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『はじまりはヒップホップ』平均年齢83歳のヒップホップグループが教えてくれる人生で大切なこと

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(c) 2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

ドキュメンタリーは題材が命であるが、これほどシンプルで力強い題材は滅多になりだろう。勇気がって、友情があって、ユーモアもある。新しいことにチャレンジすることはいくつになっても素晴らしいことだと、いろんな場面で言われるが、こんなに心に染み入る形で伝えてくれる作品は希少だ。

ドキュメンタリー映画「はじまりのヒップホップ」は平均年齢83歳の世界最高齢のヒップホップグループ「ヒップ・オペレーション・クルー」が、ラスベガスで開催されるヒップホップの世界大会を目指す過程を追った作品だ。

ニュージーランドの小さな島で生まれたこのグループはやがて、世界の若者から喝采を浴びることになる。新しいことへの挑戦は人生をいくつになっても輝かせてくれることを教えてくれる。現在クラウドファンディングで本人たちを日本に来日させる計画も進行中だ。



メンバー全員腰(ヒップ)の手術(オペレーション)の経験者


舞台となるのは、ニュージーランドの東側に位置するワイヘキ島。人口は8千人たらずで、ブドウの栽培が盛んでワイナリーが島中にあるのどかな島だそうだ。この島に住むビリー・ジョーダンという女性が、人生の終盤に差し掛かっった老人たちを集めてヒップホップグループを作ろうと提案する。おばあちゃん子だったと自ら語るビリーは、島の老人たちの世話役を買って出ていて、彼らとの交流を生きがいにしている。

老人たちはヒップホップに触れたことはほとんどないにもかかわらず興味を示したのは、きっとビリーに対する信頼だったのだろう。グループ名は「ヒップ・オペレーション」。メンバーみんな、腰の手術経験者だから、というユーモアあるネーミング。年をとって身体が思うように動かないことは、ネガティブなことだが、ユーモアによってネガティブを反転させている。こうした前向きな姿勢が映画全編で感じられる。

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(c) 2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

人生も残り僅かといってもいい彼らが新たに見つけた目標は、ラスベガスで開催されるヒップホップダンスの世界大会への出場。無謀とも思える挑戦だが、人生を全力で楽しむには新しい世界に飛び込むことが肝要だ。彼は全力で楽しんでいる。

グループ最年長のメイニー・トンプソン(94歳)は、「94歳ならガタが来て当然、でも脳が衰えるのは困る」と言う。その通りだと誰もが思う。しかし実際にそれを実人生において実践するのは本当に難しいことだと思う。老人じゃなくても人生守りに入ってしまう人だってたくさんいる。いくつになっても新しいものに対してオープンな姿勢を持ち続けることは本当に素晴らしいことだ。

監督のブリン・エヴァンスは、「ドキュメンタリー映画を制作すると、大抵いつも未知の領域へと連れて行かれる」と語る。監督の作品作りに対する姿勢もまたヒップ・オペレーションのメンバーの人生に対するそれと相通じるものがあるのだろう。映画全編、対象に対する愛情で溢れている。

 
本作はとてもシンプルで力強い魅力を放っている。人生には遅すぎることなんてないのだと、生きる勇気をもらえる作品だ。

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(c) 2014 Rise And Shine World Sales / Inkubator Limited / photo_Ida Larsson

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