中国の核心的利益―ニュースの定点観測(2)

日本にとって最悪のシナリオは、戦前のような国際的孤立状態の再現である。その罠に自ら飛び込むような馬鹿なことをしてはならない。

4月終わり頃、何気なく見ていた国際ニュース。よく登場する中国外務省の女性報道官ははじめ、下を向いて尖閣諸島に関する記者の質問を聞いていたが、質問が終わるやいなやキッと目線を上げて、「中国の核心的利益」だと言い放った。

中国のメッセージは正しく受け止めなければならない。中国は将来いずれかの日に尖閣諸島を中国領土に取り込む意図であることを、世界に向けて公言した。これは感情の行き違いや面子の問題や言葉の綾ではなく、この地域をめぐる従来の法的状態を変更する意図を明確にし、それに向けて必要な実力行使を予告したものだ。この瞬間、国際社会に対し、実力による現状変更の動きが顕在化することを認識させたというべきである。

尖閣諸島の一部は1950年代に米軍の射爆撃演習地として活用されており、米軍のプレゼンスの大きい時期には抗議の形跡すらない。また今回問題となった土地以外にも国有地は多く存在しており、小さな日本側の動きを口実にして、現状変更に大きく動き出したことは疑いようがない。

中国の「核心的利益」にとって、最も警戒すべきプレイヤーはアメリカである。台湾問題に関しては「一つの中国」をアメリカに認めさせることによって、表面上小康を得ている。

しかし、蒋介石国民党が台湾から大陸復興を叫んでいた頃と違い、中国本土を国民党が支配するという姿は、もはやありえなくなっている。共産党軍と国民党軍の戦いの結果が今日の姿だが、台湾ではすでに選挙による民主的な政権交代を実現し、国民党軍は国軍になった。その時点でアメリカは、「一つの中国」のドグマを再検討するべきだった。この両者の武力衝突は内戦ではなく国際紛争である。中国の核心的利益に絡む当事者のひとりとなった日本は、アメリカとともに、利害を共通にするASEAN諸国と一緒になって、本気で外交戦略を考えなければならなくなった。

長い歴史の中で、国の栄枯盛衰につれ、領土紛争は絶えたことがない。目前のトラブルを回避したいというような近視眼的対処では、解決にならないのだ。

日本にとって最悪のシナリオは、戦前のような国際的孤立状態の再現である。その罠に自ら飛び込むような馬鹿なことをしてはならない。

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