に、新たに増資を行い資本増強する場合などが多く、新たな株主が増資した場合には既存株主の権利は希薄化します。

 

・100%減資は全く趣旨が違う

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上の図は100%減資の図です。

減資でも100%減資は他の減資とは全く意味が違うものであり、既存株主の株式数をゼロにすることです。

100%減資を行う場合は債務超過であるため、会社を一旦、整理(倒産・会社更生法など)を行う場合が多く、今回のJALもこれに当たります。

会社に再生の見込みがある場合は、会社のリストラによる債務の圧縮、債権者の債務免除、そして株主責任を負うことで3者が痛みを分かち合い、再生を進めることになります。

そして既存株主を追放した後に新たにスポンサーより資本金を入れ、全く新しい株主構成となります。

 

JALの場合

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出所 : 有価証券報告書・届出書より弊社作成

上の図がJALの100%減資の図です。会社更生法終了の翌日に行われ、100%減資を行ったあと、1株2000円で企業再生支援機構が3,500億円出資し、JALは企業再生支援機構の100%

子会社となりました。

 

【再生計画】

以下が、当時発表された再生計画になります。

1.債権総額 1兆1579億円のうち、無担保8795億円に対し83%の債権放棄を求める。うち、金融機関32社3585億円、年金基金2119億円。これにより有利子負債を7800億円から4100億円まで引き下げる。結果として5215億円債権放棄。

2.繰越欠損金1兆円 9年控除

3.国内線131→119 国際線93→79

4.275機(2007)→215機(2011) 747機は37機を全廃

5.1万5700人削減、さらに4800人上乗せし、47,170人(2009/3)→31,190人(2012/3)

6.給与水準切り下げ・年金カット 現役50% 、OB30%

7.整理解雇、パイロット90人、CA70人、休職者40人 (計200人は奇跡的に少ない)

8.子会社110社から57社 JALカード売却他、24社売却、29社統廃合。

9.需要規模に応じた路線便数、機材計画の適正化

10.機材改修、情報通信システムに1260億円投資

 

・航空機削減

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出所 : 有価証券報告書・届出書より弊社作成

上の図とグラフは当時の航空機削減数です。燃費の悪いB747機の51機は全て削減、そしてエアバスA300を23機、ダグラスMD81を14機削減し、替わりにB737-800を23機、エンブラエル170を8機導入し、全体では279機から215機となり、64機の削減となりました。

 

・人件費削減

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出所 : 有価証券報告書・届出書より弊社作成

 

全体で47,170人→31,190人の約3分の1である16,000人を削減しました。特にパイロットは半減、地上社員も45%減、平均25%程度の人件費削減。これ以外にも年金50%カット等あります。

 

【再上場 バリュエーション】

 

このような再建計画を行った結果、JALは2012年8月にローンチとなりました。公開価格3,790円に対し、初値は3,810円と騰落率0.52%となり、先ずは無難な離陸となりました。

当時のバリュエーションを見てみます。

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出所 : SPEEDAよりデータ抽出 弊社作成

当時のファイナンスは株式時価総額6,870億円、予想PER5.3倍、オファリングレシオは96.5%とほぼ全株を売り切るディールでした。企業再生支援機構は3,500億円出資し、ほぼ2倍で回収出来たため、先ずは案件としては成功だったといって良いでしょう。

但し、当時のANAの予想PERが15.5倍であるにも関わらず、その3分の1の5.3倍のバリュエーションでした。

 

この背景にあるのは何か?

 

一つには先ずANAの時価総額ありきから始まったプライシングだったと思われます。

今回JALは多額の繰越欠損金が計上されており、当時では法人税で約4,000億円程度の節税効果があると言われていました。当然当期純利益は大きく計上されるわけで、それをベースにするとANAの株式時価総額に大きく乖離が出てしまい、それを避けるためにANAの時価総額に寄せた結果のPERだったと思われます。

 

そして、現在もJALの予想PERは8.9倍、ANAは27.6倍とほぼ3倍の乖離があるのは変わりません。そしてこのPERの差が埋まるのは、JALの繰越欠損金が解消し、税金メリットがなくなる時期なのでしょうね。

 

いずれにしろ、スカイマークの件は気になるところではあります。

(2014年11月22日「Hiroの「グローバルで負けないリスクテイク出来る日本へ」」より転載)