BLOG

迷走する辺野古移設問題~副知事辞任の衝撃~

2017年02月02日 23時13分 JST

沖縄県の安慶田副知事が1月23日、口利き疑惑により辞任し、翁長知事を中心とする辺野古移設反対運動「オール沖縄」に大きな打撃を与えている

前副知事に対する疑惑は大きく分けて二つある。一つは教員採用試験の受験者合格を諸見里教育長(当時)に依頼した件。もう一つは教育庁人事への介入と恫喝である。

疑惑が表面化したのは、諸見里前教育長の実名による告発を教育庁が公表したためである。

同氏は、教育長時代に安慶田氏の指示(口利き、人事介入)に従わなかったことから、2016年3月に任期を1年残したまま退任させられたと言われている。

権威主義的な政治風土が色濃く残る沖縄では、有力政治家による口利きや人事介入が生じやすい。とりわけ前副知事は口利きや恫喝の噂が絶えない人物であった。

安慶田氏のスキャンダルは、長年の友人や側近を抜擢するという翁長知事の「お友達人事」と行政手法の問題点をさらけ出した

知事は専門家や部下の意見・アドバイスにほとんど耳を貸さず、重要な方針を極少数の側近グループで決め、県庁幹部や彼を支持する「オール沖縄」関係者とも情報をほとんど共有しないとも言われている。

その側近グループを仕切っていたのが安慶田氏である。

前知事の任命責任を問われている翁長氏の、この件に対する発言は煮え切らない。安慶田氏を擁護している印象さえ与え、知事を支えてきた「オール沖縄」内にも困惑が広がっている。

これまで一貫して翁長体制を支持してきた地元有力紙は、前副知事に対して手厳しい。

一方で、首相官邸、特に菅官房長官とのパイプ役をほとんど一人でこなしてきた同氏の存在感は際立っていたため、彼の辞任が翁長体制の弱体化につながることを懸念する声も漏れてくる。

「オール沖縄」は、副知事辞任問題以外にも、深刻な内部対立という難題を抱えている

本島北部で展開された高江のヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設に反対する運動では、大量の車両を停車させて公道の通行をストップさせるなどの違法行為もあった。

「オール沖縄」陣営内の保守系には、このような激しい運動スタイルには強いアレルギーがある。

抗議活動の陣頭指揮をとっていたカリスマ活動家の山城博治氏が逮捕、長期拘留され、社民党などが釈放請求を行なっているが、上述した路線上の違いもあって、翁長知事や安慶田副知事(当時)、保守系グループは積極的に動いてこなかった。

ヘリパッド建設阻止のために現場で体を張ってきたと自認する活動家や、彼らを支援する社民党などは、翁長・安慶田ラインに不満を募らせてきた。

1月22日に投開票された宮古島市長選挙では、「オール沖縄」陣営が支援した候補が僅差で落選した。

最大の敗因は、社民党などが別の候補を立て、「オール沖縄」支持票が分散したことである。ここにも路線の違いがくすぶる陣営の内情が透けて見える。

「オール沖縄」は、「辺野古移設阻止」と「オスプレイ配備撤回」をスローガンとして掲げ、さまざまな立場のグループを含む、ゆるやかな連携組織である。

分裂を恐れて直截な議論を避け、明確な司令塔や調整役は存在しない。

だが、高江ヘリパッド問題のような、具体的な方針決定を迫られる局面では、このような「ゆるやかな」体制は機能しない。内部矛盾に陣営が呻吟している時期に、安慶田前副知事の事件が飛び出したのだ

陣営が混乱するのは当然である。同陣営内の関係者の間に重苦しい空気が流れている。

首相官邸、特に沖縄の「基地問題」を担当してきた菅氏などから見れば、「オール沖縄」内の亀裂は好都合である。

しかも、したたかなネゴシエーターでもあった安慶田氏が退場したことで、辺野古移設反対を唱える沖縄県を御しやすくなったと言える。

反面、沖縄県側の窓口であり、事情に精通していた前副知事の不在によって、実務協議や連絡が順調に進まず、ひいては工事が遅延する可能性もある。

中国の急速な軍拡と強硬な海洋進出を受けて、日米同盟の再確認と強化は安倍政権にとって焦眉の課題である。

「米国第一」を掲げ、単純で直情径行型のトランプ大統領は、沖縄の複雑な政治社会事情などには関心を示さないだろう。移設工事の遅延に苛立ち、いつ在沖縄米軍の撤退を言い出すか分からない。

海兵隊出身のマティス新国防長官が日米同盟維持の意向を示しているので、当初懸念した在沖米軍撤退の可能性は低くなったとは言え、トランプ政権の対日政策はいまだ不透明である。

安倍政権は何はさておき辺野古移設工事を急ぎ、米軍への協力の姿勢を米国政府にアピールしなければならない

辺野古埋め立て訴訟で最高裁において沖縄県敗訴が確定したことは、ボディーブローのように「オール沖縄」陣営にダメージを与えており、辺野古などの地元では諦めムードも出始めている

また、山城博治氏の不在や逮捕者の続出によって活動家の士気は低下し、基地ゲート前での抗議活動への動員力も落ちている。

安倍政権は埋め立て工事をスピーディーに進めようとするだろう。沖縄県や名護市には法手続き面での抵抗手段が残されているが、辺野古問題をめぐる情勢は「オール沖縄」にとって一段と厳しくなってきたと言える。

翁長知事と「オール沖縄」が有効な戦略を打ち出せるかどうか、また、ひびの入った陣営内の連携体制を再構築できるかどうか。辺野古移設問題は正念場を迎えている。