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スマートフォンが百均ショップに並ぶ日がやってくるのかもしれない

2013年05月16日 00時04分 JST | 更新 2013年07月15日 18時12分 JST

スマートフォンは急成長してきました。あまりの成長の速さに、はや成熟を迎えようとしているかのようです。とくに米国では、この3年間で20%も普及が進み、すでに58.4%の普及率に達したようです。来年の秋ごろには普及率が80%に達すると見られています。

またヨーロッパの主要国や日本も、再来年ぐらいには普及率が80%前後になってくるのでしょう。それはとりもなおさず先進国ではスマートフォンはもうこれ以上の普及は望めない「限界普及率」に達してしまうことを意味しています。

なにか多くの製品で見てきた歴史をまるで早送りのコマで見ているかのようで、面白いといえば面白いのですが、スマートフォンで稼いでいる企業にとっては大きな試練がやってきます。

先進国では、スマートフォンは買い替えと活用の市場、つまりソフトやコンテンツの市場となり、スマートフォンそのものの主戦場は途上国に移り、激しい価格競争が始まってくるのでしょう。

限界普及率に近づいてきただけでなく、スマートフォンという製品からは「驚き(サプライズ)」がなくなりました。モノそのものも成熟してきたようです。新機能を満艦飾に盛ったサムスンのギャラクシーS4が痛々しいほどそれを象徴しています。

実物が色あせてみえる「Galaxy S4」 派手な販売戦略が裏目に? SankeiBiz(サンケイビズ) :

市場と製品の成熟が同時にやってこようとしています。さらにそれを促すかのように、クアルコムの仕組みを利用すれば、場合によっては、開発スタートから市場投入まで、たった60日で完了できるというフォーブスの記事を日経が紹介していました。開発のハードルが極端に下がり、2013年1月時点で、40社以上のメーカーがこの仕組を利用して、170種類のスマホを売り出しているという百花繚乱の時代となってきています。

アップル苦しめるクアルコム「格安スマホレシピ」:日本経済新聞:

アップルははや成長が鈍化しはじめてきていますが、やがて今は飛ぶ鳥を落とす勢いのサムスンにも試練はやってきます。サムスンが「ファスト・フォロワー(機敏な追随者)」の優等生とはうまく言い当てていますが、さらにサムスンは圧倒的な品ぞろえによる総合戦略で他社を凌駕する戦略スタイルです。しかしブランドイメージの上にはアップルが重しのようにのしかかり、さらに底辺では「格安スマホ」との競争にさらされてきます。それは今やスマートフォンがサムスンの稼ぎ頭の事業となっているために、自ずとサムスンの収益にも影響してくるでしょう。

しかも悪いことにサムスンは「イノベーター」となることを夢見ているのです。それは日本の家電が歩んできたいつかきた道と重なって見えてきます。はや成熟してきた製品に求められるのはあっと驚くような新しい製品概念を創造する「リ・インベンション」ですが、それは「ファスト・フォロワー(機敏な追随者)」には荷が重いチャレンジです。サムスンの勢いが止まれば、韓国経済にも大きな影響をもたらしてくることは避けられません。

いつの時代にも栄枯盛衰があります。諸行無常の世界です。

しかし、これまでの買ってしまえばお終いという製品と異なるのは、活用のマーケットがあることです。当然ハードからソフトへ、またサービスへと市場の重心が大きく移ってくるのでしょう。さらに小さな企業が、まるでおもちゃのような面白いスマホとか、周辺のアクセサリーを生み出し、消費者にとっては楽しい世界になってくるのではないでしょうか。もしかするとスマホも百均ショップに並ぶ日がやってくるのかもしれません。

日本は情報家電の多くの分野で国際競争に敗れてきましたが、視点を変えれば、次のステップに踏み出すことを早める、いい結果に恵まれたのかもしれません。もっと地味なところで、「目のつけどころがJAPANでしょ」というふうになればなあと願っています。日本は国民性や企業の性格からして、ガチンコ勝負には向いていないように思うのですが、だからこそ競争を賢く避け、独自のポジションを築く潜在力と知恵に期待したいところです。

(この記事は5月08日に「大西 宏のマーケティング・エッセンス」で公開された記事の転載です)