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厚労省が「子どもの預かりサービス」で委員会を設置~秋にも取りまとめ~

2014年08月04日 23時02分 JST | 更新 2014年10月04日 18時12分 JST
BLOOM image via Getty Images

今年3月に起きたベビーシッターを名乗る男性の自宅から

男児が遺体で発見されるという事件をきっかけとして、

マッチングサイトなどの実態が浮き彫りとなったが、

このたび厚生労働省は「子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」を設置した。

本日8月4日に第1回の会合が開催され、僭越ながら筆者も同委員会の委員として、

特に利用者側の観点から、今後の制度設計のために尽力することとなった。

そこで、同委員会の論点から、現行の問題点や課題を整理してみたい。

その前に、まずはニュース記事をご覧いただこう。

・日本経済新聞「ベビーシッターの届け出制を検討 厚労省専門委」

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG04H04_U4A800C1CC0000/

今年3月に埼玉県でベビーシッターに預けられていた男児が死亡した事件を受け、再発防止策を検討する厚生労働省の専門委員会の初会合が4日、開かれた。

 事件を受け、厚労省がインターネット上のシッター仲介サイトを調べたところ、多くがシッターの氏名や住所を自己申告で済ませるなど身元確>認が不十分なケースが常態化していたことが判明。

 同専門委は、利用者が事前にシッターの身元を確認できるための規制強化や、預かる子供が5人以下でも自治体への届け出を義務付けるかどうかなどを検討し、秋をめどに結論をまとめる。

 厚労省によると、児童福祉法では5人以下の子供を預かる認可外保育施設やシッターの場合、自治体への届け出義務がないため、実態把握が難しいという課題がある。

・共同通信「ベビーシッター仲介サイトに指針 厚労省専門委が初会合」

http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014080401001605.html

ベビーシッターに預けられた男児の遺体が見つかった事件で、再発防止策を検討する厚生労働省の専門委員会の初会合が4日、開かれた。インターネット上の仲介サイトの多くがシッターの名前を自己申告としていたことが事件で問題化したのを受け、シッター登録時に身分証明書の提出を求め本人確認を厳格化するなど、仲介サイト向けの指針づくりに乗り出す。

 専門委員会は、対応策の全体像を秋にも取りまとめる方針。

 厚労省によると、児童福祉法では認可外施設などで子どもを預かる場合、5人以下では自治体への届け出の義務がなく、保育の質など実態把握が難しい。

・テレ朝news「サイト登録厳格化など検討 ベビーシッター事件受け」

http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000031958.html

今年3月、ベビーシッターの男の自宅で、仲介サイトを通じて預けられた2歳の男の子が死亡した事件を受け、厚生労働省は、仲介サイトの登録の厳格化など再発防止策の検討を始めました。

 厚労省によりますと、現行の児童福祉法では、預かる子どもが5人以下の場合、ベビーシッターは自治体へ届け出る義務がありません。また、インターネット上のシッター仲介サイトの多くは、名前や資格が自己申告となっているため、偽名でも登録ができるなどの問題点が指摘されています。4日の検討会では、委員から「アルバイト感覚でシッターをやっている人も多い」などの指摘があり、サイトの登録時に身分証の提出を求めて本人確認を厳格化するなど、規制の必要性を訴える声が相次ぎました。厚労省は、秋までに再発防止策を取りまとめる方針です。

今回の事件を受けて、直後の3月19日に厚労省ではベビーシッターを利用する際の留意点と公表し、

6月30日には実態調査の結果を公表している。

・ベビーシッターなどを利用するときの留意点

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/babysitter/

・「認可外保育施設及び子どもの預かりサービスに関する調査」の結果

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000049514.html

調査結果などを踏まえ、同委員会では大きく4つのことを議論する。

①届出制等の対象範囲の在り方

②認可外の居宅訪問型保育事業等に対する指導監督基準の在り方

③マッチングサイトへの対応の在り方

④情報提供等の在り方

①の「届出制度等の対象範囲の在り方」については、

自治体がどの程度業者を把握できるかが焦点となっている。

現在、法令上届出の対象外となっている5人以下の乳幼児を保育する施設を把握している自治体は91自治体。独自に届出制度を設けているのは2自治体のみだ。

ただ、すべての事業者を把握するのは極めて難しい。

小さな業者を把握するためには、行政側もそのための準備が必要となり、

業務も煩雑になり、把握したものの、十分対応できない可能性も高い。

またベビーシッターや今回の事件のケースのように、

施設を伴わなかったり、都道府県を越境して預けられたりした場合、

市町村や都道府県単位での対応が難しくなるおそれもある。

②の「認可外の居宅訪問型保育事業等に対する指導監督基準の在り方」では、

事業者側にどのような指導監督基準を作るかがポイントだ。

来年4月から始まる「子ども・子育て支援新制度」においては、

ベビーシッター(居宅訪問型保育事業)が地域型保育給付の対象となるものの、

認可を受けない事業者に対してどのような基準を作るのかが課題となっている。

今回、以下の論点が厚労省側から示された。

・保育士資格を有しない者に対し研修を受講させること

・インターネットのマッチングサイトを通じて顧客の募集を行う事業者に対して、利用するインターネットサイトを都道府県等に届け出させること

・事業を実施するにあたって、賠償責任保険への加入

・保育終了後、保育者から利用者への子どもの様子の報告を求めること

・事業者は、事前に利用者が保育者の情報確認ができるようにすること

②については、ある程度公にされている業者と考えていいが、

最大の焦点となるのが、③の「マッチングサイトへの対応」だ。

インターネット上でマッチングサイトを運営している業者は、

自ら子どもの預かりサービスを行っているわけではなく、

単に、保育をする事業者と利用者が出会う「場」を提供しているにすぎないため、

規制するのが困難な状況にある。

今回厚労省は、新たにサイト運営者に対するガイドラインを設け、

保育をする事業者の正確な情報が利用者に伝わるようにするようにしたい意向だ。

また、サイト運営者から、事業者及び利用者が一定のルールを

遵守するよう要請してもらうことも考えている。

今回の事件で明らかになったように、

マッチングサイトを利用しているのは、ひとり親世帯などの低所得世帯が多く、

低価格のものを利用せざるを得ないという事実だ。

それに加えて、休日や夜間など認可保育所などが運営していない時間帯に預ける場合が多く、

融通の利くマッチングサイトは公的な支援に比べて使いやすいのが実態であろう。

現行制度においても、そのような時間帯でも利用できる支援としては、

ファミリー・サポート制度やトワイライトステイ(夜間)やショートステイ事業がある。

ただ、今回の事件で男児を亡くした母親が住んでいたのは横浜市で、

横浜市にはこうした制度があったにもかかわらず利用されなかった。

自治体によってはこうした制度を設けていない場合もあるが、

「制度があったとして公的支援を受けたくない人もいる」(尾木まり委員)という事情が、

マッチングサイトへのニーズが減ることがない一因とも指摘された。

そうした面をクリアするためにも、利用者が行政との信頼関係を構築し、

なぜマッチングサイトを利用せざるを得ないのかという事情を

より詳細に把握できる体制が必要だと考える。

おそらくマッチングサイト自体は完全にはなくならないのではないか。

行政が業者を把握しようとすればするほど、

業者は縛りから抜け出そうと、規制の届かないところに暗躍し、

「闇業者化」していくことで、

より把握するのが困難になっていく可能性も十分にある。

今回の事件のように、偽名を使用してサイトに登録したり、

乳幼児に対して危険な状態に陥らせたりということができないように、

マッチングサイト業者のモラルを向上させることが重要だ。

そのためには、同時に利用者自身がきちんと業者を選択できる力をつけ、

悪質な業者は利用しないというストッパーを掛けられるかが

悪質な業者を駆逐するカギとなるであろう。

そして、④の「情報提供等の在り方」については、

来年4月から始まる「子ども・子育て支援新制度」の周知にも絡み、

行政が複雑化した制度をいかに適切に情報提供できるかが課題となる。

新制度において給付対象として認可されるのは、

保育所、認定こども園、幼稚園だけではなく、

居宅訪問型保育、小規模保育、家庭的保育、事業所内保育などの

地域型保育も新たに含まれることになる。

利用者が自分のニーズに応じて選択できることはもとより、

行政で行われているニーズ調査が適切に機能することで、

都市部においては待機児童を減らしていくことにもつながっていくことになる。

また、ショートステイやトワイライトステイなどのニーズも的確に把握し、

そのニーズに応じて市町村が設置されることだけではなく、

いかに公的支援に導き、実際に利用してもらうかということが課題だ。

筆者も「行政があらゆる窓口を使って利用者に周知をすべき」と発言をした。

厚労省では、子育て支援サービスの情報を整理したいとのこと。

ただ、今回示されたイメージでは、厚労省⇒都道府県⇒市町村という流れでイメージで、

「利用者がほしい情報には届かない可能性もある」(筆者)と指摘した。

「ベビーシッター」や「子ども 預かる」などのキーワードで、

行政の情報が検索上位にヒットし、そこに導くことが重要だ。

しかし、行政の情報に自分の欲しい情報がなければ、

結局、利用者は公的支援以外の安価なサイトに導かれてしまうことになる。

今月25日に開催される第2回の会合では、

ベビーシッター事業者とインターネットサイト運営者などから、

ヒアリングが行われる予定だ。

課題が多い中で、同委員会は10月までにまとめなければならないという状況にある。

同様の死亡事案が二度と起きないように、

行政、業者、利用者がいかに連携していく体制を作ることができるか。

是非、多くの方々に意見を伺ってみたい。

(8月4日付「労働・子育てジャーナリスト吉田大樹のブログ」より転載)