東日本大震災から5年~いま都会のパパたちにできることとは~

何度か被災地を訪れるなかで感じたことと、自分が父親としてこれから取り組んでみたいことを書き記しておきたい。

今日で東日本大震災から5年を迎えた。その前年に筆者はひとり親になったこともあり、まず自分の子どものことや目の前の生活を考えることで精いっぱいであった。しかし、そんな中でも何度か被災地を訪れる機会があり、その中で感じたこと、そして、自分が父親としてこれから取り組んでみたいことを書き記しておきたい。

被災地の子どもとわが子が触れ合う中で

2011年の11月のこと。筆者は我が子3人とともに岩手県大槌町を訪ねたことがあった。吉里吉里小学校にタレントの千秋さんが来られるということで、多くの親子が体育館に集まっていた。

その間、我が子3人は自由気ままに校庭で遊ばせていたが、当然、知っている子どもはいない。しかし当時、小学校2年生の長男は、その小学校の子どもと自然に言葉を交わし、その後サッカーで一緒に遊んでいた。

吉里吉里小学校の子どもたちとサッカーで遊ぶ長男(当時小2・青いTシャツ)

何気ないシーンではあったが、被災地の子どもを助けるという意識は、子どもにはない。その子には同じ子どもというつながりでしかなかく、支援者・被支援者という関係性では表せないものがあった。

特に、大人が関わると、どうしても「支援」という言葉が先に立ってしまい、≪支援している大人≫⇒≪支援されている子ども≫という関係が色濃くなってしまうが、子ども同士が関わることで、対等な関係性が築きやすいのではないかと思った。

震災から5年が経過する中で、被災各地で復興が進んでいる。その姿を多くの被災地以外の子どもたちに見てほしいと思う。そして、見るだけではなく、その地域の子どもたちと何かしらの交流が生まれたらと強く思う。

例えば、修学旅行を被災地にするというのも一案であろう。それが定期的な交流へと発展し、被災地の子どもたちと、特に都会の子どもたちや、東日本大震災の影響をほとんど受けなかった地域の子どもたちとがつながりを持てるといい。

いずれ間違いなく南海トラフに大規模な地震や津波が発生すると言われる中で、こうしたつながりは非常に重要な意味を持つのではないかと思うし、東日本大震災を形骸化させないためにも必要ではないかと思う。もしすでにこうした動きがあるようであれば、是非、取材をしてみたい。

都会のパパが被災地に行くこと

昨年2月、内閣府子ども・子育て支援新制度の勉強会を開催するために、陸前高田市を訪問した。14年11月、15年1月と同市には打ち合わせに行っていたので、その都度、地元の竹駒保育所や「おやこの広場きらりんきっず」などで絵本を読ませてもらった。

2月の際は、岩手・一関市在住のクラウンパパ・松谷俊克さんら「イクメン絵本ライブチーム『On Sunday(s)』」のパパも駆けつけてくださった。子どもたちの屈託のない表情は、逆にこちらがパワーをもらうほど。自分の子どもの笑顔だけではなく、子どもたちの笑顔に出会えることは、父親としての意識を高めることにつながる。

竹駒保育園にて。絵本を見ているときの何とも言えない子どもたちの表情

すべての父親がそうした機会を作るのは難しいかもしれないが、1年に1度でもいいので、定期的に被災地に赴き、地元のパパや子どもたちと交流する場を作りたいと考えている。昨年2月以来、被災地には行けていないので、自戒を込めて。

まもなくNPO法人化する予定の「グリーンパパプロジェクト」(筆者が代表)のコンセプトは、都会のパパを農・林・旅などのグリーンな素材を使って、地方とつなげるというもの。

地方創生も叫ばれる中で、必ずしも移住ありきではない、地方活性化のあり方を提案していけたらと考えているが、被災地にも父子や家族で訪れることができる機会を作っていけたらと思っている。

以前、「かわいい父子には旅をさせろ!~父子旅行のススメ~」(2015年7月20日配信)という記事を書いた。

これは、パパと子どもが旅という空間でひと時を過ごすことは、日常忙しいパパにとって貴重な体験になるという趣旨のものであったが、被災地においても父子で時間を過ごすことで、地震や津波、復興、そして福島であれば原発など、様々な問題を考える機会にもなる。風化させないと軽々しく言ってしまうが、実際に現地に赴くことでその意思を強くすることができるはずだ。

とは言っても、いまのところ被災地の人口流出は留まるところを知らない。

パパが子どもたちを連れて行ったところで、この流れはなかなか止まりそうにない。しかし、そこにまちがあり、そこに人がいるということ。そして、海があり、山があり、様々な自然であふれているということ。そのことをまずは自分の目で確かめることから、復興を手助けできたらと思う。

安倍首相は3月10日の会見の中で「東北観光復興元年」を掲げた。2020年に東北への外国人観光客をいまの3倍に増やす方針とのことだが、外国人の観光客を増やすことも大事だが、日本人が行くことはもっと大事だと思う。

この大震災により亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、いまだ行方不明の方々が発見されることを切に願いたい。

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