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本当の"動画元年"がいままで来なかった理由-元LINE森川氏が分析するメディア業界の現状

2015年05月09日 15時04分 JST | 更新 2015年05月09日 15時04分 JST

2014年12月にLINEの代表森川亮氏が突然の辞任を発表し、IT業界では森川氏の次の動向に大きな注目が集まっていた。そして2015年4月、森川氏は女性向け動画メディア「C CHANNEL」を立ち上げた。オフィスは多くのファッションショップが並ぶ原宿の神宮前。今回、森川氏になぜ今動画メディアを立ち上げたのか、どこに勝算を感じているのかなどについて話を聞いた。

akira morikawa

森川亮氏。1967年、神奈川県生まれ。1989年に筑波大学第三学群情報学類を卒業後、日本テレビ放送網株式会社へ入社。ネット広告や映像配信、モバイル、国際放送など多数の新規事業立ち上げに携わる。2000年にソニー株式会社へ入社。ブロードバンド事業立ち上げなどに携わる。2003年にハンゲームジャパン株式会社(現:LINE株式会社)入社。2007年に同社の代表取締役社長就任。2011年6月に「LINE」のサービスを開始。わずか1年半でユーザーが1億人を突破する、急成長を主導。2015年3月任期満了に伴い、同社顧問およびC Channel株式会社代表取締役社長に就任。

動画で最初から世界照準のコンテンツを

まずは、LINEを辞めて動画メディアを始めた経緯について伺った。

「僕は日本テレビ出身なので、もともとメディア畑の人間なんです。日本テレビ時代には、新規事業として国際放送という海外展開の仕事もしていました。そのとき日本テレビは、海外で放送できる番組が少なくて。結局、当時ジャイアンツ戦とニュースを持って行ったのですが、日本が日本人向けにやっているものが海外にそのまま流行することはない、海外向けに作るのであれば、初めからそうした照準を合わせたコンテンツを作るほかないと思っていました。LINEでグローバルに仕事を展開させていくなかで、新しい領域でグローバルに照準をあてたものを作りたいと、次第に感じるようになったんです」

そこで、現在急速に伸びる動画メディアの市場に森川氏は目をつけた。

「世界基準で見れば動画業界には、大きなうねりを感じています。一方、国内の動画メディアは現在オタクをターゲットにしたものばかりだったので、そうではなくてもっと普通の若い人が出るようなものでやりたいと思ったことが大きいですね。

というのも日本国内の10代〜20代からスターらしいスターがほとんど出ていない、あまり元気がない、ということが気になりました。これは人口分布の事情で、国内のマスメディアが、それより上の世代をターゲットにしているという事情と大きく絡んでいる気がしています。だから、若い層をターゲットにしたメディアで、若者たちからスターが生まれるような仕組みを作りたいなと思ったのです」

動画メディアがここ数年流行するとずっと言われてきたなかで、国内ではなかなか定着しなかった理由を森川氏は、次のように分析する。

「1つはマーケットサイズとかビジネスプランの問題だと思います。日本の場合、目の前のマーケットを考えてどうやってもうけるかという話になるのですが、国内という小さいパイを奪い合うのではなくて、最初からグローバルスタンダードのメディアを作ってしまえば、マーケットも世界規模になるかなと思っています。

海外でいろいろ仕事してみると、結局、相手の土俵では勝てないということに気づきました。もちろん勝つ場合もありますけど、それよりは日本の土俵で勝負した方が勝ちやすい。やっぱり日本に関しては日本人が一番詳しいわけですから、そこの良いところをわかりやすく伝える方が勝ちやすいですよね。

世界の人が興味を持つ日本のコンテンツとは何かと言われれば、『食文化』、『KAWAII文化』。これらは既に世界に発信されていて、認知度がある。今、ASOBISYSTEMさんが、きゃりーぱみゅぱみゅをはじめ、グローバルスタンダードとなるコンテンツを発信していますから、一緒に組んで仕掛けたいなと思ったんです」

ナショナルクライアントが出稿できるプラットフォーム作りが、動画メディア普及の鍵

「今ネットで動画配信系のメディアだと、どうしても変わった人ばかりが目立ってしまっています。そうなるとプラットフォーム全体も変に思われてしまって、ナショナルクライアントと呼ばれる大きなスポンサーは、そこに広告を出すに至らないということが繰り返されてきたんですよね。それが動画メディアがはやると言われながらも成功してこなかった理由だと考えています。

だからこそ『C CHANNEL』ではもちろんタレントさんやモデルさんも参加していますが、それ以外にもっと普通の女の子、といったら語弊がありますが、街中を歩いている綺麗な子や、これから有名になりたい子たちが、『クリッパー』として自分が紹介したいものをスマホで動画撮影をして紹介してもらうというスタイルにしました。

いろいろと新しいことのために動き出すと、面白いことは起きるもので、ASOBISYSTEMの目の前の物件がたまたま空いたので、契約しました。C CHANNELとASOBISYSTEMのメンバーでやっているLINEグループがあって、今日の良かったことなどを共有したりしています(笑)。ガラス張りで真向かいなので、すれ違うとき手を振ったりしあったり、すごく楽しいですよ。この場所があれば、毎日いろんな人たちが遊びに来てくれるので」

akira morikawa

これからのコンテンツはとって出しの生感、鮮度が重要

先ほどの「クリッパー」とは情報を発信するモデルやタレント、そして感度の高い一般の女の子たちのこと。クリッパー数は現在およそ100人。ファッション、フード、トラベルといったテーマに沿っていれば、何を紹介するか、何本コンテンツを更新するかはおのおのの裁量に任せているという。

「今の10代〜20代は特に『お金をもらって言わされているか』『自分で本当に話したいことを話しているかどうか』にすごく敏感。だいたい顔を見ればわかってしまうので、自ら何か伝えたいものや紹介したいものがある人にやってもらいたい。そういう人たちにスマホの動画で自分たちのこと発信してもらっているのです。本人たちが楽しんで更新している方が、見ていて面白いですからね」

何を発信するかは、各人の裁量に任せていて、コンテンツのクオリティーをどのように担保するのだろうか。

「テーマを『フード』『トラベル』『ファッション』と決めているので、そこまで各人がずれるということは心配していないですね。映像の質に関しては、動画の映像が4Kで見られるかどうかとかはあまり関係なくて、一番大事なのはそこにリアリティーがあるかどうかだと思っています。つまり、ちょっと映像がブレていても、その子が伝えたい情報を楽しんで更新していることの方が重要で、このプラットフォームはそうした生の鮮度ある情報を、瞬間ごとに切り取れる集合体であってほしいなと思っています」

c channel

現在およそ10人のスタッフが在籍するオフィス。森川氏も社員と同じテーブルについて仕事を行う。

年内にはスマホ版のリリース。そしてNY、上海などの海外展開も視野に

現在、1日10本ペースでコンテンツの更新を行っている「C Channel」。他メディアでも今後NYなどに支部を置くこと、スマホ版をリリースすることを想定していることを語っている森川氏。さらに動画を外部に無料でエンベッド可能にさせる予定だという。では、それ以外にどんなプランを描いているのだろうか。

「一番の理想は、朝、事務所でクリッパーと一緒に会議をして、『今日これ撮りに行こう』みたいに決めて、その日のうちにアップするみたいなスピード感を実現させることですね。日本とニューヨーク、上海に支部があれば、10本×3のスピード感で出せるんでそれを早く実現させたい。

こうした事業で失敗するポイントは、コンテンツにお金をかけすぎてしまうこと。だからいかにお金をかけずに、ハイスピード・ハイクオリティが作れるかっていうところで、これから勝負していきたいですね。

事業プランはもちろんありますが、先のことやマネタイズのことをあまり考えないで、まずはユーザーさんの反応を見つつ、コンテンツの出力の質の向上に注力していきたいですね」

akira morikawa

(2015年5月8日HRナビ「本当の"動画元年"がいままで来なかった理由-元LINE森川氏が分析するメディア業界の現状」より転載)