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元女子大生起業家が「『若いうちから起業した方がいい』とは思わない」と語るわけ

2015年07月01日 21時27分 JST

休日もモデルハントに明け暮れる親友の美容師を見た女子大生が、そうした美容師の負担を軽減するため立ち上げた、サロンモデルと美容師のマッチングサービス「Coupe(クープ)」。

企画とプログラミング開発を担当するのは代表の竹村恵美氏。開発当時まだ大学生だった竹村恵美氏は、サービスを継続するためにIT業界の内定を辞退し2014年12月に法人化を決意。今年2月にサイバーエージェントベンチャーズ(以下、CAV)から資金を調達し、サービスの黒字化に向け奔走している。

「日々、投資家とのやりとりから学ぶことが多い」と話す竹村氏に、CAVに投資されるまでの経緯や法人化から半年が経った今のサービスの状況や課題について話を伺った。

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竹村恵美氏。株式会社Coupe代表取締役CEO。2013年11月3日に「Coupe」サービスを公開。学生時代の2014年12月に起業し、2015年2月にCAVから資金調達を行うと同時に「Coupe」を正式にローンチした。

「大失敗しても箔がつく」の言葉で心が軽くなった

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現在登録されたモデル数は240人を超える。

講座に通って取得したプログラミングスキルを生かし、Webサービス「Coupe」を自身でプログラミングした竹村氏。彼女がCoupeを法人化したのは、まだ大学4年生だった2014年12月のこと。しかし創業間際まで、「就職」か「起業」かの選択肢で迷っていたのだという。

「行きたかったIT企業からの内定をいただいたので、Coupeで起業をするかはとても悩みました。結果として起業しましたが、そこに踏み切った大きな決断のポイントは2つありました。

1つ目は、『もし大失敗しても、起業のほうがチャンスだよ』と相談した皆さんにいわれたことです。学生時代お世話になっていたUberの社員さんやGoogleの社員さんからも同様のアドバイスでした。『起業して成功しなよ』ではなくて『大失敗しても箔がつくし、チャンスでしょう』という、自分とは逆の目線でのアドバイスをもらって、心が軽くなったんです。

2つ目は、今の事業を現状のままでは黒字にできないと悩んでいたところ、『最初はみんな赤字だから投資をしてもらうんだよ』とアドバイスを受けたことです。その話を聞いて、サービスを軌道に乗せるためには、マネタイズ戦略などの知見を持つVCからの協力を得ることが必要なのだと考えました。そこで、VCからの協力を得るための活動をし始めたところ、どうやら500万円は投資を受けられそうだという手応えがありました。投資を得られることが確定する前でしたが、背水の陣に自分を追い込むつもりで内定を辞退しました」

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ビジョンに共感してくれた投資家

CAVと話がまとまる以前にも投資の話があったという竹村氏。最初のVC企業とのやりとりでは、忘れられないほど悔しい失敗をしたという。

「2014年8月にお問い合わせフォームから『出資したい』という連絡をいただいたんです。でも、当時の私たちは起業も考えていなかったし、出資の『し』の字も、株の『か』の字も知らないような感じだったので『この人たちはお金をくれるのかな? やったー』みたいに盛り上がって(笑)。とりあえず『起業のファイナンス』という本を読んでから会いに行きました。それでも先方の口から出る言葉の意味が全然わからなくて、見当違いな質問ばかりしてしまいました。先方も次第に『あ、この子たちはただの学生だ』という表情になっていき、私は帰りの電車で悔しくて大泣きしてしまいました。

その日から投資や起業について猛勉強を始めたんです。そのおかげで11月の段階では、最低限の知識を身につけて投資家さんと話ができるようになりました」

苦い経験を糧に、資金を得るためにVC企業に8〜9社に相談を持ちかけた竹村氏。そのなかでもCAVの反応はほかと違った。

「CAVは、プレゼンを見ていただいただけで熱意に共感してくれた唯一のVCでした。それまではいろんな投資家の方に『市場規模が小さい』といわれてきて、まともに話を聞いてもいただけない経験を何度もしていたのですが、CAVの方々は美容師が抱えている問題について、話を真剣に聞いてくれました。他の投資家と違ったのが、私たちの『モデルハントの文化を変えたい』というところにすごく反応してくれたという点です。

後日、CAVの担当者に誘われてCoupeの共同創業者とともにご飯に行きました。その日は面談というよりは、Coupe以外のお話、例えば生い立ちの話とかもたくさんして、『楽しい時間だったな』と思っていたんです。そしたら食後のコーヒーが来たタイミングで『実は投資を考えていて...』と突然切り出されてびっくりしました。『こういう感じでくるのか!』と。

CAVの方がサービスに共感してくれているのもうれしかったですし、自分が考えるバリュエーションの金額とCAVのほうが思う金額がぴったり同じだったり、在学中に資金調達を終わらせたいこともあり、その場で即決OKを出したかったんですけど、CAVの方から『いったん持ち帰ってからでいいよ』といわれました(笑)。それで翌朝にも気持ちは変わらず『よろしくお願いいたします』と連絡し、投資していただけることになったのです」

痛感する成長の必要性。そしてマネタイズという最大の課題解決に向けて

こうして会社組織化したCoupeだが、メンバー6人全員が23歳以下で、会社勤めの経験者は1人もいないという。今、チーム内における意識変革と成長の必要性を痛感しているようだ。

「これまでは代表といっても、正直なところ学生の傍ら趣味でやっている気分も、ないわけではなかったです。でも資金を入れてもらって会社になった瞬間から、会社役員として『自分にはこのCoupeしかない』という決意が生まれました。だからこそ、チームにはキャッシュフローの大事さを伝えたり、社員が今抱えている仕事とそれにかけている時間に対して、どれだけの価値を生みだしているのかを考えさせるなど、マネジメントをするようになりました。若い企業でもあり、スタッフの年齢的に経験値が低いことに関しては、弱みだと思います。マネタイズのプランから、メールの文章やスケジュールの組み方といった基本的なことまでも、CAVの方々に指導をいただきながら、今も学んでいる最中です」

弱みや足りない点を自認する一方で、若い企業ならではの強みも感じているという。

「自分で起業しておきながら、『若いうちから起業したほうがいい』とは、全然思わないです。でも、私たちは幸い同年代のサロンモデルと美容師を相手にしているので、彼女たちの気持ちに共感できます。もしある程度年齢と経験を重ねてから起業したら、今の自分たちのように10代20代のユーザーたちの気持ちに心底共感するのは難しいのではないかなと思います」

そんなCoupe最大の課題はマネタイズ。その解決に向け「まだ全容は明かすことはできないのですが」と前置きしながらも、「新しい動き」を始めていると話す。

「美容師のために始めたCoupeのサービスですが、運用するなかで徐々に『美容師のため』だけではなく、『登録してくれるモデルが個人で仕事を取ってこられる、個人が輝ける場を用意したい』という気持ちが強く出てきました。そうした今のビジョンとCoupeの仕組みの汎用性を生かして、もっと個人が自分をブランディングして輝くための手助けをできればと考えています」

現在マネタイズに向け竹村氏が全力を注ぎ込んでいるという、「個人が輝くための」Coupeの新しい動きの根本には、竹村氏の学生時代に培った価値観が投影されているようだ。

「私は高校時代の3年間をスイスの田舎の寮で過ごしていたのですが、当時は学校という1つのコミュニティーでしか生きる術がなく閉塞感を感じていました。日本に帰国して大学に入ってからは、大学のほかにもサークル、インターン先のログバー、アンバサダーを務めていたUberなど、さまざまなコミュニティーとつながり、さまざまな人と出会いのなかで、いろいろな仕事をするようになりました。そしてCoupeを始めることもでき、出会った方々のアドバイスのおかげで起業をして、さらにたくさんの人たちと知り合えるようになったのです。

人生を楽しくするためには、『自分の周りにどんな人たちがいるか』が大きく影響するはずです。だから『副業でもいいからいろいろな仕事にチャレンジできる環境を作れたら、新しいコミュニティーでたくさんの人に出会えるし、それによって人生がもっと楽しくなるはず』と思っています。この考えのもと、株式会社Coupeの新しい動きを進めていきたいです」

溌剌とした口調で自分の事業のビジョンを語ってくれた竹村氏。まだまだ始まったばかりのCoupeの挑戦に注視したい。

(2015年6月30日「HRナビ」より転載)