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USJ進出計画の撤回~幻想に振り回された沖縄~

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5月11日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、沖縄進出計画の撤回を沖縄県と政府に伝えた。

沖縄本島北部には、美ら海水族館以外に観光客をひきつける大型施設がない。産業基盤が弱く、過疎化の進む北部の人々は、集客力のあるUSJを熱望してきた。沖縄関係者の間に、USJ進出への期待が大きかっただけに、撤回に落胆の声が上がった。

実は、USJの沖縄進出構想には、さまざまな思惑が見え隠れしていた。思惑まみれのUSJ沖縄進出の撤回に、冷めた反応だけでなく安堵の声すら聞こえてきたのも当然であろう。

菅官房長官と沖縄選出の下地幹郎代議士(現おおさか維新の会)が、USJを沖縄誘致に動いたと報道されている。

そのため、一般県民にも熱狂的に受け入れられるUSJ計画は、本土政府が辺野古移設に反対する翁長陣営を揺さぶるためのアメではないか、との受け止め方もあった。確かに、県民の期待を無視できない翁長氏は、進出歓迎を表明せざるをえなかった。

この計画は複雑な経緯を辿る。進出候補先が、当初有力視された名護市から、沖縄本島北部の本部町へと変更されたのである。
強硬な辺野古反対派である稲嶺市長への意趣返しと見る向きも多かった。

一方、沖縄では、別の意味でUSJ進出をいぶかる声もあった。

本部町の国営海洋博公園には、首里城と並ぶ沖縄の宝、世界最高レベルの水族館「美ら海水族館」がある。その管理は、沖縄県の外郭団体「沖縄美ら島財団」に委託されている。ところが、USJが同公園の使用を検討していると伝えられ、「美ら海水族館」の管理もUSJに委託されるのではないか、との疑念が生まれた。

普天間基地の跡地に、ディズニーを誘致しようという動きがある。だが、USJやディズニーはアメリカ文化の象徴であり、「沖縄的らしさ」とはほど遠い。

このようなアメリカ文化への憧れは、沖縄の人々が自分たちの土地の持つ魅力をつかみ損ねていることを象徴している。本土への依存から脱却し、自立した沖縄経済を目指す志はどこへ行ったのか?

近年、沖縄経済は順調に成長してきたとされる。特に観光は好調で、今や京都や奈良、軽井沢などと並ぶ日本有数の観光地である。那覇空港は全国6位の利用客数を誇る。

しかし、観光産業の拡大は、非正規雇用の増大をもたらしただけであった。沖縄県の非正規雇用率は44.5%におよび(2012年総務省)、全国で最も高い。そのため、1人当たりの県民所得も203万円(2012年度内閣府)と全国最下位である。

観光客数が増えても、それだけでは、沖縄県民の生活水準の向上に結びつかない。いたずらに産業規模の拡大に走るのではなく、目指すべきは、沖縄の魅力を前面に打ち出した付加価値の高い観光のはずだ。

2010年に県が策定した「沖縄21世紀ビジョン」は高い評価を受けている。沖縄における開発事業は、実質的には本土政府や本土のコンサルタント会社が中心となって計画し、実施したものがほとんどであった。そのため、沖縄の実情を踏まえない計画内容が目立つ。

その典型は、美しい海を埋め立てて、本土から工場を大量に誘致する構想である。

結果は悲惨であった。(本島東海岸の広大な空っぽの埋め立て地を見よ!)だが、この「21世紀ビジョン」は、初めて沖縄県が主体的に定めた振興計画である。そして、めざすべき将来像として「沖縄らしさ」を強調している。

残念ながら、沖縄には今もなお、「沖縄らしさ」を語りながら、具体的な政策においては本土の知恵に頼る傾向がある。その背景には、沖縄の魅力と問題点に精通する人材の積極的な登用が少ないことがある。

沖縄の人たちだけの内輪の発想では、沖縄を客観的にとらえ、新しい発想を生みだすことは難しい。本土や外国で経験を積んだ沖縄出身者や沖縄系海外移民など、沖縄を外から観察し、特徴を明確につかんでいる人々の体験や知見をこそ、沖縄は大いに活用すべきである

沖縄のアイデンティティや自己決定権への翁長知事のこだわりは、本土頼みから脱却する可能性を秘めている。

だが、今は、意気込みだけでなく、具体的なアイディアこそが求められているのである。