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「楽天」対「Yahoo!のeコマース革命」決戦はまだゴングすら鳴っていない

2013年10月21日 23時20分 JST | 更新 2013年12月21日 19時12分 JST

「Yahoo!のeコマース革命」の旗印を掲げて、Yahoo!ショッピングのストア出店料(月額システム利用料)と売上ロイヤルティの完全無料化、また「ヤフオク!」のストア出店料(月額システム利用料)無料化という思い切った施策で、出店希望者からの問い合わせと申し込みがあったようです。しかし、Yahoo!が挑戦状を叩きつけたカタチになった一方の楽天は、楽天イーグルスの優勝もあって、平成25年9月度の流通総額が、速報値で前年同月比プラス42%の約1426億円となったことが発表されています。

いったいなぜ、Yahoo!のeコマース革命の影響を楽天は受けなかったのかに関心をもつ人も多いと思います。しかし、いかにデジタル時代の到来で変化の異次元のスピード化が起こってきたとはいえ、まだまだその影響がでてくるような段階にはありません。もしYahoo!が本気で楽天超えを目指したとしても、まだまだ超えなければならないハードルがあるからです。

この挑戦があったものの、楽天の三木谷社長が相手にしなかったというのもある意味当然かもしれません。日経の記事ではこう受け流しておられたようです。

ヤフー、「無料革命」の正体 敵は楽天にあらず  :日本経済新聞 :

「はっきり言って、影響はまったくないですね。動揺もない。(新規出店が減った、退店が増えたなど)数字面でも影響は皆無。今、楽天は絶好調ですからね。まぁ、あんまり分析もしてないっていうか。ヤフーさんはどうするんでしょうね......」

いかににわかに出店者が増えようが、まだまだ実力差は、その取引総額やシェアの差に応じて、あるいはそれ以上に存在しており、高い壁としてYahoo!ショッピングに立ちはだかっているのが現状だと思います。

リアルな世界でのショッピングモール間の吸引力の差は、それぞれの商業施設の集積度の自乗に比例するという話もありますが、おそらくネットの世界でもそれに近い感触が実際にはあるのでしょう。

同記事のなかで、日経は楽天の約4楽天市場を統括する高橋理人(まさと)常務執行役員の言葉が端的に楽天とYahoo!ショッピングの実力差を語っているように思います。

すでに約4万1000店中、約8500店がヤフーにも重複出店しているが、楽天の店舗は同じ事業者の『ヤフー支店』より概ね3~4倍の売上高がある」「楽天は『ECC』と呼ばれるコンサルタントを500人抱え、出店者と二人三脚で売り上げを伸ばす努力を日々続けている。出店料や手数料を安いと感じている店舗も多い

日経は、昨年から出店料・手数料完全無料の「新興ECモール」が急速に勢力を拡大してきたこと、しかも世界約2億6000万人、国内約5000万人のユーザーを抱えるLINEがインターネットショッピングへの参入を公表している、だからYahoo!が照準にしているのは、楽天ではなく、こういった新規参入してきた無料のショッピングサイトだろうという読みを披露しています。

あながち間違いではないでしょうが、しかしもし、日本一の出店者数、日本一の商品点数、日本一の流通取引総額を目指すとし、その動きに火が付けば、やがて楽天との抜きつ抜かれつの競争が起こってくることは容易に想像できます。

Yahoo!のeコマース革命で、ほとんど語られていないことがありました。「日本一の出店者数」、「日本一の取り扱い商品点数」はあくまで供給側の体制の問題です。それと日本一の取扱高の間には、乗り越えなければならない大きな課題が残っています。

それは「買い場」としての魅力です。「価格の安さ」か、「安心や信頼感」か、選びやすく快適で「買いやすさ」が他よりも優れているかです。

「日本一の出店者数」、「日本一の取り扱い商品点数」が揃えば、自動的に生まれてくるというわけではありません。「買い場」としての魅力はYahoo!が創造していかなければならないことです。

こう想像してみてください。隣接する大型のショッピング・センターがあるとします。一方は面積も広く、テナント数も多い、しかもショッピング・センターの魅力化をはかるさまざまな施策が打たれています。テナントへの指導も行われています。その成果で来店客も、伸びてきました。

もう一方は顧客が伸び悩み、売上もまったく伸びなくなりました。テナント数で負けている、揃っている商品も少ない、だからテナント料を無料化してどんどんショッピング・センターに出店してもらおう、そうすれば、売上高でも勝てるとショッピング・センター側が考えたとしたらあまりにも乱暴です。

もしテナントがワンサと押しかけ、通路も迷路のようになり、しかも清掃もなされない状態になれば、もう価格で勝負するしかなくなります。しかしそれはテナントに強要できません。

ショッピング・センター自体の「買い場」としての魅力でも上回らなければ、やがてはゴミの掃き溜めのようにもなりかねないのです。

Yahoo!のeコマース革命は、それも織り込み済みなのかもしれません。それはわかりません。テナントの信頼度や、検索しやすさや比較のしやすさ、またリコメンド機能の充実、アフィリエート広告などの顧客吸引の仕組みの強化など、克服しなければならない課題は山積みです。

どのようにYahoo!ショッピングやヤフオクのサイトを変えるイノベーションを起こしてくるのか、はたまた出店者数や取り扱い商品数を増やすだけなのかを見ないと、どのような競争状況が生まれてくるのかはまだ外からはわからないことです。

まだ結論を出すのは早すぎます。まだ新たな競争が宣言されたばかりで、リングのゴングすら鳴っていない状態なのです。結論を急ぎたい、気が早い方が多いのにも驚かされます。

(この記事は2013年10月21日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」からの転載です)

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