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カンボジア フン・セン首相、有力人権団体 閉鎖の構え

カンボジア人権センターは「閉鎖すべき」と発言

2017年11月29日 15時34分 JST | 更新 2017年11月29日 15時34分 JST

Human Rights Watch

(バンコク)― カンボジアのフン・セン首相は内務省に対し、有力人権団体のカンボジア人権センター(CCHR)の調査と閉鎖を求めたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。今回の発言は、野党・救国党(CNRP)のケム・ソカ党首に対する政治的動機に基づいた訴追、および同党の解散命令とリンクしていると見られる。

ドナー国側はカンボジア政府に対し、ケム・ソカ氏が設立したCCHRに対する無根拠な調査の停止、および人権問題に関するCCHRの活動継続を直ちに求めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

ドナー国側はカンボジア政府に対し、ケム・ソカ氏が設立したCCHRに対する無根拠な調査の停止、および人権問題に関するCCHRの活動継続を直ちに求めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

「フン・セン首相は最大野党に対する解散命令の舌の根も乾かぬうちに、主要人権団体の閉鎖も命じた」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「首相は自由な選挙のみならず、言論と結社の自由も恐れていることが明らかだ。」

2017年11月26日の縫製労働者向けの演説で、フン・セン首相はこう述べた。「首都プノンペンのカンボジア人権センターは閉鎖すべき。外国人の指示通りに動いているからだ...。内務省はこの団体を調査しなければならない。カンボジア(クメール)人ではなく、外国人が作った団体だからだ。もしこの団体が、誰かがわが国の同意を求めて設置された外国の団体ならば構わない。だがそれはたった1人のカンボジア国籍者によって行われており、外国人が思い通りに動かすために作られたのだ。」

ケム・ソカ氏は2002年にCCHRを設立し、2007年には政治活動を再開するためセンターを辞任した。本部をプノンペンに置くCCHRは、様々な課題への取り組みを通じて、国際人権法が認める基本的権利の尊重を促進しており、人権教育、農村の土地紛争、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)の権利などで活動してきた。このほかにも人権侵害被害者への無料法律支援も行っている。

この数カ月、カンボジア政府は敵対する政治勢力、独立系メディア、人権団体への弾圧を強化している。9月3日、政府はケム・ソカ氏を国家反逆罪という根拠薄弱な容疑で逮捕し、その他のCNRP幹部の逮捕もちらつかせた。11月16日、最高裁判所は救国党に解散を命じるとともに、党員118人に政治活動を5年禁じる判決を出した。

このほか政府はカンボジア・デイリー紙に廃刊を命じたほか、独立系の地元ラジオ局、およびラジオ・フリー・アジア(RFA)とボイス・オブ・アメリカ(VOA)のクメール語放送を再放送するFM局を強制的に閉鎖させた。11月25日、裁判所はUon ChhinとYeang Sothearinの2人のジャーナリストを、RFA(政府が9月に国外追放処分)にニュース記事を提供したとして、スパイ行為で起訴した。

政府は2016年から17年にかけて、カンボジア人権開発協会(ADHOC)の幹部職員4人と元職員1人を、恣意的拘禁や訴追などの迫害の標的とした。この「ADHOCの5人」の公判前勾留は、6月29日の釈放まで427日に及んだ。しかし当局は訴訟手続きを進めており、5人は5~10年の刑を宣告される可能性がある。また、移動の自由と、人権活動を行う能力は現在も制限されている。

2015年5月以降に恣意的に逮捕された野党および民間の活動家36人のうち、少なくとも20人が現在も獄中にある。多くは、国際基準を到底満たさない簡易裁判を受けている。

現在の弾圧の動機は、2018年6月29日に予定されている国政選挙で与党・カンボジア人民党(CPP)が敗北するかもしれないという懸念にあるとみられる。救国党は、2013年国政選挙と2017年地方議会選挙でともに大きく躍進している。救国党の解散は、2018年の国政選挙で人民党に対抗する野党勢力が実質的に不在となることを意味する。

米国と欧州連合(EU)は、今回の弾圧を受けた行動に出ると警告しているが、それでは不十分だ。オーストラリアや日本など、カンボジアのドナー国と貿易相手国は、フン・セン首相と人民党幹部、軍高官を対象とする資産凍結やビザ発給停止などの対象限定型制裁を実施すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「フン・セン首相が国内人権団体への攻撃をエスカレートさせている現状は、後戻りのできない地点にまで達しつつある」と、前出のアダムズ局長は述べた。「国内に野党勢力が合法的に存在しない現在、カンボジア国民には活気のある独立した市民社会がこれまで以上に必要だ。」

(2017年11月27日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)