資材置き場で野球場を占拠するとは

開いた口がふさがらないということばがあるが、この件はそれにふさわしいような気がする。

開いた口がふさがらないということばがあるが、この件はそれにふさわしいような気がする。

2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は5日、主会場の新国立競技場に隣接する神宮球場(東京都新宿区)が大会の準備や運営に必要になるとして、同年に同球場を長期間にわたって借りる交渉を始めたことを明らかにした。

関係者によると、期間は20年5月1日から11月末までの7カ月間。その間、同球場を本拠とするプロ野球のヤクルトのほか、東京六大学野球や東都大学野球、高校野球などの試合ができなくなる可能性がある。

そういう必要があるなら当初から明らかにしておくべきだろう。何を今さらというしかない。

競技に使うというならまだしも、「野球が追加競技に採用されたら会場として使うということではなく、機材置き場など、大会準備のために必要な場所と考えている」というのは実にふざけた話だ。

そのために5月から11月までという、1シーズンまるまるを資材置き場のために使わせろということらしいが、野球ファンにしてみれば、こんな失礼な話はないではないか。これがあらかじめわかっていたら、招致の際の世論もいくばくかはちがっていただろう。

神宮球場ではプロ野球だけでなく、東京六大学野球や東都大学野球、高校野球なども行われる。オリンピック招致の際にはスポーツの裾野を広げるだの国民の健康増進だのといったお題目を掲げていたように思うが、他のスポーツの機会を取り上げて何がスポーツ振興か。

こんな話を今さら持ち出すなどというのは、関係する人たちがまじめに取り組んでいないか業務遂行に必要な能力が不足しているか、あるいはわかっていて隠していたかのいずれかであろうと思う。いずれにせよ、「ふざけるな」以外の感想はない。

どうしても近隣で資材置き場が必要だというなら、赤坂御用地か、新宿御苑でも借りてはどうか。ちょっと離れてもいいなら皇居も代々木公園もある。

首相がプレゼンする程度には政府が招致活動をリードした側面もあるのだから、政府所管ないし関連の土地でなんとかすべきだろう。それができないなら、他都市の既存施設を活用するとか、計画自体をもっと抜本的に考え直してはどうか。

東京の開催返上は過去にも例があるんだから今からでも開催を返上すればよい・・というのは極論だが、国民のスポーツの場や機会を奪ってまで行うほどのイベントではない、とは本気で思う。もう少しまともな代替案が出てくることを切に希望する。

(2016年4月6日「H-Yamaguchi.net」より転載)

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