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脱石油を現実的に考えればまずは車のハイブリッド化を進めること

2013年08月30日 18時45分 JST | 更新 2013年10月30日 18時12分 JST

シリアが化学兵器を使用した疑惑をめぐり、米英仏などによる軍事介入の準備がほぼ完了したことをウォール・ストリート・ジャーナルが伝えています。アサド政権は対決の姿勢を崩さず、シリアで緊張が高まってきています。この状況を受け、原油先物相場が急騰し、2011年5月以来、約2年4カ月ぶりに110ドル台に乗せました。ガソリンスタンドでのガソリン価格もまたあがってきています。

円安でただでさえ高騰してきた石油やガソリンの価格がさらに上昇しかねません。シリアそのものは石油産出国ではありませんが、軍事行動が拡大すれば、シリア北部の近くを通るトルコの石油パイプライン、シリアの東にあるイラク北部の油田地帯、さらにスエズ運河の輸送にも影響がでかねないからです。現実的な石油の生産や輸送への影響よりも、そういったリスクによって原油が高騰するとみて、そこに世界の投機マネーが流れ込んでくるからです。

影響はそれだけでは済まないと多くの識者は見ています。再び石油危機が再燃すれば、世界の経済への影響は免れず、石油価格の高騰だけでなく、安全な円への資金流入による円高の進行、それに連動した株安が日本を襲いかねず、ただでさえ疑わしいアベノミクス効果もふっとんでしまいます。

現代は日本も国際情勢の変化に好むと好まざるとにかかわらず、大きく影響されるかを痛感させられますが、日本は中東の不安定化で、安定しなくなってしまった石油への依存からの脱却をさらに進めていかなければこのリスクを低減することはできません。

脱石油は日本にとっては大きな課題です。それは石油が枯渇するからではなく、石油価格の変動が産業や経済の大きなリスクになってきているからです。このことを理解していないと、実現できそうにもない夢のような話が跳梁跋扈してしまいます。

いまでも、石油は枯渇すると信じている人がいますが、アゴラで山田高明さんが指摘されているように、石油の可採年数はもう40年前からあと40年といわれつづけたまま変化していません。

それは石油価格が上昇したために、資金をかけることができるようになり、従来では採れなかった石油も採取するようになったからです。しかしそのことは、「石油に関しては、価格を徐々に吊り上げて新規可採分を捻出していく一方通行の道」しかない状況となってしまったのです。さらに産出国が集積する中東は不安定なままであり、政治情勢が不安定になるたびに価格が高騰するということが繰り返されています。

見えてきた石油の限界 : アゴラ -

石油の消費量を減らす方法は多岐にわたっています。しかし石油消費でもっとも多い用途から消費を減らしていくことは最低限着手すべきことです。石油消費でもっとも多いといえば自動車です。自動車燃料用の消費が日本の石油消費の38%以上を占めています。

続いて多いのは化学製品の原材料でおよそ20%を占めています。化学製品の原材料の脱石油は技術革新が求められるので時間がかかりますが、自動車燃料消費を減らすことは極めて現実的です。

しかし、それがいきなり電気自動車だという人も多いのですが、あまり現実的ではありません。ほんとうに商用化で成功したのはまだテスラ社一社しかなく、しかもそれも非常に高額です。大衆車でビジネスラインに乗せる車の開発はいつのことになるのかもわかりません。ビジネスラインに乗せる、つまり売れる車をつくらなければ技術の進展も加速できず、また普及もしません。

それよりも、自動車のハイブリッド化をさらに進めることです。エコカー減税の対象基準が厳しくなり、その影響もあって、ハイブリッド競争が一段と高まってきたのでさらにハイブリッド化は進むと思いますが、それを後押ししていくことです。減税措置だけでなく、車を選ぶ側の意識に働きかけることも大切だと思います。自動車による石油消費が最も多いこと、車の選び方ひとつでそれを削減できることを本気でPRすればかなり効果もあるのではないでしょうか。

たとえば普通の乗用車なら、実際に走行できるのはガソリン1リットルで10Km前後です。現在プリウスに乗っていて、もう走行距離が12万Kmを越えましたが、平均的にはほぼガソリン1リットルで20Km前後です。つまりガソリン消費量は半減できるのです。50%の削減効果として大きいですね。ちなみに、プリウスの前に乗っていた車は、1リットルで7Km程度しか走れなかったので、ほぼ3分の1程度になったことになります。

国土交通省の基準のJC08モードでいえば、エコカー減税を乗用車なら1リットル30Kmを超える車種に限定するというのも一手でしょう。それでハイブリッド化はさらに進みます。走り方や気象条件などによっても変わってきますが、JC08モード1リットル30Kmは実走行ではほぼ20Km前後になります。

ハイブリッド車は電気自動車の将来をも拓きます。なぜなら電気自動車の成否の鍵は、車の軽量化と電池が握っているからです。それはハイブリッド化競争の争点と同じです。ハイブリッド化が進めば、電池の実消費が伸び電池性能の向上と電池価格を下げることにもつながってきて、プラグイン・ハイブリッド車や電気自動車の性能アップやコスト削減のいい下地ができてきます。

電気自動車なのか、プラグインハイブリッド車なのか、ハイブリッド車なのか、はたまたクリーンディーゼル車なのかなどは、市場に任せるべきことで、国が関与するだけ無駄なことです。政府支出を増やさなくともできることをやればいいのではないでしょうか。

(※この記事は、2013年8月29日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」から転載しました)