外国からの観光客はもっと伸ばせる

日本の都市環境や各地の豊かな自然環境、また歴史的な文化資産や都市文化などの観光コンテンツの豊かさを考えれば、まだまだ観光は伸ばせるはずです。それに長期を見通せば、観光は国際交流をさらに広げ、また日本ファンを増やすことにもなってきます。

ビジネスの格言ですが、「負け犬を切れ、勝ち馬に乗れ」というのがあります。それでいえば、着目したいのは外国人向けの観光産業です。訪日外国人観光客が増えてきています。

昨年は、836万人と前年の34.6%増、日本政府観光局が発表した訪日外国人観光客7月の推定値では、単月としては過去最高の100万人を記録、また1-7月の累計でも対前年同期比で22%増で推移しており、このままいけば、2003年に政府が掲げた「2010年までに1000万人」は3年遅れで達成できる見通しです。

まさに勝ち馬に乗ろうと、レストランやホテル、また各観光地などではこの勢いにのった対応がはじまっていることも伝えられるようになってきました。

しかし、1000万人という海外からの観光客数は海外と比較するとまだまだ少ないというのが現実です。ウィキペディアに載っている国連世界観光機関(UNWTO)の国際観光客到着数2012年ランキングを見ると、一位はフランスで8301万人、日本は32位にすぎません。しかも国土が狭い韓国でも1114万人で23位にはいっているのです。

このランキングを見ると、まだまだ海外からの観光客数は少なすぎるのが現実です。しかし希望が持てるのは、2011年からの伸び率ではプラス34.6%と突出していることです。もちろん、2011年は東北の大震災や福島原発事故によるダメージがあった年だったということもありますが、急激にそのダメージからは回復してきていることに変わりません。

大切なのは「需要の伸びの勢いにどううまく乗って行くか」と、「今後の戦略」になってきます。まずは高い志を立てるということでしょうし、どう世界にキャッチアップするかに問題をおけば、おそらく現実的な知恵もいろいろと生まれてくるのでしょう。

報道によれば、観光ビザの緩和も訪日観光客数を増やし、あたかもそれが観光客数増加につながったと感じさせるものが目立ちます。それも事実でしょうが、それよりも、もともと観光客の多い韓国や台湾の増加のほうがはるかに訪日観光客数増加に寄与しています。

冷静に事実を見れば、7月単月でも、韓国から来日した観光客は対前年同月と比べ5万4千人、台湾からは7万8千人増え、関係が悪化した中国からの観光客の減少分、6万4千人は台湾一国でカバーできているのです。まさに韓国と台湾からの訪日観光客数の伸びが大きいのです。

東南アジアからの観光ビザの要件緩和が新たな押し上げ要因になっている。政府は7月、タイとマレーシアからの観光客向けにビザ取得を免除。フィリピンとベトナムには有効期限内に何度でも訪日できる数次ビザの発行を始めた。タイの訪日客は前年同月比85%増の3万人、マレーシアも25%増の9900人。それぞれ7月としては過去最高となった。

次の表は今年の1~7月の訪日客の国別ランキングとその比率です。この国別シェアを見ながらターゲットはどこかを考えればと思います。

もちろんアジアの諸国からコツコツと観光客数を増やすことも大切でしょう。イスラム諸国からの観光客を増やすということもあるでしょう。しかし、大きな目標、たとえば2500万人超えを実現し、ロシアやマレーシアと並んで世界のトップ10入りを目指すといえば、やはり中国の観光客をどのように取り込むのかが大きな課題になってきます。なにせ観光支出では中国は1020億米ドルで世界でトップの国なのですから。つまり最大の潜在顧客なのです。

政治ではいろいろあっても、反日行動が目立ってきた韓国の訪日観光客は国別のトップで、また伸び率も大きいのです。どの国でも政治は政治ということでしょう。それを考えると、中国からの観光客をうまく取り込むことを追求する価値はありそうです。

しかも、昨年9月の尖閣問題で激減した中国からの観光客数も徐々に回復してきており、3月には10万人を越え、7月には14万人と増加してきています。今、世界からマナーが問題視されてきている中国の団体客は大きく減少したものの、個人客は回復してきているといわれているので、どちらかといえば安いツアーではなく、リピートが望める良質なツアーへと転換して行くというのが順当なところでしょう。

日本の都市環境や各地の豊かな自然環境、また歴史的な文化資産や都市文化などの観光コンテンツの豊かさを考えれば、まだまだ観光は伸ばせるはずです。それに長期を見通せば、観光は国際交流をさらに広げ、また日本ファンを増やすことにもなってきます。

どんどん積極的な観光政策を展開していけばと思います。世界のなかで生きていくことが宿命づけられている日本の最大の基本戦略は、日本のファンづくりであって欲しいものです。

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