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日比谷線3代目車両13000系-"世代"と"文化"の交流- インテリア編

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【エクステリア編は、こちらです

■16000系をベースにアレンジした車内

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ハイクオリティーの客室。

13000系の客室は16000系をベースに、日比谷線用にアレンジしており、東京メトロは、「オフィスをイメージしたシックで都会的なインテリアデザイン」と銘打っている。共通している部分は下記の通り。

・ロングシートの着座幅が460mm(03系は440もしくは450mm)。

・客室、乗務員室とも床が紺色。

・車両間貫通扉がガラス張り。

・乗降用ドアの幅が1,300mm(03系は3ドア車が1,400mm、5ドア車が1,300mm)。

・乗降用ドアの床面に黄色の識別表示をして、出入口を明確化。

・乗降用ドアの鴨居下にドアランプを設置(開閉時などに赤色LEDが点滅)。

・天井の形状は、東京メトロのシンボルマーク「ハートM」をモチーフにしたように映る。

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3画面のLCDは周囲を黒で囲っているので、目立ちやすい。

客室における最大の特徴は、乗降用ドアの鴨居上に設けられた3画面の17インチワイドLCDだ。

左側はインフォメーション、中央と右側は旅客情報案内(駅名や乗り換え路線案内など)を4か国語(日本語、英語、中国語、韓国語)で表示し、情報の充実と強化に努める。

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色彩だけで重厚さが漂う7人掛けロングシート。

ロングシートは座面をバケットタイプにして、着席区分を明確化しているが、03系(第10編成以降)に比べると、くぼみが目立たない。背もたれはくぼみがないフラットな形状である。実際坐ってみると、ほどよい硬さで心地いい。

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優先席の表地は"美しい海"に映るいやしの色彩。

一般席の表地は濃いグレーをベースに、星が散りばめられているような模様を添えており、夜空を描いたように映る。

一方、優先席は青をベースとし、吊り手はオレンジ(一般席はグレー)、その高さを1,580mmにしてつかみやすくしたほか、荷棚高さも一般部より50mm低い1,700mm(一般部1,750mm)とした。

袖仕切りの強化ガラスの隣と、車両間貫通扉の左右を木目調にして、車内がオアシスのような雰囲気を醸し出している。

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夏季の車内を彩る江戸切子「麻の葉」模様の荷棚(東京メトロ提供)。

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江戸切子伝統文様のひとつ、麻の葉文(江戸切子協同組合提供)。

強化ガラスの荷棚には、江戸切子「麻の葉」模様の一種を採り入れた。デザインについてはガラスの反射や光というエッセンスと、地元の伝統工芸という両面から生かしたという。麻は夏の季語なので、暑苦しさをいやしてくれる存在になるだろう。

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江戸切子は大伝馬町が発祥の地と言われており、13000系の荷棚は日比谷線沿線の歴史を乗客に語りかけているようだ。これからの荷棚はただ載せるだけではなく、"魅せる"時代へ変わってゆくのかもしれない。

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フリースペースは各車に1か所設置。

フリースペースは、1号車のみ中目黒寄り、ほかは北千住寄りに設けられ、車椅子、ベビーカー、スーツケースなどといった大型の荷物などに対応している。

戸袋から側窓にかけてクッションパネルが広がっており、立客の腰あてスペースとしているほか、側窓下にパネルヒーターを装備した。

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知れば知るほど奥深い間接照明。

室内灯はLEDの直接照明が「まぶしい」と、乗客から指摘が寄せられていたことから、東京メトロ初の間接照明となった。LED照明は横に照射し、頭上の反射板は波の角度が外側から内側へ向かって少しずつ変わり、うまく灯りの配分を変えて、客室を照らす。

ほか、訪日旅行者向けに無料Wi-Fiサービスも導入する予定だ。

■車内放送はステレオ

取材を進めていると、いつの間にかBGMが流れ出していた。車内にいることを忘れさせるほどの音質で、FM放送を聴いているような気分にさせる。

それもそのはず。13000系の車内放送は、ANVC高音質ステレオ放送システム(自動放送、BGM放送、インターホン機能などに対応)を採用したのだ。

日比谷線はカーブが多く、一部の乗客にとっては、金属同士のこすれる音(車両とレールの摩擦音など)が"騒音"にしか聞こえない。

13000系は乗客の声に応える車両として、操舵台車の採用で地下騒音を低減し、高音質ステレオ放送システムで聞き取りやすくしたのだ。

■東武直通に備え万全を期した乗務員室

乗務員室の内装は南北線用9000系以降、標準と化しているベージュ系で、落ち着いた雰囲気である。

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ホームドアの設置などに対応した13000系の乗務員室。

運転台は03系より位置を少し高くして、乗務員の安全性を向上。

ハンドルもオーソドックスな"昔ながら"のツーハンドルタイプ(左側は「マスターコントローラー」とも呼ばれる主幹制御器、右側はブレーキハンドル)から、ワンハンドルマスコン(これらをひとつにまとめたもの)となった。

東武や東京急行電鉄(以下、東急。現在は回送のみ直通運転を行なう)の車両に合わせ、両手操作式となっている。

計器類の多くはTIS(Train control Information management System:車両制御情報管理装置)というモニター画面に表示。このほか、空調や行先表示の操作などもできる。

特筆すべき点が2つあり、1つ目はホームドア設置に向け、第1・2編成のみATO(Automatic Train Operation device:自動列車運転装置)の準備が施されていること。第3編成から"標準搭載"となる。

ホームドアの多くは、停止位置から前後35センチ以内に停めないと開かない仕組みになっているので、停止精度を向上させるためだ。

参考までに、ATOは費用が高額なので、銀座線やJR東日本山手線などではTASC(Train Automatic Stop Control system:定位置停止装置)を導入しており、運転士自身が列車を動かし、自動でブレーキが作動して停止位置に停める。

2つ目は車内保温のため、1両片側4つある乗降用ドアのうち、1つを除いて締め切るスイッチ(3/4扉閉制御)が設けられたこと。

日比谷線では特に必要ないが、東武では伊勢崎線のせんげん台や春日部(下り列車のみ)などで、後続列車に道を譲るため、長時間停車する列車がある。

東武の通勤形車両の多くは車内保温のため、中間の乗降用ドアを締め切るスイッチがあるのに対し、日比谷線の歴代車両は未装備だった。

蛇足ながら、東武では野田線用の60000系が同様のスイッチを装備しているので、おそらく70000系にも採用されるだろう。

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13000系は03系より2編成多い44編成308両が投入される。

13000系はエクステリア、インテリアとも16000系以上にビビッドが強調されており、21世紀の都心にマッチしたデザインといえよう。

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☆コラム 東武70000系は2017年度デビュー

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70000系はただいま製作中(東武鉄道提供)。

東武は日比谷線直通の5代目車両として70000系を投入し、2017年度にデビューする予定だ。

エクステリアのカラーリングは鮮やかな赤と黒で、日比谷線直通車両の刷新を表現しているという。

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70000系の車内(東武鉄道提供)

インテリアに目を向けると、客室の床は乗降用ドア部分を除き、一般席部分をグレー系、優先席部分を茶系に色分けしている。

イメージパースを見る限り、優先席部分の吊り手はオレンジながら、ベルトに関しては別の色が用いられている。

なお、最近の東武車両は、優先席の吊り手ベルトをオレンジからブラックへの更新が進められている。

"出口への道しるべ"を示す黄色の識別表示は、60000系などと同様に乗降用ドアの戸柱と床に配した。

☆コラム 江戸切子

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菊繋ぎ文の文様(江戸切子協同組合提供)。

江戸切子はガラスの表面に彫刻を施した工芸品で、江戸幕府後期の1834年に江戸大伝馬町のビードロ屋、加賀屋久兵衛が金剛砂を用いてガラスの表面に彫刻したのがはじまりだという。

江戸切子に転機が訪れたのは大政奉還後の1881年、品川興業社硝子製造所(工部省の官営工場)が切子の指導者として、エマニエル・ホープトマン氏を招き、日本人十数人に技術指導をした。これにより技法が確立され、その後も技術の向上などもあり、大きく飛躍した。

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作品名:「変形もてなし鉢」、作者:大久保忠幸氏(江戸切子協同組合提供)。

1985年に東京都の伝統工芸品産業、2002年に国の伝統的工芸品にそれぞれ指定された。現在、江戸切子職人は約100人だという。

☆コラム 日比谷線初代車両3000系

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「マッコウクジラ」の愛称で親しまれた3000系(東京メトロ提供)。

1961年3月28日の日比谷線開業時にデビュー。先頭車前面のフロントガラスをパノラミックウィンドウにして、柔らか味のあるデザインとなった。

また、当時の最新技術を導入し、日本の鉄道車両では初めて保安装置にATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)を搭載した。

1962年には運輸省(現・国土交通省)の補助金を得て、ATO試験が実施されたのち、2編成で営業運転が行なわれた。

当初は2両編成だったが、東武との相互直通運転、日比谷線の全通及び東急との相互直通運転、乗客の増加で増結を繰り返し、1971年から8両編成化された。

03系の投入に伴い、1989年6月から廃車が始まり、1994年7月23日に引退。一部の車両は長野電鉄へ移籍し、1998年2月に開催された長野オリンピックでは、34年ぶり2回目の「オリンピック輸送」を務めた。

日本開催のオリンピックで2度観客輸送を行なった唯一の車両である。

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☆コラム 日比谷線2代目車両03系

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営団地下鉄初の「冷房つき新型車両」となった03系(東京メトロ提供)。

営団地下鉄は長年車両冷房の搭載を見送っていたが、1988年からついに"解禁"。

日比谷線は3000系の車齢が最長27年(当時)たつことから、車両冷房サービスと輸送力増強を兼ね、同年に03系が登場。7月1日にデビューした。

冷房装置搭載のほか、乗降用ドアの鴨居上に3色LED式の旅客情報案内装置を設置し、行先や次駅案内のほか、メトロカード(磁気式プリペイドカード)の宣伝が行なわれた。

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03系3ドア車の車内(東京メトロ提供)。

増備中の1990年から乗降時間短縮のため、5ドア車(1・2・7・8号車に連結)が登場し、20編成投入したほか、1992年から行先表示器を字幕から3色LEDに、1993年から制御装置を高周波分巻チョッパ制御からVVVFインバータ制御に変更。

その他、車内レイアウトの見直しなど、03系はバラエティーに富んだ車両となった。

銀座線用01系の引退決定や、丸ノ内線用02系、東西線用05系のリニューアルに伴い、独特の駆動音が耳に残る東京メトロの高周波分巻チョッパ制御は、03系を最後に消滅する。

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【協力:東京地下鉄、東武鉄道、江戸切子協同組合】

※都合により、「インテリア編」の掲載が遅くなりましたことを深くお詫び申し上げます。