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10年越しの企画が遂に実現。『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』マイウェン監督インタビュー

2017年03月22日 17時23分 JST | 更新 2017年03月22日 17時23分 JST

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© 2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR - STUDIOCANAL

近年女性監督の活躍が目覚ましいフランス映画界から、またひとつ女性監督による秀作が誕生した。女優でもあるマイウェンの監督作「モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由」が3月25日から公開される。

スキーの事故で足を負傷した女性トニーが、10年間を愛し、憎みあったジョルジオとの遍歴を振り返る。偶然再開し、結婚し子供も授かった2人だが、ジョルジオの身勝手さに翻弄されながらも離れきれないトニーの心情とともに展開される、大人の恋愛映画だ。

2015年のカンヌ国際映画祭で、「太陽のめざめ」の監督として知られるエマニュエル・ベルコに最優秀女優賞をもたらした本作、知性的で堅実ながらも自分にない魅力を持つジョルジオにどうしても惹かれてしまう複雑な心理模様を引き出したマイウェン監督の手腕も高く評価された。

近年、女優業だけでなく監督としても精力的に活動するマイウェンにインタビューする機会を得た。

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10年前から考えていた企画がようやく実現

――この映画は、現在のトニーがリハビリ中に過去を回想するという構成になっていますが、この構成にしたのはなぜですか。

マイウェン:実は私自身は、それを分析する立場にないと思っています。なぜそういう風に過去と現在を分けて見せたいと思ったか自分でもよくわからないんです。私は自分で見たいと思ったシーンを感覚的に作っていくので、分析してこのシーンはこういう意図を込めようとという風にはあまり考えないんです。

――僕はすごく良い構成だと思いました。映画の中心となるトニーとジョルジオの過去のシーンはハッピーなシーンばかりではないですが。リハビリ中のトニーは楽しそうにしているシーンも多かったので、過去つらい経験があっても今は笑えているというのは観ていて癒やされました。

マイウェン:ありがとうございます。

――リハビリセンターの医者が言う「膝の痛みは心の痛みと繋がっている」という台詞がすごく面白いですね。これはどうやって思いついたんでしょうか。

マイウェン:これは苦痛について語っている本を読んだ時に出会った言葉です。身体の中で唯一後ろにしか曲げられない部分である膝が人間の過去に結びついているんだというフレーズを読んだ時、これは私のストーリーに完璧に合致していると思ったんです。

実は、10年間こういう作品を撮ろうと思ってきたけども、なかなか前に進めずにいました。それがこのフレーズに出会った時に、これこそが私の求めていたストーリーの鍵になるものだと感じたんです。

――ジョルジオ役にヴァンサン・カッセル、トニー役にエマニュエル・ベルコという素晴らしい役者を選ばれていますが、2人ともとても役柄にマッチしていました。

マイウェン:ヴァンサン・カッセルは本当にジョルジオにピッタリで、役を作り込まずとも、ジョルジオのように愉快でいい男だし、とても魅惑的でした。

エマニュエル・ベルコに関しては、トニーという人物とは様々な面で違う人なので、作り込む必要がありました。成熟してはいるけれども、セクシーなタイプではない。そして成熟した女性でありながら、子ども心のピュアな部分というのを持っているという風な女性にしたかったんです。

© 2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR - STUDIOCANAL

――トニーはリハビリ中、若い人種の違う男性たちと親しくなっていきますね。彼らはトニーにとってどんな存在だったんでしょうか。

マイウェン:彼らとトニーの間には、リハビリという共通の目的と苦労を共有しています。彼らはトニーとは、性別も社会的な階級も考え方なども違うでしょうけど、ああいう風に友情を築くことができる、そういうものに私は人生の豊かさを感じます。

異なる人間同士から生まれるポジティブな火花というか、そういうものを描きたかったんです。そしてそれはトニーとジョルジオの関係にも言えます。あの2人も様々な点で正反対ですが、それでも愛し合えるんだということを描いています。

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フランスの映画業界もまだまだ男性優位

――フランスでは女性監督の活躍も目立つようになってきました。日本でも女性監督は増えてはいますが、まだまだ少数なので、フランスを見習うべきだという意見も多くあるのですが、フランスの映画業界では待遇など男女平等が実現されているのでしょうか。

マイウェン:フランスでもまだまだ男性監督の方が多いですね。映画作りというのは社会を反映するものだと思います。

世界はやはりいまだ男性優位の社会なので。1980年代のフランソワ・トリュフォーのインタビューを聞いた時、その当時、活躍している女性監督はアニエス・ヴァルダくらいで、トリュフォーはもっと女性監督が増えるといいという話をしていたんですが、40年経って女性監督の数自体は増えました。

それは社会全体が女性に門戸をより開くようになり、女性の社会的地位が向上したので、それに伴い女性監督も増えてきていますが、まだまだ男性優位の業界だと思います。

フランスでも女性が大統領になる時代が来れば、女性監督の数も飛躍的に増えるかもしれませんね。国民戦線のマリーヌ・ルペンの名前が大統領候補に挙がっていますが、まだ彼女が大統領になれる可能性は低いと思っています。(注:2月の世論調査では、ルペン氏がトップと報道されている)