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問われる出崎社長辞任後の阪急阪神ホテルズの対応

2013年10月29日 16時06分 JST | 更新 2013年12月28日 19時12分 JST

阪急阪神ホテルズの出崎社長が「お客様に偽装と言われても仕方ない。阪急阪神ブランドへの信頼失墜を招いた」と謝罪し、阪急阪神ホテルズの社長と、親会社の阪急阪神ホールディングスの取締役を辞任すると表明する記者会見がありました。

この「偽装と言われて仕方ない」問題が起こってきたのは2006年からで、リッツカールトンの偽装問題とも重なっています。阪急と阪神の合併したのが2006年なので、みずほ銀行の事案と同様に合併によって起こった経営の混乱が原因ではないかと感じておりましたが、やはり出崎社長からもその通りの説明がありました。

また出崎社長は「傘下のホテルが合併して誕生したホテルズの社長に畑違いで中立的な人物を据える狙い」(毎日新聞)で阪急電鉄から送り込まれたようですが、電鉄ビジネスでは能力があったとしても、それで培われた知識や文化また手腕では、ホテル経営にはむかなかったのだと思います。ミスマッチだったということでしょう。

出崎社長が、原因を現場のせいにしたことは疑問に感じていたところです。それでは今後も現場からの信頼を得ることはできません。その時点でトップの資格を失ったも同然でした。

ホテルのように「人」によってサービスの質がきまってくるビジネスでは、「人」は財産であり、経営と現場の信頼の絆、また現場の人びとの意識のありようがなによりも重要だと思うからです。

今回の問題で、法的順守の仕組みや、表示に関するガイドラインをつくれといった意見も散見されます。それを否定するつもりはありませんが、もっと根っこの問題を解決しないと、これだけ壊れてしまった信頼を取り戻すには十分だとは思えません。

信頼を回復するには、「偽装と言われて仕方ない」問題がなくなるだけでは不十分です。

経営者と現場が一体となって、お客さまに従来よりもより質の高い価値を提供して認めていただけるようになろうという真摯な気持ちがまずは求めらます。

そしてその価値を生み出し、また維持するのも究極は現場の人びとです。現場の熱意や知恵、また創意工夫、また知恵を引き出す仕組みづくりや努力が経営には求められてきます。

事態を収拾するには、いくつかの試金石があると思いますが、まずは阪急阪神ホテルズのトップ人事に鍵がありそうです。それでほとんどが決まるのではないでしょうか。再び電鉄出身の方がトップになられては世間が納得しません。現場もそうでしょう。また「偽装と言われて仕方ない」問題を繰り返していたホテルからの人材抜擢もおなじです。そうすると選択肢は限られてきます。おそらく外部から経営のプロをスカウトしてくるのではないでしょうか。日産がゴーン社長を選択したようにです。

第二は、どのように内部の処遇を行うかです。責任を明確にしなけば筋が通りません。これについては、あまりに出崎社長の歯切れが悪く、よけいに疑問を広げてしまいました。問題が勝手に起こったわけではなく、誰かが意図的に指示し、現場にやらせなければ起りようのない問題なのですから。

第三は、経営と現場で価値観や再生に向かう道筋やシナリオをいかに共有するか、経営と現場が密接につながり、一体となって現場を変えていく仕組みや努力をどうつくっていくかでしょう。

いつまでも事態を引きずっているよりも、なにか世間が固唾を飲んでウォッチするようなサプライズを創り出して問題を断ち切ることが信頼回復を早めると思います。

ついでながら、阪神タイガースの経営も、ファンの不満を吹き飛ばすような人事を行って、もっと素直に楽しませてくれるチームづくりを行っていただければ最高です。阪急阪神ホテルズとかけて阪神タイガースと解く。その心はどちらも、結果よりも、生え抜き人事にこだわりすぎということで。

(この記事は2013年10月29日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」からの転載です)