カンボジア:土地権利活動家に対する訴追取下げを

公判中、準警察部隊が裁判所の外に集まった活動家たちを蹴ったり、押したり、引きずったりした。

非暴力の抗議活動で333日間拘禁されているテプ・バニー氏

Activist Tep Vanny takes part in a land rights protest in Phnom Penh, Cambodia on November 7, 2012. © 2012 Reuters

(バンコク)― カンボジア政府当局は、約1年間拘禁下にある著名な活動家のテプ・バニー(Tep Vanny)氏など、土地権利運動家6人に対する政治的な動機に基づく訴追を即時取り下げるべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

プノンペン地方裁判所は2017年7月14日、テプ・バニー氏などボンコック湖周辺コミュニティの住民Kong Chantha氏、Nget Khun氏、Cheng Leap氏、Heng Mom氏、Tol Sreypov氏が「公共侮辱」および「殺害の脅迫」で罪に問われた事案を審理の予定。

この犯罪容疑は、2012年に行われた偽りの被害申立に基づくものだが、公衆侮辱罪(第307条)の場合最大罰金100万リエル(2,400米ドル)および2年の刑、「殺害の脅迫」(第233条)の場合最大罰金400万リエル(970米ドル)を科される可能性がある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理フィル・ロバートソンは、「テプ・バニー氏たち土地権利活動家の訴追は、フン・セン首相率いる政府が、政府批判の声を威嚇する一連のキャンペーンの一環だ」と指摘する。

「当局は、これらのいつわりの訴追を即時に取り下げなければならない。」

2月に別の裁判所が、カンボジア刑法第218条のもと、「ことを荒立てたうえでの意図的な暴力」の容疑で、テプ・バニー氏に30カ月の刑を宣告した。

同氏は、フン・セン首相の家の外で行われた2013年の抗議活動中に、警備員を暴行したとして有罪判決を受けたのである。

この容疑を裏付ける、信頼に足る証拠が公判中に提示されることはなかった。

裁判所は、彼女やその他の参加者が、抗議集会の最中にいかなる暴力行為もしていないというテプ・バニー氏の主張を裏づける目撃者の証言を拒否。

公判中、準警察部隊が裁判所の外に集まった活動家たちを蹴ったり、押したり、引きずったりした。

これにより、ボンコック湖問題の活動家2人と、妊娠中の女性1人が負傷している。

事件の動画では、準警察部隊が参加者を近所のショッピングモールまで追いかけ、警備員が参加者の1人をコーナーに追い詰めて、繰り返し暴行している様子が確認できる。

テプ・バニー氏は2016年8月15日以来、首都プノンペン郊外のCC2 プレイサル刑務所に拘束されており、2017年2月の有罪判決および刑期に対する控訴審の判断を待っている。

カンボジアの土地権利運動リーダーの1人であるテプ・バニー氏は、プノンペンのボンコック湖周辺での不法な強制立退や、汚職の被害を受けているコミュニティを動員して闘ってきた。

同地域では、民間企業の開発プロジェクトのために、4,000世帯が転居を余儀なくされている。

同氏は2013年に、土地権利に関する活動を称えられ、米国のNPO「Vital Voices」からグローバルリーダーシップ賞を授与された。

テプ・バニー氏はまた、仲間の活動家のために重要な声となってきた。逮捕されたのも、「ADHOCファイブ」の釈放を求める「黒い月曜日」抗議集会を率いている最中だった。

人権団体ADHOCの現・元メンバー5人は、恣意的な公判前勾留で427日間拘禁された後、最近になって保釈されたばかりだ。

同氏はまた、人気の評論家で、政府を繰り返し批判していたケム・レイ氏が2016年7月10日に射殺された事件をめぐり、独立した捜査を強く求める活動もしている。

カンボジア政府当局は、テプ・バニー氏ほかの土地権利運動家に対する訴追を取り下げ、同氏の有罪判決を無効と確認して直ちに釈放すべきだ。

カンボジア政府は、表現・団結・平和的集会の自由への基本的な権利を行使する人権活動家ほかへの迫害を止めなければならない。

ロバートソン局長代理は、「カンボジアに対する国際的な援助国は、人権活動家に対して政治的動機に基づく訴追の波が押し寄せているカンボジアの近況に、憤慨してしかるべきだ」と述べる。

「援助国は一致して、テプ・バニー氏の釈放や、非暴力の活動家に対する政府迫害をやめるよう、おおやけに働きかけるべきだ。」

(2017年7月14日「Human Rights Watch」より転載)

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