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宇宙ステーションは「閉めきった部室の匂い」、山崎直子さんが語ったリアルな体験談

2015年06月17日 14時43分 JST | 更新 2015年06月17日 14時47分 JST

「スペースシャトルから国際宇宙ステーション(ISS)に乗り移った瞬間は、閉めきっていた部室のようなモワッとした匂いがしましたね。たくさんの人が入れ代わり立ち代わりして10年以上も生活していますから積もり積もった匂いが......」

宇宙に行くには出張申請を提出して上司からのハンコが必要―、夜中に目覚めると目の前に人の顔がプカプカ浮かんでいたり天井で人が寝ていたりする―。

そんな妙に生っぽい体験談を語ったのは日本人宇宙飛行士の山崎直子さん。2010年4月にスペースシャトル「ディスカバリー号」で宇宙へ行き、国際宇宙ステーション(ISS)も含めて15日間の宇宙滞在をした。その体験を6月上旬に上智大学で行った講演で語った。華々しい業績の裏には、先行きが見えずに長引く訓練期間と、子ども時代からの夢というの間で思い悩む母親という姿もあったようだ。

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※講演は上智大学矢入研究室主催の「インクルーシブデザインのための人的ネットワーク構築に関して議論するワークショップ」の一部

民間宇宙旅行を現実のものにしようという私企業が登場して話題の昨今だが、実体験として宇宙を語れる人はまだ少ない。

「これまで宇宙に行ったのは500人ほどで、最高齢は77歳です。身体の条件はガガーリンのころから、だいぶ緩和されました。虫歯も今は治療技術が発達しているので、きちんと直してあれば問題ありませんし、メガネもコンタクトもオッケーです」

打ち上げはハードと想像しがちだが、そうでもないそうだ。

「いざ打ち上がると本当にあっという間です。打ち上げから8分30秒で宇宙です。地上に止まっている状態から8分で時速2万8000km、マッハ25にまで達します。この8分は3Gくらいの力がかかりが、イメージとしては床に横になった人に自分と同じ体重の人が3人ほど乗った程度。それほどツラい環境ではありません」

山崎さんが滞在したISSは多くの国から宇宙飛行士が集まる場所。コミュニケーションの問題が発生するのは宇宙でも同様のようだ。

「宇宙ステーションでは、ひどい喧嘩というのはありません。すでに宇宙に行く前の2年弱は一緒に訓練してますから、それなりに仲良くなっています。ただ、価値観や文化、制度が違うので、どうしてだろうってことが出てきます。例えば、日本やアメリカでは、宇宙へ行くのは「出張扱い」なんですね。ふつうに出張申請を書いて上司のハンコをもらって行きます」 一方、ロシアの飛行士などは宇宙飛行ということの意味が異なっていて、そうした立場の違いから気まずい雰囲気になることもあるのだそう。

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山崎さんは宇宙飛行士としての訓練を1999年から開始して、結局シャルトルに搭乗するまで11年かかった。多くの人が憧れる職業とはいえ、29歳からの11年というのは長い。

「訓練はアメリカ、ロシア、カナダ、ヨーロッパと、いろいろな国で行いました。苦ではありませんでしたし、やれることが楽しかった。ただ、宇宙に行けるという保証はありません。いつか行けるかも分かりません。だから最初の2、3年は楽しくて良かったんですが、何年かすると考える時期がありました。特に訓練をはじめて4年目にコロンビアの爆発事故が起きて先行きが不透明になりました。それが一番悩んだ時期でした」

「小さい時から好きだったから、自分一人のことなら訓練を続けるのは全く良かったんです。ただ、家族や子どもにしわ寄せが行くことになる。どこまでが良くて、どこまでが自己満足なのか。その線引きでずいぶん悩みました。でも道はないんです。誰も正解を教えてくれません」

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photos:(C)NASA

(2015年06月15日「HRナビ」より転載)