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ブラジル:超法規的処刑がリオデジャネイロの治安をゆるがす

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(リオデジャネイロ)− リオデジャネイロ州はオリンピックに向けて治安の改善を約束した。しかし、法律のより効果的な執行を大きく妨げている、警察官による超法規的処刑に十分対応していない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。

報告書「誠実な警察官は恐れている:リオデジャネイロで自由に暴力を振るう警察官たち」(全109ページ)は、警察官による不法な殺害が、リオデジャネイロ州の治安改善をめぐる野心的な対策に及ぼす悪影響について調査・検証したもの。

リオデジャネイロ警察はこれまでの10年間に8,000人超を殺害しており、2015年だけでも少なくとも645人が犠牲になった。これら大半は、おそらく合法的な武力行使の結果とみられるが、同時に超法規的処刑も多く行われている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのブラジル代表マリア・ラウラ・カニヌーは、「リオデジャネイロにおいて、暴力的な犯罪は現実的な問題だ。しかし、犯罪者と疑われる人びとの処刑は解決策にならない」と述べる。「これらの不法な殺害は警察に対するコミュニティの反発を招き、地域全体の治安を悪化させることにつながる。」

(ハフポスト編集部注:【閲覧注意】この動画には警官が射殺するシーンが含まれます)

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、30人超のリオ警察官に聞き取り調査を実施。致死的な武力行使について詳述した警察官も数人含まれており、うち2人は処刑への直接的な関与も認めた。ある警察官は、負傷して地面に横たわっていた麻薬ギャング団のメンバーとされる男性を、同僚がその場で処刑した様子を語った。ギャング団のメンバーとされる人びとを逮捕するのではなく、殺害することを目的とした作戦について詳述した警察官もいる。

処刑を目撃した警察官たちは、同じように殺されることを恐れ、同僚の犯罪を報告することはないという。証言した警察官の1人は、「彼らは私や家族を殺すのに1秒だって躊躇することはないだろう」と話した。

不法な殺害に関与する警察官たちが、その犯罪行為を日々隠ぺいしようとしている実態も本報告書の調査で明らかになった。目撃者を脅したり、銃や薬物を犠牲者の体に忍ばせたり、犯行現場から病院に遺体を移送して、負傷者を助けようとしていたふりをするのである。

本報告書の調査で、警察が不法な殺害を隠ぺいしようとしたことを示す確かな証拠を、64件発見。地元の司法当局者は、これらの証拠はもっと大きな問題を反映するものだ、と話す。近年に同州で警察官が報告した「銃撃戦」の多くが、実際には超法規的処刑だったと当局者は語った。政府の公式データもこの結論を裏づけている。

2013年〜15年に報告された疑惑の「銃撃戦」で、リオデジャネイロ警察が殺害した人の数は、負傷させた数の5倍にのぼる。普通に考えればこれは逆でしかるべきだろう。2015年に殉職した警察官1人に対し、警察官に殺害された人は24.8人で、これは南アフリカの2倍以上、米国の3倍以上の比率だ。

警察官による不法な殺害で重い代償を払っているのは犠牲者や遺族だけではなく、警察そのものでもある。警察官による殺害が、暴力の連鎖を生み、犯罪率の高い地域に配属された全警察官の命が危険にさらされているのだ。コミュニティとの関係が悪化し、警察官が任務をまっとうする能力を弱める大きなストレスの原因にもなっている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが隠蔽の証拠を確認した64件は、2009年の報告書「致死的な武力行使」で報告した35件と、それ以降に検証された29件(うち12件は過去2年間のもの)を含む。これら 64件の死亡者数は116人で、少なくとも24人は子どもだった。

ほとんどすべての事件が警察による「銃撃戦」として報告されている。しかし、少なくとも20件で、犠牲者が至近距離で撃たれたことが剖検報告書からわかった。犯行現場の分析や目撃者の証言で、銃撃戦がなかったことが明らかになった事件もある。

不法殺人とその隠ぺいに関与した警察官が裁判にかけられることはめったにない。文民警察の捜査は全く不十分であることが本調査で明らかになった。この責任は、最終的にはリオデジャネイロの検事総長事務所にある。同事務所は、警察の捜査活動を監督するだけでなく、独自の捜査を行うための法的権限も有しているからだ。

前出のカニヌー代表は、「警察による殺害を捜査しないことは、当局が遺族のための法の裁きを否定するだけではなく、リオデジャネイロ警察そのものに多大な害をもたらしている」と指摘する。「説明責任が果たされない限り、これからも超法規的処刑に手を染める警察官がいるであろうし、その他すべての警察官にとっても、リオを守る任務はより困難で危険なものになるだろう。」

五輪招致活動でブラジル政府は、オリンピックがリオデジャネイロ市における「治安システム上の長期的改善の大きなきっかけ」となるだろうと述べている。同市の主要治安イニシアチブは、武装して貧しい地域に突入するこれまでの方法を改め、パシファイング・ポリス・ユニット(地区警察部隊・UPPs)と呼ばれる、警察署を基にした地元密着型の警察活動に移行するプロジェクトだった。

公式に記録された警察官による殺人数は2007年の1,300人超を境に減少し、2013年には400人になったが、その後また増加。入手可能な最新のデータによると、2015年は645人で、2016年は1月〜5月の間で322人を記録している。

リオデジャネイロ当局は最近、警察官による殺害が関係する事件の対処法を改善するため、いくつかの措置を講じている。たとえば、警察の人権侵害を担当する特別検察ユニットを設置した。しかし、このユニットを強化し、適切な捜査・訴追を確保するための追加措置が必要だ。

カニヌー代表は、「コミュニティで守るべき人びとを警察官が処刑しているなか、地元密着型の警察活動の成功を期待することは到底できない」と指摘する。「そして誠実な警察官が、ギャング団のメンバーのみならず、同僚まで常に恐れなければならない状況で、立派に任務を果たすことを期待するのも無理といえるだろう。」

(2016年 7月7日「Human Rights Watch」より転載))