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赤ちゃん縁組について知っておいてほしいこと

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今朝こんなニュースが出ていました。

赤ちゃんとネットで特別養子縁組 「命を商品化」批判も:朝日新聞デジタル

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インターネット上でのかんたんな手続きで、赤ちゃんとの特別養子縁組を仲介するNPO法人がある。大阪市浪速区の「全国おやこ福祉支援センター」。効率化で「人工中絶や虐待から救える命がある」と訴えるが、「命を商品化している」と批判の声も上がる。
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赤ちゃん縁組(特別養子縁組)については良く知らない方も多いと思うので、知っておいてほしい基礎的な知識と経緯についてだけ簡単にまとめました。

報道ではネガティブな側面に光が当たりがちですが、そうした側面についてはしっかりと法制度を整えることで改善する動きが進んでいます。そして、赤ちゃん縁組それ自体については、とてもポジティブで大きな可能性があるということを多くの方に知っていただけたらと思います。

以下3点にまとめています。ここだけでも読んでいただけたら嬉しいです。

1.赤ちゃん縁組のメリット

理想的な状態で実施される赤ちゃん縁組(特別養子縁組)は、赤ちゃん(子ども)、生みの親、養親の3者それぞれにとって大きなメリットをもたらす。

2.赤ちゃん縁組を取り巻く現状の問題点

赤ちゃん縁組は行政(児童相談所)と民間のあっせん事業者によって行なわれているが、後者については許可制ではなく、申請制になっている。そのため、業者の質にばらつきがあり、その点が問題視されている。ただし、現状でも良質な支援をしている民間事業者は一定数存在する。

3.赤ちゃん縁組のこれから

12/9に成立した特別養子縁組あっせん法案は、こうした現状を改善するために、民間のあっせん事業者を許可制に変更し、国として民間事業者の質をしっかり担保していく方向に動き始めている。

それぞれについて一つずつ短く書いていきます。

1. 赤ちゃん縁組のメリット


理想的な状態で実施される赤ちゃん縁組(特別養子縁組)は、赤ちゃん(子ども)、生みの親、養親の3者のそれぞれにとって大きなメリットをもたらす。

特別養子縁組という制度は0歳から6歳未満の子どもについて、生みの親との親子関係を終了させ、育ての親との親子関係を開始するための制度です。これによって、主に望まない妊娠の結果産まれた子どもが、早い時期から家庭的な環境で育つことが可能になります。何はともあれ産まれてくる赤ちゃん、子どもの幸せのためにとても重要な仕組みなのです(虐待死の多くは0歳児に集中していることがよく知られています)。

そして、望まない妊娠をしてしまった生みの親、子どもがほしいけれど自分で出産することが難しい育ての親にとっても、特別養子縁組は大きなメリットがある制度です。しかし、あくまで丁寧な情報提供とカウンセリングが行われるという前提が守られていることが大切です。簡単に、スピーディーにマッチングをして済む話ではないというのは当然のことです。

2. 赤ちゃん縁組を取り巻く現状の問題点


赤ちゃん縁組は行政(児童相談所)と民間のあっせん事業者によって行なわれているが、後者については許可制ではなく、申請制になっている。そのため、業者の質にばらつきがあり、それが問題視されている。ただし、現状でも良質な支援をしている民間事業者は一定数存在する。

今朝の記事が取り上げていた大阪の団体については、これまでも繰り返し行政指導が行われ、メディアからも批判的に取り上げられてきた経緯があります。

また、今年の9月には、子どもが紹介される優先順位を上げるための費用と称して、東京都の夫婦から現金100万円を受け取っていた事業者が事業停止命令を受けるというケースも発生しました。養子あっせん団体に事業停止命令 優先紹介へ現金要求:朝日新聞デジタル

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特別養子縁組をあっせんする民間団体が、優先して子どもを紹介する費用として東京都の夫婦から現金100万円をもらっていたことが分かった。事業の届け出を受けている千葉県は27日、社会福祉法で定める「不当な行為」にあたるとして団体に事業停止命令を出した。厚生労働省によると、養子あっせんの停止命令は全国初とみられる。
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付言すると、縁組にかかる様々な費用それ自体を請求することには問題がありません。この事業者のように、ほかの夫婦より優先的に子どもを紹介するための費用を請求することに問題があるということです。ここは区別して理解することが必要です。

さて、問われるべきはそもそもなぜこうした問題のある事業者があっせん事業に参入できてしまっているのかということですが、その背景には民間のあっせん事業者が申請制で許可制ではないという現状の法制度上の不備があります。事業者の活動を規制し、その質を担保するための法制度がしっかり整っていないからこそ、様々な事業者が参入できてしまうという問題が発生しているわけです。

もちろん、こうした状況でも、思いを持って丁寧な情報提供と時間をかけたサポートを行う良質な事業者は存在します。私も、そうした事業者の一つである、認定NPO法人フローレンスの赤ちゃん縁組事業を支援するなかで、特別養子縁組を取り巻く正しい情報や経緯について学ぶ機会を得ることができました。ぜひこうした知識が社会のなかで少しずつ広がっていってほしいと願っています。

3. 赤ちゃん縁組のこれから


12/9に成立した特別養子縁組あっせん法案は、こうした現状を改善するために、民間のあっせん事業者を許可制に変更し、国として民間事業者の質をしっかり担保していく方向に動き始めている。

問題の根本にある法制度上の不備が解消される方向に進んでいることは素晴らしいことです。成立した新法の内容については、こちらの日経新聞の記事がわかりやすくまとまっていたので紹介します。養子縁組あっせん業を許可制に 新法成立 :日本経済新聞

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「悪質業者の排除に向け、従来の届け出制から都道府県知事による許可制とした点が柱。無許可事業者には1年以下の懲役か100万円以下の罰金も設けた。2年以内に施行される。」
「新法は事業者の許可要件を(1)必要な財政基盤がある(2)営利目的ではない(3)実親・養親の個人情報を適切に管理できる――などと規定。社会福祉士の資格を持つ人などを責任者とするよう義務付けた。許可を得た事業者には国や自治体が財政支援できるようにした。」
「実親の出産費用などの実費は厚生労働省令で「手数料」と定め、養親らからの受け取りを認めるが、それ以外の報酬を得ることは禁止。養親希望者の選定、面会、養育に入る前の3段階にわたり実親側から同意を得るよう定め、家庭裁判所の審判を経た養子縁組の成立後も子供や養親、実親の支援をすることを努力義務とした」
「既に届け出をしている事業者も新たに行政の許可を得る必要があるが、施行から半年は経過措置期間とする。事業者は都道府県への事業報告書提出が求められ、行政は許可取り消しもできる。厚労省によると、昨年10月時点の届け出事業者は22だった。」
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この法改正によって、いま存在している問題点がしっかり解決され、より多くの赤ちゃん、子どもたちが家庭的な環境で育っていける社会につながっていくことを願います。

特別養子縁組という制度が持つ可能性をしっかりと花開かせていくためにも、私たち自身が知るべき情報を知り、良いものとそうでないものを見分ける力をつけていくことが大切です。私も引き続き自分が学んだことを様々な形で発信していければと思います。

これから特別養子縁組についてもっと学びたいという方には、最近出版されたこちらの本をおすすめします。実際に特別養子縁組の制度を活用した人たちのストーリーや、特別養子縁組の仕組みの詳細について紹介されていて、とても勉強になります。

産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ (健康ライブラリー)

(2016年12月27日「HIROKIM BLOG / 望月優大の日記」より転載)