日本出身力士が優勝しても、モンゴルの時代はまだまだ続く

今、横綱にもっとも近い力士は、今場所途中休場の大関照ノ富士だ。

■おめでとう琴奨菊

大相撲初場所は、大関琴奨菊が"ひたすら前へ"と一心不乱に攻め続け、31歳11か月で初優勝。奇しくも先場所に続き、休場明けの力士が天皇賜杯を抱いたほか、今場所の各段優勝力士はすべて日本出身者で占めた。

2006年初場所に優勝した大関2代目栃東の写真額。

日本人力士が幕内最高優勝に輝いたのは、2012年夏場所の旭天鵬以来4年ぶり、日本出身力士にしぼると、2006年初場所の大関2代目栃東以来10年ぶり。大相撲ファンでなくても、日本出身力士の優勝をずーっと待っていただけに、喜びと感激に満ちあふれていたと思う。特に琴奨菊の優勝を誰よりも喜んだのは、永遠のライバル、豊ノ島だろう。自身が「優勝を逃した悔しさ」よりも、「親友が優勝した嬉しさ」のほうが強く、花道で心から祝福する姿勢に感銘を受けた。本心は優勝パレードの旗手として、琴奨菊の隣に坐りたかったと思うが、同じ佐渡ケ嶽部屋の琴勇輝が務めた

残念なのは、一部のマスコミが琴奨菊の優勝を「快挙」と報じたこと。関脇以下なら国籍に関係なく「快挙」といえるが、大関は"千秋楽まで優勝争いをする"地位なのだから、失礼きわまりない。

■現時点、世代交代のキーマンは照ノ富士

"日本出身力士の復権は、まだまだ先"と私は見ている。琴奨菊はもうすぐ32歳、同じ大関の稀勢の里、豪栄道は本年で30歳をそれぞれ迎え、年齢的に"「横綱」という名の頂点"に立つのがますます厳しくなるからだ。また、「大関候補」といえる力士は、国籍に関係なく現時点いない(逸ノ城が危機感をもって巻き返せば、話は別だが)。

今、横綱にもっとも近い力士は、今場所途中休場の大関照ノ富士だ。脇が甘い欠点はあるものの、相手が充分な体勢でも、根こそぎきめ出す力強さがある。ヒザや肩のケガを治し、体調を整えば、年内の横綱推挙もあり得る。現役3横綱が全員30代を考えると、照ノ富士は"世代交代のキーマン"なのだ。

日本出身力士の優勝が"一過性"にならないためにも、琴奨菊のさらなる活躍、今場所成績不振に終わった稀勢の里、豪栄道の奮起、今や「期待の新星」といえる正代と御嶽海の成長、来場所の十両落ちが確定的な遠藤と輝の巻き返しを期待したい。

注目記事