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特別養子縁組あっせん法案成立!赤ちゃんの虐待死ゼロに向けて重要すぎる一歩

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今日は日本の社会的養護(虐待等で家庭で過ごせない子どもたちの養護)においては、歴史的な日となりました。

特別養子縁組あっせん法案(正式名称:民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律案)が成立したのです。

【特別養子縁組とは】


日本では2週間に1人、赤ちゃんが遺棄等で虐待死しています。その原因は望まない妊娠。それに社会的孤立や貧困、親の精神疾患等が重なることです。

そうした実親に妊娠期から相談に乗り、出産後は育ての親希望者とマッチングをし、赤ちゃんを託すのが、特別養子縁組です。

「家を継がせる」ことを目的とした普通養子縁組と異なり、特別養子縁組は6歳未満の子どもの福祉を目的として1988年につくられた制度です。

【阻まれていた特別養子縁組の広がり】


赤ちゃんの命を救う特別養子縁組制度は平成25年度において474件ほど実現していますが、まだまだ助けを必要としている数には到底達していません。

日本では、毎年虐待等で「乳児院」という施設に入る子どもたちが3000人もいますし、またアメリカの公的制度下における養子縁組が5万件ということからも分かるよう、もっとたくさんの特別養子縁組が必要とされています。

しかし、政府はこれまで、赤ちゃんの命を守るセーフティネットというべき特別養子縁組を広げていこう、という政策をとってはいませんでした。

その穴を埋めていたのが、民間の特別養子縁組団体(行政用語では特別養子縁組あっせん団体)で、特別養子縁組のうち4割近くを、20程度の団体で支えています。

しかし、民間縁組団体は財務基盤も脆弱で、個人の志とボランティア精神に支えられているものがほとんどです。政府からの補助は1円もなく、それでいて赤ちゃんの命を救う、という最も難しい児童福祉を担っていたのです。

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【湧き上がる悪質事業者】


こうして政府によるネグレクトを受け続けていた特別養子縁組業界ですが、さらにそこにトラブルが起きました。悪質事業者の出現です。

大阪の「インターネット赤ちゃんポスト」はネット掲示板で親の年収等のスペックだけを記載し、面談等、子どもの福祉を考える上では欠くことのできないプロセスを省略し、マッチングを行なっていました。

また、実の親に「赤ちゃんをくれたら200万円をあげます」というような告知を行っており、厚労省通知にも反した人身売買の疑いがかけられ、7回の行政指導を受けました。

しかし、こうした人身売買に近い悪質な事業者も、現行法体系では取り締まれません。特別養子縁組事業者は、単なる申請によって業を営むことができる、「申請制」となっていて、罰則規定もないからです。

法のバグも放置され続けてきたのです。

【超党派議員立法の動き】


こうした絶望的な状況を変えようと、自民党の野田聖子議員・木村弥生議員、公明党の遠山議員、山本かなえ議員、民進党の細野豪志議員、山井和則議員、田嶋要議員、初鹿明博議員、林久美子元議員等、たくさんの議員の方々が党を超えて立ち上がりました。

そして様々な議論と調整を経て、今回の特別養子縁組あっせん法案が生み出されました。

鈴木英敬知事や吉田雄人横須賀市長、高島宗一郎福岡市長、NPO法人Living in Peace 慎泰俊代表やヒューマンライツウォッチの土井香苗代表など、心ある方々は社会的養護に関する官民協議会を組成し、議論を盛り上げ支えました。

またフローレンスも他の民間特別養子縁組団体と共に、「日本こども縁組協会」を立ち上げ、あっせん法案実現を後押ししていきました。

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【補助と許可制】


特別養子縁組あっせん法案の特徴は、二つあります。

①補助
これまで一円もなかった政府からの補助が出されたり、研修の支援が行われるようになります。

参照:(民間あっせん機関に対する支援)
第二十二条:国又は地方公共団体は、民間あっせん機関を支援するために必要な財政上の措置、養子縁組のあっせんに係る業務に従事する者に対する研修その他の措置を講ずることができる。

②許可制
これまでの「申請制」から、都道府県から許可を受けなければ業を営めない「許可制」となります。

参照:第二章 民間あっせん機関の許可等(第六条から第二十二条)

都道府県は業務停止命令を行うことができ、許可なしに特別養子縁組あっせんを行った場合においては、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金が課せられます。

【今後の課題】


この法律成立によって、これまでの放置されてきた荒野の状態から、道ができていくのは間違いがありません。

しかし、法律というのはあくまで骨子で、細かい部分は政省令等で定められます。よって、本当にしっかりと補助が出て、プロの社会福祉士が安定的なカウンセリングを実親に提供できるレベルになるのか等、まだ不透明なところがあります。

さらに、許可制によって本当にインターネット赤ちゃんポストのようなところをキックアウトできるのか、抜け道はないのか、など予断を許さない状況です。

この法律が成立して終わり、ではなく、荒野にきちんとした建築物をつくっていけるよう、国民の皆さんには関心を持ち続け、頑張っている国会議員の方々には声援を送り続けてもらえると嬉しいです。

そしてフローレンスはこれからも特別養子縁組事業( http://engumi.florence.or.jp/ )を行いながら、日本こども縁組協会の一員として政策提言を続けていきたいと思います。

これから生まれようとしている、そして生まれたばかりで亡くなろうとしている、赤ちゃんたちの命を救うことにしっかりと繋がっていくように。

(2016年12月9日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)