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ツートップ戦略に見るサムスン失敗の教訓

2013年08月16日 14時19分 JST | 更新 2013年10月15日 18時12分 JST

ドコモの「エクスぺリアA」と「ギャラクシーS4」のツートップ戦略は、7月に入って他社への流出が止まらないことから、他の機種の値引きも追加し、なし崩し状態になってきましたが、この冬はソニーのフラグシップ機「エクスぺリアZ」の後継機種、シャープの「アクオスフォンZETA」と富士通の「アローズNX」の3機種が選ばれ、いってみれば3トップ戦略になることをロイターが報じていました。

ドコモの冬商戦、ソニー・シャープ・富士通を重点販売へ=関係筋 | Reuters :

さてドコモのツートップ戦略ですが、第1四半期の決算状況や純増数を見れば、成果はあったとはいえない状況でした。営業収益の伸びも、営業利益や最終利益の伸びも大きく他社に劣り、4~6月の純増数では、ソフトバンクが81万、KDDI67万、ドコモ9万と大きく引き離されています。モバイルナンバーポータビリティ(MNP)による他社への転出超過からも抜け出すことができず、7月に入ってツートップ以外の機種にも値引きを広げて流出阻止をはかる軌道修正を余儀なくされています。

■2013年度第1四半期各社の業績比較

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ドコモ1Q、ツートップ効果薄く苦戦 iPhone好調のKDDIとソフトバンクは増収増益 - ITmedia ニュース :

その失敗の根にあるのは、ライバルとの競争にあまりにも力点を置き、顧客を見なかったことにあったのではないかと感じています。どの企業も社会的な使命を背負っています。もちろん企業の大きさによって、また立場によってもどのような使命なのかは異なっていることは言うまでもありません。

ところが、ライバルとの激しい競争がはじまると、社会的な使命を果たすことよりも、ライバルに勝つこと、あるいはライバルに負けないことが最大の目標となってしまうことも起こってきます。

競争は企業を鍛えます。しかし、それがなにのための競争かを忘れると、競争力すら損ねるという皮肉な事態も起こってきます。どうもドコモの最近の動向を見ていると、そんな悪循環にはまりはじめていることを感じます。

ドコモは携帯契約数で流出が続いているとはいえ、未だ46%のシェアでトップの座を占めています。そのことを考えるとライバルへの対抗よりもドコモが担うべき使命は違うところにあるのでないでしょうか。

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そういった戦略ミスを防ぐには「ライバルよりは、顧客に目を向ける」ことではないかと思っていて、昨日のメルマガで触れました。

ライバルより顧客に目を向ける - 「発想力を広げる - 大西宏のマーケティ ング・アイ」 :

それよりも興味を引くのは、サムスンのギャラクシーSの失敗です。ツートップ戦略で売れるには売れたものの、4~6月の販売台数では「エクスぺリアA」のおよそ二分の一でした。

その最大の原因は、スペックの高さや多機能を追求したギャラクシーSよりも、フラッグシップといいつつ、実際は価格が安く、スペックや機能では劣る普及型の「エクスぺリアA」を消費者が選んだということだと思います。なにか多機能、高品質、高価格に走り、韓国や台湾の低価格機種に敗北していった日本の情報家電がたどった道を彷彿させます。

つまり、スマートフォンも製品的には成熟期を迎え、もはやよほどのハイエンドユーザーでもない限り、普通のものでも十分に機能や品質では満足できるものになってしまったことを物語る出来事だったのではないでしょうか。消費者の関心事は、多機能、ハイスペックとは違うところに移ってきていて、それなら電池が長持ちするほうがよほどか消費者の利便性は高まります。

さらに「神尾寿の時事日想」では、「販売開始から1カ月程度しかたっていない新製品で、しかもツートップでもともと安くなっていたはずのところに、さらに2万円ものキャッシュバックを行った」ことで自らブランドイメージを落としてしまう失敗もしていることが指摘されています。サムスンにとってはとくに日本市場ではブランドイメージを築かなければメジャーにはなれないにもかかわらずです。

神尾寿の時事日想:Xperiaの半分しか売れなかったGALAXY――ツートップの差はなぜ開いたのか?

ツートップ戦略でのサムスンの失敗は、おそらく日本市場に限ったことではなく、今後のスマートフォン市場が塗り替わっていく可能性を見せるものだったのではないでしょうか。常識的には中国や台湾メーカーが普及機で伸びてくるだろうということですが、「競争の焦点を変える」戦略を日本のメーカーが先行して見出せばまた面白いことになってくるのではないでしょうか。

(※この記事は、2013年8月15日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」から転載しました)