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2015年に5カ国でクラスター爆弾の使用

2015年09月19日 21時37分 JST | 更新 2015年09月19日 21時39分 JST

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(ジュネーブ)− クラスター爆弾は2015年中にリビア、スーダン、シリア、ウクライナ、イエメンで使用され、一般市民に許されない被害を及ぼした、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書「クラスター爆弾モニター2015年版」内で述べた。これらのいずれの国も、全面禁止の国際条約には参加していない。

本報告書は、「クラスター弾に関する条約」(2008年)に関する世界各国の対応をとりまとめたもの。同条約へのより多くの国の参加により、急速に貯蔵弾の破壊が進んでおり、クラスター爆弾の全廃にむけ大きく前進している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの武器局アドボカシー・ディレクターで本報告書の編集者でもあるマリー・ウェアハムは、「クラスター爆弾は、攻撃時のみならず、その後長きにわたって一般市民に危害を与え続けるため、いかなる状況下にあっても使用されるべきではないと禁じられた兵器だ」と指摘する。「クラスター爆弾を使用している国は即時に停止し、早急にこの国際禁止条約に加盟すべきだ。」

しかし憂慮されているのは、当該禁止条約の第1回再検討会議で発表される声明の草案をめぐり、締約国であるオーストラリアやカナダ、英国が、クラスター爆弾の新たな使用を非難する文言を弱くする提案をしていることだ。本会議は、条約発効から5年となる今年の9月7日〜11日にクロアチアのドゥブロブニクで開催される。

クラスター弾に関する条約は、使用時に広範かつ無差別にばらまかれ、その後も長きにわたって一般市民を危険にさらすことから、これら兵器を禁じている。クラスター爆弾は迫撃砲やロケット弾、空中投下などによる使用が可能。通常は空中で爆発し、数十、ときに数百の子弾をサッカー場程度の範囲に飛散させる。子弾は着弾時に不発であることも多く、地上に残った不発弾が事実上の地雷と化すため、除去・破壊されるまでその脅威が継続することになる。

「クラスター爆弾モニター2015年版」は、クラスター兵器連合(CMC)の年次報告書。CMCは、ヒューマン・ライツ・ウォッチが共同設立したNGOの世界的連合だ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、クラスター爆弾の使用・製造・移譲・保有を全面禁止した条約をまもるための取り組みをモニタリングするCMCの活動を主導している。

本報告書によると、2010年8月1日に当該禁止条約が発効して以来、新たなクラスター爆弾の使用が確認された報告や申立てのあった締約国はない。しかし、2010年以降で7カ国、そのうち2015年中に5カ国で新たに使用されている。

  • タイは2011年2月にカンボジアと国境で衝突した際にクラスター爆弾を発射した。
  • リビアの2カ所で2015年はじめにクラスター爆弾が投下されたが、その責任の所在を断定することはできなかった。2011年4月には、カダフィ大佐に忠誠を誓っていた政府軍が、ミラスタ市に迫撃砲でクラスター爆弾を発射している。
  • 南スーダンの町ボル付近で2014年初めにクラスター爆弾が空中投下されたが、その責任については明らかになっていない。
  • スーダン軍が2015年前半に南コルドファン州でクラスター爆弾を空中投下した。2012年にも同様の攻撃があった。
  • シリア政府軍が2012年半ばからクラスター爆弾を空中投下し始め、その後はロケット弾による使用が続いているとされている。過激派イスラミックステート(ISIS)の部隊も、2014年後半にロケット弾を使用した。
  • ウクライナ政府とロシアが後ろ盾の反政府勢力が、ロケット弾を東部ウクライナのドネツク州およびルハンスク州で使用した。攻撃は2014年に始まり、2015年2月の停戦合意を受け停止している。
  • サウジアラビアが主導する連合軍に参加する1ヵ国もしくは2カ国が、アンサール・アッラーともいわれるフーシ派に対する軍事作戦で、2015年3月以降イエメン北部でクラスター爆弾を空中投下したり、地上から発射したりしている。

クラスター弾に関する条約は、各締約国に対し「この条約の締約国でない国。。。がクラスター弾の使用を抑制するよう最善の努力を払う」ことを義務づけるもの。非締約国48カ国を含む140カ国超が、新たなクラスター爆弾の使用を非難している。非難の大半は、政府声明文や国連総会、国連安保理、国連人権理事会による決議に参加する形で行われた。

これまで計117カ国がクラスター弾に関する条約(2008年)に署名、あるいは批准してきた。同条約はクラスター爆弾の使用・製造・移譲・保有を完全に禁じ、かつ10年以内のクラスター爆弾残存物の除去ならびに被害者の支援を義務づけるものだ。これらの国々のうち94カ国は、当該禁止条約の全条文を執行する法的義務がある一方で、残り23カ国は署名はしたものの、まだ批准はしていない。

2014年9月以来、ベリーズ、ガイアナ、パレスチナ、スロバキアが条約に加盟し、カナダ、コンゴ共和国、ギニア、アイスランド、パラグアイ、ルワンダ、南アフリカが批准した。

「クラスター爆弾モニター2015年版」によると、締約国はこれまで合計130万発の貯蔵弾(計1億6,000万発の子弾を内包)を破壊した。これは、締約国が申告しているすべての貯蔵弾の88%、子弾の90%が破壊されたことを意味する。2014年だけでも、12万1,000発超のクラスター爆弾および1,640万発の子弾を、フランス、ドイツ、イタリア、モザンビーク、スェーデン、スイスほか締約国が破壊。日本は今年2月に貯蔵弾の破壊を完了、カナダは2015年3月の批准より前の2014年中に完了させている。

クラスター弾に関する条約に署名したものの未だ批准していない国の多くは、各国の国内法に基づいて批准手続きを進めている最中だ。コロンビア、コンゴ民主共和国、マダガスカル、ソマリアは、なかでも特に手続きの完了が近いとみられている。

前出のウェアハムは、「クラスター爆弾の新たな使用に関し、他の国々が強く反発していることは、条約による禁止が根付き、これら兵器の使用を恥とする流れが強くなっている証拠だ」と指摘する。「一般市民を保護する意欲がある国なのであれば、いかなるクラスター爆弾の使用も非難すべきであり、また使用国や組織に対して、禁止条約を遵守し、批准するよう圧力をかけねばならない。」

(2015年9月3日「Human Rights Watch」より転載)