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緊急着陸?いったい格安航空会社(LCC)はどこに向かう

2013年09月20日 00時07分 JST | 更新 2013年11月19日 19時12分 JST

いったい何が起こったのでしょうか。燃料不足のため、緊急着陸したいと機長から要請があり、滑走路周辺に消防車などが待機するものものしい警戒態勢のなかをジェットスタージャパン139便が着陸するという騒動がニュースで流れていました。

別の便に鳥が衝突する事故があったために、点検のために滑走路を封鎖し、着陸予定の各機が空中を旋回し着陸待機してていたさなかに起こった出来事です。航空法では、行き先変更や30分の待機に備えた燃料を積むことが定められているのだそうですが、朝日新聞によると、あと約50分飛行できる燃料が残っていたことが着陸後にわかったというのです。その後、何もなかったように成田にむかって飛んでいったそうです。

朝日新聞デジタル:ジェットスター機、福岡空港に緊急着陸 燃料不足を訴え :

機長が他機に先駆けて嘘をついてまで着陸しようとしたのでしょうか。あるいはLCC(格安航空会社)の高いコスト意識を持つ機長が旋回時間を減らし、燃料を節約しようとしたのでしょうか。まったくよくわからない出来事でした。

そういえば、昨年はLCC元年とか言われ、日本でも3社のLCCが誕生しましたが、LCCはうまくいっているのでしょうか。いや実際はなかなか大変そうです。下手をすると燃料、いや資金不足で緊急着陸ということになるのでしょうか。

LCCで、もっとも元気がよいのがANA傘下のピーチ・アビエーションですが、絶好調といわれながら、初年度の決算で純損失12億、営業損失でも9億円の赤字で採算に乗っていません。まだ初年度決算なのでもうすこし長い目で見ないといけないのでしょうが、他社はさらに惨憺たる状況のようです。

アジア最大のLCCエアアジアとANAが提携で生まれたエアアジア・ジャパンは就航から8ヶ月で営業赤字が35億円となり、業績不振や経営方針の違いなどから今年6月に提携が解消されています。この11月からはバニラエアとして社名を変更してANA100%の子会社として再出発しますが、同じANAグループでピーチとなぜ2社なのかは常識的には理解しがたいところです。関空と成田の2拠点のハブを備えたLCCが登場すると、ANA全体にも影響すると考えたのかもしれません。

エアアジアのフェルナンデスCEOは、朝日新聞のインタビューに、エアアジアの日本での不振は「間違ったコスト構造、間違った路線選択、間違った人が経営したことが原因」であり、さらに「合弁開始当時、ANAは我々の企業カルチャーを学びたいと言っていた。だが40年もANAで働いた人間が帽子だけ変えてみても本質はなかなか変われない」とANAの体質を厳しく批判し、単独で日本再参入を考えているようです。

朝日新聞デジタル:「日本に真のLCCない」 エアアジア、再進出に意欲 :

残るもう一社の今回の不可解な緊急着陸をおこなったジェットスタージャパンですが、こちらはもっとひどい状態のようです。毎月10億程度の赤字を垂れ流しているとか。ダイヤモンドの記事によると、2度の増資で120億円となった資本金も、想定以上の赤字が膨らみ、早くも食いつぶしつつあるようで、再度の増資も必要になってくるのかもしれません。

LCCの株主を悩ませる ジェットスターの増資問題|Close-Up Enterprise|ダイヤモンド・オンライン :

この格差のひとつの原因は、関空に拠点を置くか、成田に拠点を置くかにあるようです。今年の春のゴールデンウイ-クでは、関空を拠点とするピーチが91.3%の搭乗率に対して、成田を拠点とするジョットスターは78.8%、エアアジアは67.6%でした。お盆の時期でも、ピーチの搭乗率は93.6%に対して、ジェットスター、エアアジアともに86.2%となっています。

関西のほうが価格に敏感だということもあるでしょうが、おそらく関空も決して便利ではないとはいえ、アクセスの利便性や交通費の問題も大きいのだと思います。現在は羽田初のLCCは、エアアジアXのクアラルンプール便だけですが、オリンピック開催を契機にLCCの羽田枠が増えるのでしょうか。

結局はANAとJALがイイ!? 遅延に業績低迷LCCの苦悩とこれから(1/2) | ビジネスジャーナル :

LCCに食われた新興航空会社 GWの搭乗率で勝ち負け鮮明に | News Inside | デイリー・ダイヤモンド :

国内LCC、お盆の搭乗率伸び悩む エアアジアは新ブランド「バニラ」で仕切り直し : J-CASTニュース :

ジェットスターの赤字を日航が資本増強で埋めれば、LCCの世界も日航対ANAという対立の構図がより鮮明になってきます。

日航は経営再建が進み黒字化しておりジェットスターを支えることは可能でしょうが、ANAはB787問題や燃料代の高騰などで2014年3月期第1四半期決算では営業損益が56億円の赤字となる厳しい状況で、この状況が続けば、傘下のLCC2社に資金投入する余裕はなくなってきます。

日航に投入された3500億円の公的資金は再上場でお釣りがでたとはいえ、5215億円の債権放棄があったこと、また会社更生法の適用申請を受けたために、日航は18年まで法人税と地方税が免除されるという有利さがあります。

それは制度上の問題だとはいえ、ANAからすればこのハンディは耐え難いものになってきます。経営が悪化すればするほどやっかみも激しくなってきます。だから9月末にも決定する羽田空港国際線の新規発着枠をめぐって、ANAにより多くの枠を増やせという要求になってくるのも当然でしょう。

日航とANA、羽田国際線の発着枠巡り主張隔たり :日本経済新聞 :

それはそれで理解できますが、それよりは、日航が見事に体質改善を行ったこと、またエアアジアのフェルナンデスCEOのANA体質批判を真摯に受け止めることも必要なのではないかとも感じます。

民主党政権下で行った日航の再建処理には自民党議員のなかには不快感を持っている人も多いはずで、また政治が絡んで、怪しげなことが起こってくるのでしょうか。

(※この記事は9月19日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載しました)