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株式会社の認可保育所参入について

2013年05月08日 22時21分 JST | 更新 2013年07月08日 18時12分 JST

某テレビ番組から保育所への株式会社参入へのコメント依頼取材を頂きましたが、所用があり対応できませんでしたので、ここでコメント致します。まず株式会社(やNPO)に参入規制を行う合理的理由はなかったので、方向性としては良いと思います。

とはいえ、幾つかセットで検討しなくてはいけないテーマがあります。それは(1)配当規制(2)撤退スキーム(3)情報開示義務 です。

【配当規制】

まず配当規制から。某保育企業は4〜5%の配当を行っています。原資は運営補助(税金)です。資金調達コストと言いますが、銀行利子よりは随分と高い。これは良いのか否か。

特に上場企業においては配当圧力が課されますが、税によって投資家を潤すことは正しいのか、また労働分配率を本来なら高められる部分が、配当される可能性があるのではないか、という議論があります。これに対しては、配当規制という手法が考えられます。

イギリスの社会的企業の法人格であるCIC(Community Interest Company)では、指定管理や補助金事業を受けることから、配当はイングランド銀行の利子率に上限設定されています。こうした「参入自由、ただし配当規制」という考えは参考にできます

【撤退スキーム】

次に、株式会社をはじめとした事業者が、定員割れ等によって撤退した際に、これまで通園していた園児を救済するスキームが一切ないことが、大きな問題です。これは株式会社だから、ではなく社会福祉法人でも全く同じ。潰れる時は潰れ、撤退せざるを得ない時は撤退します。

これまでは供給過少であったため、よほどのことがない限り定員割れにはなりませんでしたが、待機児童ゼロが近づくにつれ、定員割れが顕在化します。現に横浜市は待機児童ゼロと同時に、定員割れが相当規模で出ていて、撤退を検討する事業者も出始めています。

法人格に関係なく、子ども一人あたりの成果補助で運営する以上、定員割れ=撤退です。さて、撤退自体はニーズのないところなので、全体で見ると最適化ですが、通っていた園児や園児の家庭にしてみたら、迷惑な話ですし、急に預けられなくなると雇用にも影響しかねません。

そういうわけで、A園が撤退した際に、突然撤退するのではなく、移行期間を設けることの義務づけが必要です。また、A園の周りのB〜D園で在園児を吸収し、その間は定員数を超えることを法的に許容する仕組みがないといけません。これが撤退スキームの構築です。

【情報開示義務】

MKグループが破綻し、突然の閉園があった要因は、保育事業でのキャッシュを、他事業に突っ込んでいたことでした。こうしたことを早めに検知できるよう、財務諸表のネット上での公開を事業者に義務づける必要があります。同時に社会福祉法人の財務諸表の開示義務がないのも問題です。

社会福祉法人は利益規制がかかっていますが、それは積立金で回避できるし、別会社をつくってそこに発注することで利益を移し替えることができます。また、家族を役員にし役員報酬額を高めている事例もありますので、財務情報開示は、労働分配率向上へのプレッシャーになります。

財務情報だけでなく、死亡事故情報も公開義務を課すべきです。現在は、子どもが亡くなった園でも、そのまま運営している事例があります。また、事故の調査・公表義務がないことから、事故情報を業界で共有できず、同じ過ちを繰り返すことにも繋がっています

「死亡事故を起こした」という事実を園のWEBで公表せねばならないとすることで、サンクションを課す。そして調査・公表義務を課し、オープンアクセスの保育事故DBに情報が共有されることで、ケース研修を全国の園で行え、再発防止に備えられる体制ができます。

以上、株式会社の保育園参入についてでした。メディアの方々には決して「株式会社は金儲け主義だからダメだ」的な表層議論に留まることなく、具体的なより良い制度設計の議論にまで踏み込んで下さることを期待しています。

駒崎弘樹氏のブログでこの記事を読む