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フィリピンの麻薬汚染の現実描く「ローサは密告された」

2017年07月31日 00時48分 JST

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昨年のフィリピンのドゥテルテ大統領の誕生は、米国のトランプと同じく諸外国に衝撃を与えた。その過激な発言と強硬な姿勢、とりわけ超法規的殺人司令ともとれる、麻薬撲滅のための強硬姿勢は人権団体からも問題視されている。

しかし、そうした諸外国の評判とはうらはらにドゥテルテ政権のフィリピン国内での支持率は非常に高い。歴代政権と比較してもかなりの高支持率を記録しており、彼の政権運営にフィリピン国民は満足しているかのようだ。

中国からの経済支援を獲得するなど、外交・経済問題など様々な要因があるだろうが、海外の人権団体が問題視する麻薬撲滅に対する強硬姿勢も、長年麻薬に蝕まれてきたフィリピン人にとっては支持する要因になっているようだ。(参照

ドゥテルテ大統領がどんな現実を変えようとしているのか、日本人の我々には想像が難しい。あれほどの過激な活動をしなければ改善できないほどの腐敗した現実があるということなのかもしれない。それは一体どのような状況なのか。

「ローサは密告された」は、そんなフィリピンの現実をリアルに伝える映画だ。ドゥテルテ政権誕生以前の、フィリピンのスラムのコミュニティがいかに麻薬に汚染されているか、そしてそれを取り締まる側の警官の腐敗の現実を切り取っている。



普通の雑貨屋が日々の生活のために麻薬を売る

ブリランテ・メンドーサ監督は、本作の構想を4年前に思いついたという。

「ある売人家族の一人と知り合ったのですが、警察との関わり方に興味を持って映画を企画しました」

メンドーサ監督は、企画の発端となった家族について、言葉を明確にしなかったが、氏の映画哲学は「映画は現実の一部を切り取るように作られるべき」というもの。常に緻密な取材にもとづいて作品を作るそうだ。答えは映画の中にあるのかもしれない。

本作は、フィリピンのマニラのスラム街で雑貨屋を営む家族を中心に展開する。雑貨を売る傍ら、この家族は麻薬を売って生計を立てている。特段裏社会の人間という風には見えない。そこが本作のポイントだろう。この地域では市井の人々が生活のために気軽に麻薬を売る現実があるのだ。

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ある日、警官がこの家族を捕まえに来る。妻のローサと夫のネストールは連行され、警察署で刑務所に行きたくなければ20万払うか、他の売人を密告しろと取引を持ちかけられる。ローサたちもこのようにして誰かに密告されたのだ。

ローサ一家に大金を用意するのは難しい、となると、取りうる手段はただ1つ。しかし、持ちつ持たれつで成り立っている貧しい地域コミュニティで、だれを裏切ればいいというのか。しかし、自分はすでに誰かに裏切られている。助かるためには誰かを売らなければならない。

こうして密告の連鎖によってコミュニティの信頼は崩壊してゆく。麻薬の流通量も決して減らないだろう。警官は押収した麻薬を横流しする。

本作で描かれるのは、麻薬によって生活を支えられてしまっているスラムの実態と、そこにつけ込む警察権力の腐敗だ。かなり生活の深い部分にまで麻薬が入り込んでしまっているのがよく分かる内容になっており、これを解決するのは容易ではないことがよくわかる。

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ドゥテルテの政策でスラムの麻薬事情は改善している?

本作で描かれたような困難な現実は、ドゥテルテ大統領の政策によってどのような変化があったのか。メンドーサ監督はこう言う。

「この映画で描いたような事態が100%根絶されたわけではありませんが、少なくとも私の取材の限りではかなりかなり減っています」

ドゥテルテ当選後、フィリピンの治安は改善されたと感じる国民は81%にも上るという。

ドゥテルテを巡っては欧米メディアは多くを報じている。しかし、それらの情報に触れるだけではわからない現実を本作は伝えてくれる。過激な荒療治を辞さないドゥテルテ大統領、それによって多くの死者が出ている現実。そして麻薬問題を放置してきた長い間に麻薬絡みで死んだ人も多いだろう。メンドーサ監督は、「フィリピンの問題は一朝一夕で解決できるものではない」と語っていた。その根の深い、過酷な現実をこれ以上ないほどにリアルに切り取った傑作だ。