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水木しげる氏追悼 ゲゲゲの境線

2016年12月11日 00時40分 JST | 更新 2016年12月11日 00時40分 JST

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漫画家の水木しげる氏が2015年11月30日(月曜日)に黄泉の国へ旅立ってから1年がたった。今回の記事は8年前の2008年に水木氏の故郷、鳥取県の境線沿線に乗り歩いた模様をここに転載し、あらためて偉大なる長寿漫画家をしのびたい。

■妖怪王国(ゲゲゲ)の境線

2008年9月5日(金曜日)7時50分頃、JR西日本境線富士見町(ふじみちょう)へ。前日、境線は米子―富士見町間を乗車しているので、この日は未乗車区間に乗ってみよう。

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幅の狭い単線のホームで列車を待っていると、デザインの異なる2つの駅名盤に気づく。1つ目は"通常版"で、境水道や美保湾をイメージしたように映るエメラルドグリーンを添えてある。2つ目は富士見町の愛称駅名「ざしきわらし駅」の"特別版"である。

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境線は『ゲゲゲの鬼太郎』のメインキャラクター4人を起用した車両があり、終点境港は水木しげるロードの最寄り駅だ。近年(当時)は鳥取砂丘よりも観光客が多いそうで、2005年3月17日(木曜日)から駅名盤も有名な妖怪を1駅1人紹介している。

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山陰本線の鳥取を5時28分に発車し、米子で進行方向を変えた普通列車境港行きが到着。気動車4両編成の車内は高校生中心の"通学列車"である。

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7時58分に発車。進行方向右側に後藤総合車両所(車両基地)が見え、ほどなく後藤に到着。ここまでは電化区間となり、境線を走行する電車はすべて回送だ。

普通列車米子行きと行き違う。どちらも乗客は高校生中心で、通勤客は思いのほか少ない。

乗車中のキハ47形は体質改善車で、ボックスシートはキハ120形200・300番代と同じ4つしかなく、ほかはすべてロングシート。ラッシュ時におけるスムーズな乗降を重視したのだろう。

私が乗車した車両のロングシートは、首都圏ではおなじみの着席区分を明確化したバケットタイプで、京浜急行電鉄2代目1000形なみの快適な坐り心地だ(ボックスシートもバケットタイプ)。また、ボックスシートからロングシートに改造された部分の多くは、側窓と側窓のあいだに仕切りが設けられた。ちなみに別の車両では、バケットタイプの座席と仕切りはなく、体質改善工事年度によって客室のレイアウトは異なる。  

高校生はどこの駅からでも乗降があり、一部は制服のない学校もあるようだ。特に弓ケ浜では乗降が多く、乗車率は少し減った。  

弓ケ浜発車後、巡回中の車掌に頼み青春18きっぷに日付印を押してもらう。以前はボールペンによる手書きをして、印鑑を押す車掌もいたが、現在(当時)はスタンプに統一された感がある。この列車は車掌が2人乗務しており、1人は前から2両目の乗務員室に陣取っていた。  

高校生の制服が男女別ながら、同じデザインであることに気づく。男子高校生はカバンを床に置いており、その刺繍(ししゅう)文字を見ると、終点境港まで乗りそうな気がしたが、のちに大ハズレとなる。  

乗車している高校生の車内マナーを見ていると、荷物を床に置く行為は首都圏と同じ。男子生徒1人は携帯電話を"いじくる"ことに夢中で、マナーモードにもしておらず、プッシュする音が車内に漏れていた。

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余子(あまりこ)で高校生は1人を除きすべて下車。停車時間を長くとっているせいか、高校生はあわてず、騒がず、ゆとりを持って列車を降りると、自然と長蛇の列を作り、集団登校と化している。あれほどにぎわっていた車内は一気にガラガラとなってしまい、回送列車と勘違いしそうだ。

上道(あがりみち)で残りの高校生1人下車。この駅名の漢字は山陽本線にもあり、「じょうどう」と読む。まさかJR西日本に"同一漢字、異なる読みのある駅"が存在するとは思わなかった。

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8時39分、終点境港1番のりばに到着し、境線全線完乗を達成。改札口は"妖怪の国への入口"となっており、観光客に対するウエルカムメッセージに映る。

■水木しげるロードを歩く

 

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境港で下車すると、『ゲゲゲの鬼太郎』のオンパレード。境港署境港駅前交番は「鬼太郎交番」という全国的に珍しい"交番愛称"がつけられている。カンバンのライトは目玉おやじとなっており、"遊びゴコロ満タン"だ。ホンモノの警察というのは空気が重く、常に緊張感が漂う印象があるので、"気軽な交番、愛される交番"を目指しているのだろう。事件や事故が常に起こらない町であることを切に願っていたが、この旅から1か月後の2008年10月13日(月曜日・体育の日)、境港駅前に掲示されていた、ねずみ男のカンバンが刃物で切り裂かれるという、悪質な事件が起こってしまったのは残念でならない。

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駅前のタクシーのりばでは、わかとり交通が鬼太郎のステッカーを貼り、屋根上のランプも目玉おやじを起用し、水木しげるロードを盛り上げている。蛇足ながらタクシーの多くは、昔ながらのフェンダーミラーを使っている。ごく一般のサイドミラーだと首が左右へ動くので、後部座席に乗っている乗客に"チラチラ自分を見やがって"という誤解を与えないためだ。ようはプライバシーに配慮しているのだ。

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水木しげるロードは1993年7月18日(日曜日)に誕生し、全国的に大きな反響を呼んだ。境港市役所では住民票の写しに『ゲゲゲの鬼太郎』の登場人物が使われたほか、JR西日本でも同年9月19日(日曜日)からキハ40 2095・2115を初代鬼太郎列車に起用させて営業運転を開始した。

2000年8月26日(土曜日)から2代目鬼太郎列車として、キハ40 2094とキハ33形全2両を起用。国鉄普通列車用気動車の象徴色といえるオレンジのまま、キャラクターをちりばめる方式に変更された。これに伴い初代鬼太郎列車のキハ40 2095・2115の塗装も、2代目鬼太郎列車に合わせた。

そして、2005年11月3日(木曜日・文化の日)から、キハ40-2118が3代目鬼太郎列車に充てられると、"それだけでは物足りない"といわんばかりに、2006年2月19日(日曜日)からねずみ男列車、同年7月8日(土曜日)からねこ娘列車、2007年2月11日(日曜日・建国記念日)から目玉おやじ列車を走らせた。

水木しげる記念館が2003年3月8日(土曜日)にオープンしたことも相まって、境港市を訪れる観光客が増加。2008年8月10日(日曜日)には、水木しげるロードの来客数が1000萬人を突破した。

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さて、水木しげるロードは朝早くから観光客の姿を見かけた。モニュメントには携帯電話で読み取れるバーコードを貼りつけており、水木しげるロードが何十倍も楽しめる。街路灯は目玉おやじ!! 夜になったら、肝試しの舞台にも使えそう?!  

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「きわめつけ」と言っていいのは、境港駅の近くにある水木ロード郵便局で、1985年4月1日(月曜日)の開局当時は「境港大正郵便局」という局名だった。現在の局名に改称されたのは2001年6月1日(金曜日)で、境港市が水木しげるロードに力を注ぎ、郵便局もそれに応えた格好と言えよう。

時刻は9時を過ぎ、水木ロード郵便局で、この日最初の旅行貯金。局内を眺めていると、同局は鬼太郎、境港中浜郵便局は目玉おやじ、境港東本町郵便局はねずみ男、境港竹内郵便局は砂かけ婆(ばばあ)、境港渡郵便局は児啼爺(こなきじじい)、境港外江郵便局は一反木綿の風景印の案内に目がいく。風景印をGETするには、はがきが必要で、1枚につき1局押してもらえる。意外と思われるかもしれないが、郵便局は観光客の来訪にも力を入れているのだ。

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水木しげるロードを歩くと、一部の店舗にスタンプが置かれており、様々な妖怪に会える。これは妖怪スタンプラリーで、境港市観光案内所などで『妖怪ガイドブック』を購入し、スタンプの置いてある店舗で地道に押し続ければ、最大20個以上で特典がある。

20個以上だと妖怪博士の認定スタンプが押され、20~35個だと非売品ののん気シールをGET。36個すべてだと妖怪スタンプラリー完走証をGET!! さらに隠岐汽船関連のスタンプ6個をプラスし、42個すべてそろえば、隠岐海産物セットがもらえる。これならば、朝から夕方まで歩きつくしたい。

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妖怪神社は入口に目玉おやじがグルグルまわり、清めの水でイキイキしている。もうちょっと歩きたかったが、スケジュールの都合で時間切れとなってしまい、水木しげるロードの完歩を断念し、境港駅へ戻る。

ところが到着直前で、目玉おやじ列車の普通列車米子行きワンマンカーが発車してしまった。ウカツにも「9時44分発」のところを「9時55分発」とカン違いしていたのである。  

この乗り遅れにより、スケジュールに狂いが生じてしまい、駅舎内のベンチで時刻表をにらめっこしながら、練り直す。

■滑走路の延伸に伴い、境線の一部区間で線路切り替えを実施

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練り直したスケジュールが決まり、1番のりばに普通列車米子行きワンマンカーが入線。それと同時に改札も開いた。この駅は改札を行なう時間が決まっている。

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ホームを歩いていると、スロープ入れに目がいく。スロープは車椅子の利用客に対応したものである。気動車の多くはステップつきなので、車椅子の乗り降りは容易ではなく、"橋渡し"というふうにはいかず、"坂道"となってしまう。ステップつき車両で車椅子の乗客が乗り降りした姿を見たことはないが、慎重に行なわないと事故につながってしまうので、ステップレスを原則とした車両作り、ホームと車両の段差がない環境の完全整備をお願いしたいものである。

 

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10時30分、3代目鬼太郎列車の普通列車米子行きワンマンカーが発車し、直線を走る。境港周辺は水木しげるロードの"大ヒット"もあってか、栄えているようで宅地も多かったが、上道から進行方向の左右とも、緑あふれるローカル線らしい車窓となる。  

高松町から畑が多くなり、中浜に到着。普通列車境港行きワンマンカーと行き違うため小休止。この駅は行き違い設備を新設し、隣の下りホーム、レール、バラストは初々しく、枕木はPC(プレストレストコンクリート)製を使用。元からある上りホームは木製なので、時代を感じさせる。行き違い設備は片開き分岐器を採用し、上り列車は直線に対し、下り列車は曲線を通る。

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普通列車境港行きワンマンカーは、紅一点のねこ娘列車で到着。車両のねこ娘は目を輝かせており、鬼太郎はその輝きをどう受け止めていいのかわからない表情を浮かべているように映る。目玉おやじはただただ見守るしかない。

中浜を発車すると、わずか500メートルで米子空港へ。"空港駅"では珍しく、ホームは1面のみの無人駅だ。

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米子空港を発車すると、フレッシュなレール、バラスト、PC枕木が敷設された新線を快走。周辺の工事も進んでおり、境線は水木しげるロードの玄関口のほか、空港アクセス鉄道の役割も担うだろう。臨時快速〈みなとライナー〉を定期化して、1時間おきに運行してみてはどうだろうか。  

境線は2008年6月15日(日曜日)、米子空港の滑走路延伸工事にともない、中浜―大篠津町(おおしのづちょう)(旧・御崎口(みさきぐち))間を直線から曲線主体の新線に切り換えられた。これにともない、大篠津は移転して「米子空港」、御崎口は「大篠津町」にそれぞれ改称。大篠津にあった行き違い設備を中浜に移された。  

駅間における営業キロは、中浜―米子空港(旧・大篠津)間は1.3キロから0.5キロ、米子空港(旧・大篠津)―大篠津町(旧・御崎口)間は0.8キロから1.6キロへ変更されているが、境線米子―境港間の営業キロは現行通りである。なお、乗車区間によっては運賃が変わる。  

米子空港の滑走路拡張が完成すると、ヒコーキも増便されるだろう。寝台特急〈サンライズ出雲〉やエル特急(現・特急)〈やくも〉などにとっては脅威の存在になりそうだ。

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弓ケ浜では、下りホームの上屋にカサが吊るされていた。これって、ホンモノの妖怪がやっちまったのだろうか? と思いたくなるような光景だ。

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河崎口を過ぎると町を軽やかに走り、後藤に到着。先ほど乗り損ねた目玉おやじ列車(普通列車境港行?