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〝出る杭〟を許容する社会へ

2013年06月20日 17時59分 JST | 更新 2013年08月19日 18時12分 JST

安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の1本目の矢(大胆な金融緩和)と2本目の矢(機動的な財政出動)によって、各種経済指標の改善が伝えられてきました。1〜3月期の国内総生産(GDP)は4.1%増、倒産件数は9%減、経常黒字は倍増の7500億円といったニュースが伝わる度に、日本国民の〝マインド〟はポジティブになってきたと思われます。

但し、別の言い方をすれば、金融に口先介入する(1本目の矢)、借金を増やして公共事業をする(2本目の矢)ということについては、従来から自民党が得意だったやり方で、その意味では第3の矢である成長戦略が注目されてきました。なぜならば、これこそが自民党が最も苦手とする既得権者の抵抗が激しい課題だからです。

先日、6月14日には、成長戦略が正式に閣議決定されたものの、残念ながら(予想通り?)期待はずれに終わりました。「自民党も変わったな」というような、従来の殻を破る具体策が一つもなかったからです。

安倍首相は、6月5日の講演の中で、「規制改革こそ成長戦略の一丁目一番地」「時には国論を二分するようなこともある」と勇ましく言い放ったものの、蓋を開けてみれば「医薬品のネット販売」「先進医療の保険外併用の拡大」「農地の集積化」などでした。これらは"一歩前進策"ではあっても新たな投資を生む抜本策とは言えないものばかりです。その結果が最近の株価の乱高下になっていると言えます。

「安倍首相は本気だな」と感じさせる規制改革の具体策がいくつかあれば、金融緩和マネーや280兆円もある企業の内部留保資金が投資に向かい、本格的な景気回復の契機にできたのにと残念でなりません。

さて、日本の活力を取り戻していくためには、上記の政治決断が何よりも大切であることは言うまでもありませんが、私たち日本人の〝心持ち〟も少し修正しなければならないのでないかと思います。

それを、ひとことで言えば、「〝出る杭〟を許容する社会へ」ということでしょうか。

日本人は協調性に富んだ、規律ある国民です。だからこそ、均質規格大量安定生産によって経済大国になったといえます。

しかし、プラスの面は、見方を変えれば欠点にもなります。協調性を重んじるということは、独創性を蔑ろにすることと裏表でもあり、突出した才能を認めにくい社会と言えます。

なにも、日本人がすべて外国のやり方を真似するべきだと言いたいわけではありません。自分たちの長所は長所として大切にし、一方、短所をきちんと見極め、時代に合った形で修正すべきところは修正するということです。

古来、日本人は農耕民族です。農耕社会とは個々の能力差を嫉妬し、排斥する社会の土壌でもあります。なぜなら、農業においては個々の能力よりも協調性、勤勉さが重要でした。つまり、農耕型社会は個人の能力の評価よりも、集団の成果に重きを置く社会ということでもあります。

他方、狩猟型社会において最も避けるべきは人災でした。獰猛な野生動物の狩りをするには、集団を統率し守り抜くリーダーが必要です。能力のない人物をリーダーに戴いた暁には一国の荒廃にも直結したからです。

また、隣人が変わらないことが前提の日本では、〝事を荒立てない〟ことが重要とされていました。例え、正義でも和を乱すようなことは正義ではなくなる。一方、狩猟型社会の法と秩序は、信賞必罰です。成果のあった者を顕彰し、そうでなかった者との報酬に差をつけるのが当然でした。

日本におけるあらゆる改革が遅々として進まないのは、背後にそういった日本国民の精神性があると言っても、あながち間違っていないと思います。

先頃発表された世界銀行のビジネス環境ランキングを見ると、日本は「起業のしやすさ」114位(参入障壁が多いので)、税制127位(法人税が高いなど、企業に厳しい税制なので)など、日本人の心性と関係がないとは言い切れません。

独創的な発想で新しい世界を切り拓くことのできる〝出る杭〟がたくさん現れることを待ち望みたいと思います。そして、〝出る杭〟を寛容に認めて、わが国を活気づけていく社会でありたいと思います。